その答えに触れて | ナノ


▼ 23.別に気にしてないし

沢田君はボスは嫌だと言った。マフィアのボスになんかなるものかと。程々の幸せを望むと。それは一概に間違ってるとは言わない。沢田君にとって最も致命的な弱点は仲間がいること。悪いとは言わない。でも彼の場合は友達と仲間と家族を区別出来ていない。仲間が危ないと。危険に身を投じていけばいくほど彼のボスとしての素質と評価が上がるだけ。増してや嫌だからと仲間を見殺す度胸なんてありはしない。でも、だからそこついていく人がいる。

「いくら大事だって言われても…ボンゴレリングだとか…時期ボスの座だとか…そんなものの為に、俺は戦えない」

その点に感じてみればこことは違う世界であれど裏社会で息をし、その秩序を総べるあたしは。

「仲間が傷つくのは嫌なんだ!」

どちらかと言えば

「ほざくな」

ザンザスに近いのかもしれない。

「10代目!」
「あれは……ザンザス!!」
「……なんだその目は。まさかお前。本気で俺を倒して後継者になれると思ってんのか?」
「そんなことは思ってないよ…俺はただ!この戦いで仲間を誰1人失いたくたいんだ!」

そう自覚した。あたしだって同じだ。沢田君みたいに慈悲があるわけじゃない。仲間のために命を張れない。ザンザスのように暴れはしないものの。無慈悲なところはそっくりかもしれない。

「ザンザス様いけません!ここで手を挙げてはリング争奪戦の意味が!拳をお収め下さい!」
「うっせえ!俺はキレちゃいねえ。むしろ楽しくなってきたぜ」

似てるなんて思ってもみなかった。本能が共感した。ザンザスに。弱者が土に還ることは当然の事で自然の摂理だ。沢田君の言ってることが綺麗事にしか聞こえないのもまた事実。そしてあたしの心こそ……穢れきってるのも真実。

「やっと分かったぜ。一時とはいえ9代目が貴様を選んだわけが…その腐った戯言といい軟弱な炎といい。お前とあの老ぼれはよく似ている」
「え!?」
「ぷはーっ!こいつは悲劇、いや喜劇が生まれそうだな!おい女。続けろ」
「はっ。今回の守護者対決は沢田氏の妨害によりレヴィ・ア・タンの勝利とし、雷のリング並びに大空のリングはヴァリアー側のものとします」

2つのリングが向こうに渡るのも……そのまま。同じだ。ランボも無事で、沢田君も無事で。このままザンザスは去るはず……。9代目への意味深な話を残して。

「そこの小娘」
「!!!」
「お前、いるべき場所を間違えでもしたか?鞍替えするなら早くしろ」

なん……で?ザンザスは、あたしに言葉を投げかけた。いるべき場所を間違えた…?鞍替え…?

「てめぇが雪だか風だかは知らんが、立場が違ぇだろお前は。」
「……は?」
「眼が違ぇんだよ。」
「眼……?」
「カタギじゃないだろ。むしろ程遠い筈だ」

会ったのは、初めてだ。初見でこんなにも見透かされるなんて……!

「ヴァリアーは、てめぇに価値を与える」
「ちょっと!勝手なこと言わないでよ!」
「もえ、いいよ。大丈夫。」
「ふん。……女、いいぞ。」
「はい。では明晩の対戦カードを発表します」

明日の対戦は……嵐の守護者の対決です。

「ボス。雷のリングだ。収めてくれ。」
「いらねえ。次に醜態を晒してみろ」
「死にます」

ザンザスの眼光が突き刺さる。見透かされた。あたしが共感した事を。だから場所が違うと指摘したんだ。

「ランボ!」
「アホ牛!しっかりしろ!」



ランボを病院に預けて帰宅となった。奈々さんには雷が直撃してしまったということにして手を打つらしい。雷のリングだけではなく大空のリングさえ渡り、戦況は不利だ。

「俺、本当にあの時…勝負に割って入って良かったのかな……」
「よかったぞ。部下を見捨てるようなボスは、ボンゴレにはいらねーんだ」

リボーンの言葉に隣のえりかが反応したように見えたけど、なんてこと無く前を向いてただ歩いてる。ザンザスに投げかけられた言葉は、えりかの最深部を暴いた。ウチも人のこと言えない。産まれた時から。最初から道徳を外れた者はこうなる。どう足掻いても。真っ当な正義を並べられない。対価があると疑う。信じては疑う。疑っては裏をかく。そんなの死ぬほど見てきた。

「リボーン…俺、もっと強くなりたい」
「第三段階の修行は更に厳しいぞ」

「もえ。綺麗になりたいね。沢田君みたいに」
「馬鹿じゃん。そう思える時点であんたは綺麗だよ」

綺麗事を並べて生きていけなかったのは、ウチも同じ。ウチも穢れてる。ぜんぶぜーんぶ。

「ウチも同じだから。さっきの気にしないでいいよ」
「別に気にしてねーし!?むしろ清々しいし!?」
「いや、ムキにならなくても」

明日は獄寺か…。どうか嵐戦も、原作通りで……。獄寺が死ぬなんてこと、ないように……。


prev / next


[ top ]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -