その答えに触れて | ナノ


▼ 18.畑違い

「…まじですか」
「昨日から戦いっぱなしだからなぁ」

ロマーリオさんが欠伸をする前で、なんていうか、幽鬼というかゾンビというか血まみれのディーノさんと雲雀が。なに?あれからずぅっとこの調子なの。え?

「たいしたもんだぜ、あのガキ」
「人種が違うんじゃないかなって思うんですよね…」

時間はないけど。綱吉君のお父さんは時間をくれた。それに感謝しつつ、ここに来るウチはなんなんだろうか…。

「自分を高めなきゃ気が済まねーのさ」
「え?」
「ボスもマフィアの人生歩む気は全くなかったんだぜ。島で生きてく気だったんだ。でもなぁ、俺たちがいたから強くなる他なかったんだろうよ」
「…ウチとディーノさんは違うし…」
「その場になってみねーとわかんねぇもんさ」

…ウチは力を欲しない。仲間を守る守らないとか、そういう事じゃない。…そういえば、えりかはどうなんだろう。えりかは家の当主…つまりボスで。やはり家族の為に舎弟の為に、刀を振るうのだろうか。



「こーんーにーちーはー!!」
「んああ!?何の用だびょん!!?」
「実は!あたし!黒曜の!皆さんに!」
「どさくさに紛れて押し入ってくんなー!」
「修行をつけて頂きたいんです!」
「はぁ!?」
「…修行?」

そう、あたしは決めた。山本が戦うならあたしも戦う。歪めた世界で彼等が危なくなる未来がきてしまったとしてもこの手が届くように。ちゃんと守れるように。今のあたしにできる事。それは修行をしている皆についていく事だと思うんだ。

「城島君の身体技!柿本君の回避力!是非!」
「よんなー!」
「……リングの争奪戦のこと?」
「そう!あたしは何が何でも強くならなきゃいけないんです!」
「柿ピー!まともに答えなくていいびょん!」
「骸様はなんて言ってた…?」
「それはぁ………キーッ!」

骸様?なんでここで骸様?城島君はバタバタと幼子みたいに地団駄を全身で打ったところでがばりと起き上がった。

「わかったびょん!でもまじで手加減とかしないかんな!」
「うっそだろ奇跡か!」
「人の好意にケチつけんな!」
「…君の武器は…?」

箱から出した刀身を見て柿本君はすいっと眼鏡のグリップを上げた。

「へっ、刀なら折ったことがあるびょん」
「その辺の刀とは違うよ。妙な気がでてる…じゃあ…はじめよう」

話の早い柿本君となんだかんだ起き上がってくれた城島君に感謝しつつ、鞘から刀身を抜いた。



「なーんか最近山本と絡むね。」
「ハハッ!本当だな!」

なんだこの絵面。変な組み合わせでしょ。

「昨日ちゃんとえりか帰らせたけど、帰ってきた?」
「おう。でもあいつなんか難しい事言うからさ」
「難しいこと?」
「ん。…そーいや昨日聞きそびれてたけどさ!えりかにとっての俺って話」
「あぁ、ウチから話していいのか分からないけど…」

えりかの御家ってバキバキの縦社会だからウチらが想像するよりもかなり手厳しい家庭環境で育ってきたわけ。それでウチと養成学校で出会ってー、ウチはそれなりに自由許されてたから漫画とか貸して…えーとそれで山本そっくりのキャラクターがいてね?そのキャラクターも刀使うんだ。えりかは刀の稽古が大っっ嫌いだったからそのお陰で好きになって。現代版の女番長紛いの姿を思い出した。

「朝昼晩。所構わず竹刀振り回す奴になった」
「さすがなのな」
「えーと、だから山本はえりかにとっちゃ憧れで…だから恥ずかしくて面と向かって話せないんだと思う」

そのキャラクターは山本ご本人なんだけど…異世界のことはリボーンと綱吉君のお父さんにしか話してないし…混乱させるのはまずいよね?

「俺かっこわりーとこばっか見せてるぜ?今朝も親父に張り倒されたし!」
「でも山本、この前より覇気が増したよ。昨日の…鳥肌が立ったくらい」
「そーか?サンキュー!」

お礼を言われることなのかどうか…。というか、今日もえりかどこいった?

「新しい友達が出来たみてーで元気に出てったぜ!」
「…は?」

友達?えりかに友達を作る技術が…いやバカにしているのではなく。真面目に。というか友達と遊んでる場合じゃないよ!?

「もえも一緒に戦ってくれんだろ?」
「え、うーん…でもウチ激弱だし、戦いの定義すらわかってないし、足手纏いになるよ」

戦闘とは無関係だった訳じゃないけど、本当に人に当てたことないんだ。この拳銃。いつも周りに人がいて銃を取り出すことさえさせて貰えなかった。父が入れた養成所も、これじゃ意味ないってくらいに。

「それなら…これ以上歪めない方がいい」

雲雀のように、自分を高めるだなんて。プライドなんて。それこそウチには畑違いなんだもの。

「山本!もえ!」
「綱吉君。顔面にクリーンヒットしたバスケットボールの傷は大丈夫?」
「そこまで説明しなくていいからっ!大丈夫だよ!」
「俺がついていながら申し訳ないッス!」

ウチは男の子じゃないし。戦いごっこも好きじゃない。それは…普通の女の子として過ごしたかったっていう反動なのかな。…学校に初めて通った。初めて制服を着た。友達ができた。スポーツをした。これって、ウチらにはとてもすごいことで。目の前の光景がどうも非現実的で。3人の姿さえ朧気に見えてしまうんだ。


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