▼ 14.続、刀野郎
「なるほど。お前接近戦になるとリーチが短くなることで無意識に臆してやがんな。」
「だから鉛玉なんでしょ」
「相手が手前に近づいたら手元が狂うんですよね。」
雲雀と戦いながら器用にウチの欠点を分析したディーノさんはやっぱり只者ではなく。さっきから水鉄砲に変えて二人を射撃しているのに避けられる。
「お前に必要なのはあれだな。接近戦でも臆せず戦えるような術を身につけることだ…よっと、っ」
「接近戦へたくそなウチが?冗談。」
「ジャパニーズマフィアの令嬢で留まるなら十分なんだが…お前はツナの用心棒だろ?守護者にも劣らない戦闘能力がなきゃ、この先やっていけねーぜ」
「…そもそも守護者って存在がいるならウチら要らないんじゃ?」
「さぁ、リボーンがなにを考えて、おっと!…るのかはわからないが…」
スニーカーの底を擦らせながら後退したディーノさんは鞭を構えながら歯を出して笑った。
「ぜってー、無駄じゃねーからさ!」
「…そんなもんですかね」
「お前らがツナのところに来たのも…なにかの縁だろ?」
「まぁ常識では考えられないくらいに突飛でしたが。」
「それにお前らは敵じゃあない。なら神仏の巡り合わせってことで、一丁ツナをよろしくな!」
綱吉君達との出会い…か。確かに神様的なものがそうしてくれたならそれこそ神仏に感謝…というのかな。でも冷静になって考えてみたらそれはやっぱり駄目だ。ウチは家に帰らないといけない。舎弟も探しているだろうし。えりかだって姉妹がいる見習いとはいえ、現当主だ。
「…探さなきゃ。帰る方法を」
ウチらはやることがある。こうやって憧れた世界で自由に暮らせるのは…それこそ物語の主人公だけだ。
「…ど…どこだろ…ここ」
あれ。バス間違えた?いや間違えただろ。てゆうか何故バスに乗ったんだあたし。歩けば済む距離だったろうが。なんか知らないが体が勝手に動いてた…うわ。なにそれ気持ち悪い。
「…こ、く、よ、う…黒曜。」
あ…もしかしてここって沢田君と六道が戦った…。
「ヘルシーランドか!!」
待って。今は六道いないはず…でも取り巻きがまだここに住んでるんじゃなかったっけ。え、待ってそんなことってある?嘘でしょ勘弁してほしい。
「あの…」
「ヘアー!!!!!!!」
「ご…ごめん…困ってるのかなって…思って」
…もうあたし受け入れる。もうコスプレサミットだって騒がない。だってこんな可愛い子がパイナップルな頭で平然としていられるわけがないもの。おかしいもの、大体が。
「困ってる…っていうか…ここって黒曜…?」
「うん…」
「ですよね…」
元は剛さんから頼まれたおつかいしに…そしてついでに沢田君のところに行こうとしていたのに。次のバスは…三時間待ち?嘘だろ。
「……もしよかったら…来る?…バスがくるまで」
「……どこに?」
すいっと指さされたのは廃墟…。かつての六道さんの家…というかアジトである黒曜ヘルシーランド。
「私…髑髏。クローム髑髏」
「あ、あたし紅林。よろしく…」
「紅林は…どうして迷ったの?」
「それが気持ち悪いことに自分の意志で来たわけじゃないんだ。なんでバスに乗ったんだろね、おかしいでしょ」
「…おっちょこちょい…だね」
「あ、そうだね」
スクールバッグを両腕に抱えてすたすた歩く髑髏さん。植物園を過ぎて鉄骨剥き出しの廃墟に入っていく。あぁここら辺。確か見たな。
「犬と千種に…言わなきゃ」
「えーと…それって大丈夫?色々」
無言!!?髑髏さん髑髏さん!!!あたし当主だけど、当主だけど!!修羅場を数多く潜り抜けてきた彼らの連携に勝てる気しないよ!?
「犬…千種…」
「遅かったね。クローム」
「どーせトロトロ歩いてたびょん!馬鹿女!」
「お客さんがいるの…」
「…こ、こんにちは」
大きなクッションに体を埋もれさせてゲーム機を仰いでいた金髪がぐりんとこっちを向いた。ひいっ。
「勝手にいれんなっつーの!!!!」
「困ってたから…」
「俺らが困るっつの!!!」
「…犬」
「わかってるびょん。一般人は手にかけ……」
「…君さ…一般人じゃないよね」
「っ!!」
なんでこうもバレる!!あたしたちの世界が平和ボケし過ぎてるのか、彼らが本物のマフィアなのか。どっちでもいいが穏やかじゃない。
「ひゃっほーう!!!」
バキッ。いつの間にチャージしたのか、なんの動物なのか。鋭い爪を背負っていた刀で押し戻す。
「刀野郎はうんざりだぜ」
「確かに隠してたのはごめんなさい。だけどあたしは貴方たちの刺客じゃないんだ!」
「うるへー!」
「犬…っ!待って…!」
聞く耳なし…。どうしようか。髑髏さんが戦闘に加わるとは現段階考えにくい。だけど千種が問題だ。でもあたしがやり返したらそれこそ身も蓋もない。彼らはマフィアが嫌いだからこそ…マフィアを知っている。どうする。どうしたらいい。
「待って…!話を聞いて…」
「クローム。その話はこいつを仕留めてから聞く」
…っ、避けられないか。
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