その答えに触れて | ナノ


▼ 15.鬼さんこちら手の鳴るほうへ

「いたーい」
「派手にやったな」
「っ!?あ…綱吉君のお父さん」

一旦帰宅し、汗まみれなのでお風呂に入って着替えてからもう一度ディーノさんと雲雀のところに行く予定だった。体の傷が(雲雀のせいで)染みて痛い。そこにどこからともなく声をかけられた。綱吉君のお父さんだ。

「ツナと仲良くしてくれてんだって?」
「挨拶が遅れてすいません。数日前からお世話になってる郷士もえと言います。」
「おうおう!さすが極道!礼儀は弁えてやがる」
「!!」
「こう見えておじさんすげーからな。どっちの人間か、すーぐわかっちゃうんだぜ!っと…勘違いすんなよ?お前らのことはリボーンから聞いてる」

…っ心臓出る…内臓えぐれる!そんな笑顔で言われても。ウチの顔色きっとやばい。さすが…さすが組織の大ボス…。

「まっ、よろしくな!!」

沢田家光…曲者。



鬼は時に人の姿に紛れ込むという。それに鬼は己の内に一匹飼っている。

「鬼に金棒。武器を扱う鬼程恐ろしいものってないだろう」
「っ…なんだびょんこいつ…っ」
「犬…、ッ、一旦退いて…」

赤交じりの刀を肩に置きながら退屈そうに視線を2人に向ける。さっきまでは人並みの女だった筈だ。それが劣勢に立たされた途端牙を剥いた。鋭利な眼で睨まれると足も竦む。これは…六道骸が醸し出すそれと似ていた。だからこそ肌で分かる。…敵わない。

「当主が聞いて呆れる。引っ張られるのはこれで何度目か…。」
「なん…なんなんだびょん!!いきなりやってきてっ」
「なんなんだびょん」
「こっちが聞いてんだよ!!!真似すんな

額に手を置いて心底呆れる。憤慨する犬を抑えて千種が顔を上げた。

「君は一般人じゃない…俺たちになにか用があってきたんじゃないの…?」
「まさか。お前たちと同じ気配を寸前で感じた。むしろそちらが招き寄せたのではないのか」
「…クローム。骸様からなにか聞いてるの?」

千種がクロームに視線を変えた瞬間、周囲に霧が立ち込み始める。

「クフフ…犬と千種を軽くあしらうとは…」
「あぁ……何の用。」
「まぁ貴方が僕に少し近しい存在だったのでお招きしたんですよ」
「まんまと嵌ったのは"対の者"。」
「おや。僕は"貴方"とお話がしたかったので、むしろ光栄ですよ」
「む…骸様。」
「千種、犬を連れて離脱しなさい。僕はもう少しだけ話があります」
「話などないよ」

ギィイインッ。刀と三槍が高音を立てて激突した。骸は愉快そうな顔で笑い声をあげた。えりかも口だけ小さく動かした。

「僕は六道骸。いずれこのマフィアの世を壊滅に導く者です。」
「興味をそそられない」
「残念です。」
「何が目的。私からなにを聞きたい」
「そうですねぇ…聞きたいことは沢山あるのですが、まず貴方と、貴方の半身の関係は?」
「ただで教えて貰えるとでも?」
「いいえ?全く!」

カッ。三槍の柄が床を貫く。ぴくりと片目を動かしたえりかは素早く距離を離した。そこにあるはずのない、満開の蓮を見やって感嘆の言葉と共に賛美した。

「美しい、禍々しいお前の正体はそれか」
「ご所望ならばご案内致しますよ。鬼さん。黄泉の世界へ」



「え?ウチんところには来てないよ?なんかあったの?」
「まじかよ。買い物行ったっきり帰って来なくてよ…もしかしたらお前のとこかなって」

えりかが?そんな一人旅するような動機も度胸もないのに?てか山本を困らせる事はしないと思うけど。…なにかあったか。そう考えたところで、またもやこの人が現れた。

「揃っていたようで良かった。お前たち。」
「!綱吉君のお父さん」
「山本武。簡潔に言う。偽のリングが見破られ、ヴァリアーが日本に上陸した。」
「!!」
「敵の戦行隊はレヴィ・ア・タン雷撃隊。奴はこちらの雷のハーフボンゴレリングを奪いに来る。お前たちには雷の守護者の救援に向かってほしい」
「…雷の守護者って」
「ランボだ」
「ランボ!?」
「緊急を要する。俺は他の守護者にもコンタクトを取り、救援に向かわせる。急いでくれ」
「わかりました。行こう山本!」
「あぁ!」

もう暗いのに。ランボ達外にいたんだ。場所までは把握できない。とにかく見つかるまで走って、探すしかない。

「色々ごたついちまったな!」
「本当だね。でも山本、あの子は大丈夫。伊達に当主やってないから」
「なんつーか、あいつ俺の前だとあんま喋ってくんなくてさ」
「あー…それ多分恥ずかしがってるだけだよ。だって山本はえりかにとって…、あ!」

前方、ランボとイーピンちゃん、フゥ太君だ!!

「山本!」
「よっしゃ任せろ!」

先に駆け出した山本は竹刀を振り上げた。あれは竹刀が刀身に変わる凄いやつだ。

「ぐわ!!」
「こちら03。02が何者かに…、!?」
ドガン!
「ったく、何でアホ牛がリングをっ」
「もう大丈夫だぜ!」
「獄寺!笹川さんも!」
「み…みんな!」
「家光の奴、何とか間にあったみてーだな」
「綱吉君!」
「もえも来てたんだ!」
「ツナ兄ー!怖かったよーっ!」

イーピンちゃんは怪我してる。戦ったんだ…なんて強い子。に比べてランボは…頭に引っ掛けたリングの所為で狙われたとも知らずに「腹へった、おんぶ」なんて言えちゃうくらい元気なんだから。でも10年後はあんなに大人になるんだからまだまだこれからだよね。

「しかし思ったより骨のない連中だったな。楽勝だぞ!」
「そいつは甘ぇぞ。こいつらはヴァリアーの中でも下っ端だ。本当に怖ぇのは…!、くるぞ!」

これは間違いなく原作沿い…ここで来るのは…やっぱりレヴィだ。でも、うわ。ここら辺ちゃんと読んでなかったからいまいち覚えてない…!えりかどこいったこの大事な時に!

「雷のリングを持つ俺の相手は、パーマのガキだな。邪魔立てすれば皆消す」
「…ランボ、おいで」

綱吉君の足にしがみつくランボを抱っこしてレヴィから隠した。ランボはマフィアだとしても5歳児だし、というかランボの教育に悪い。大層悪い。禿げればいい。

「待てぇレヴィ!」
「1人で狩っちゃだめよ」
「他のリングの保持者もそこにいるみたいなんだ」
「う"ぉおい!よくも騙してくれたなぁ、カスども!」
「で…でたー!!!」
「綱吉君!しっかり立って!」

卒倒寸前の綱吉君の背中を押しながら見上げる。彼はスクアーロだ。

「雨のリングを持つのはどいつだぁ?」
「俺だ」
「なんだぁ、てめーか。3秒だ、3秒でおろしてやる」

山本…眼光が鋭くなった…?殺気…とはまだ違うけど似通った気を放ってる…。えりか…あんたマジでなんでここにいないわけ。

「のけ」
「ぐっ、」
「出たな…まさかまた奴を見る日が来るとはな…ザンザス」

この人が…ザンザス…。やばいな、思ったより足が竦む。この人本物だ。本物のマフィアだ。震えが伝わったのかランボがまん丸の目で見上げた。ごめんランボ。

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