▼ 21.ツンデレ兄弟子からのおさがり
「……えと、神社でお参りした事ないんだけど、どうすればいいの?」
久しぶりにえりかと一緒に歩いた。昨日約束してた神社に行くため。修行でお互いバラバラでやってるからか、顔を見ないって日はないにしても話すのは寝る前とかそんくらい。雨は降っちまってて晴れる事はなかったけど。御参りの仕方を知らないえりかにやり方を教えて願い事の為に目を閉じた。俺の願掛けが終わっても、まだ時間がかかってるみたいだった。
「あ、ごめんね。山本。時間かけちゃって」
「いーぜ!じゃ、お守りでも買ってくか」
「お守り?」
「ん。勝てるように!」
えりかは白。俺は青。「必勝祈願」だ。暫くお守りを見つめていたえりかは不意に傘を傾けた。雫が足元に跳ねる。
「山本。」
「ん?」
「もし、"あるべきこれから"が変わってしまったとしてもあたしが必ず、」
ざぁぁぁぁっ。なにか、大事な事を言ってた気がする。でも、何故か俺は聞き返せなくて。妙に大人みたいに笑う顔を見つめ返す事しかできなかった。
「君、もうやめたら」
「そういう雲雀こそ。風邪引くよ。」
修行という名のデスマッチ。今日はディーノさんはウチらを見極めるようにロマーリオさんとフェンスの方で傍観を決め込んでいる。傘くらい差せばいいものを。
「なんか、雲雀って体調すぐに崩しそうだ、しっ!」
「それは君の方でしょ」
「心配してやってるんだけども」
「へえ。余計なお世話」
ぶっ叩かれた。容赦ない。肩にめり込んだトンファーを掴んだ。ほんの少し目を見張った雲雀にニッと口角上げてその額に頭突きを決め込んでやった。
「……ちょっと。猿なの君」
「…いや、ウチからも言わせて。あんたすっっごい石頭!!!」
こっちがカチ割れるかと思ったわ!むすっとした御機嫌斜めな顔を見るのはもう何度目か。
「対して効きもしない頭突きなんて頭の弱い猿がすることだよ」
「猿猿言わないでよね!」
ジンジン痛む頭を押さえているとカラン、目の前になにかが落ちた。アスファルトに雨が打ち付けられて跳ね返っている。落ちたそれも、銀色に輝きながら雫を跳ね返している。なにがなんだか分からなくて座り込んだまま雲雀を見上げた。
「君にちょっとでも脳味噌があるなら、それ。使いこなしてみれば」
ぽい、と捨てるように渡されたのは、トンファーだった。今しがた、ウチを打ちのめしたトンファー。
「え、?いや、ちょっ!?雲雀!?」
「疲れた。またね」
しっとり濡れた学ランを翻し、屋上を去った雲雀はそれ以上なにも語らず。後ろで傍観決め込んでいたディーノさんだけがニヤニヤしながらやって来た。
「兄弟子からの贈り物ってか?」
「は、はい?」
「お前の接近戦での道具だ。」
「……え?」
「接近戦が苦手なお前に、恭弥がこいつをくれたんだよ。」
…………ちょっと、不覚にもキュンとしました。ツンデレ過ぎませんか。
「……ディーノさん、雲雀ってやばいですね」
「可愛いよな!素直じゃなくて」
鼻血出てるぞー、なんて笑顔で雨に曝され、濡れきって役目を全うしそうにないポケットティッシュを差し出された。
「ウェットティッシュなら間に合ってます」
「ありゃ?」
「今宵の戦闘エリアは雷の守護者に相応しい避雷針のエリア。名付けてエレットゥリコサーキット」
ドオンッ……バリバリバリバリ。……無理だー!!!!!ウチと綱吉君の顔最近似てきた気がする。床が光るのはチェルベッロ曰く特殊な導体が張り巡らされており、避雷針に落ちた電流が何倍にも増幅されて駆け巡る仕組みらしい。
「ランボさんあれやるー!もえも行くもんね!」
「やめえええれええー!ウチは行けない!焦げたくない!」
「ちょっと待てランボ!危ないから!あぁ、また角落として…!」
「引っ張らんといてええええ」
「もえに至ってはなぜ関西弁!?」
グイグイ引っ張るランボに全力拒否。ウチは普通の皮膚なので雷ですぐ死ねる。1発である。
「ったく10代目を煩わせんじゃねえ!……これで届けてもらえるぜ」
角に「アホ牛」。油性マジックで。これも愛の形の一つか……なんて今日貰ったばかりのトンファーに心無しか温もりすら感じるウチは結構やばい。
「ランボーファイッ!!オーッ!!!」
またこれか。体育会系またこれか。いいよもういいよ諦めよう?諦めようよえりか。という目を向けた先のえりかは今回山本の隣で満更でもなさそうだ。チッ。リア充が。爆破しろ。
「それではレヴィ・ア・タンVSランボ。勝負開始!!」
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