その答えに触れて | ナノ


▼ 9.暴君去って、牛柄のあの子!

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「別に君に用がある訳じゃないんだけど」

えりかが高速で頭を上下に振りまくってる。…当主の威厳もクソもないんだけど…。てかなんでアンタが謝ってんの…。

「もえがなにかしましたかあああ」
「逆だよ!逆!」
「まぁそれは置いとくよ」
「置いとかないで!アンタがウチのスカー…ッ!!」

言えない。間抜け過ぎて言えない!

「君に用事があるんだよ」
「え?ウチに?」
「そう。例のアレ、いつも持ってるの?」
「あ、…うん、ウチの武器だから」
「ふうん、赤ん坊みたいだね。じゃあ強いの?」
「強いよ!もえはさすが極道の一人娘っていうか、負けん気も根性も据わってるよ!」
「こら余計なこと言うな」
「そういえば、まだ君に制裁を与えていなかったね。基本的に武器の携帯が認められるのは僕だけだ」

トンファーを構えた雲雀の双眸はギラリと鈍く光る。嗚呼、なんでこんなことになるんだ。えりかは山本となんだかんだ出だしから幸先良いしぶっちゃけもう時間の問題なんだろくっつけよとかまだ一日しか経ってないのに思う。てかウチなんて憧れのこの丸頭にスカート捲られたからね?それって千年の恋も冷めるってやつだからね?

「笹川さんの次はあんたかよ!」
「ワオ、ボクシング部主将とも一戦交えたんだ、じゃあウォーミングアップは十分だよね」
「まっ!ウチじゃなッ!!」

ガキィイン!!間一髪!ギリギリっ…!!両手の銃でガードしてなかったら一発でやられてた。トンファーは稽古で使ったことがあるけど下手くそだったからまともに対抗する術を持ち合わせていない。むしろウチの武器は接近戦ではなく遠くからのスタイル。雲雀とは、果てしなく相性が悪い。

「っ!」
「撃たないの?」
「ばっか!転校初日でそんなゴタゴタ誰が犯すか!」
「へえ、僕は構わないよ。だってそんな弱腰の弾」
「っあ!!」
「僕に、届く筈がない」

銃を弾かれた。倒された体を起こそうとしたけど雲雀がそれを許さずトンファーを真正面から向ける。

「もえ!」
「えりか!」
「なにやってんだ?またごっこか?」
「ややや山本」

筒から刀を引き抜いたえりかがウチと雲雀の間合いに走るが、鶴の一声でぴたりと止まる。全身の力が抜けたようにデレデレし出す。あ、完全にウチのこと頭から消えたな。この女ァ…。

「もえ!えりかちゃん!」
「綱吉君!それにリボーン!」
「やあ、赤ん坊」
「ちゃおっす、雲雀。勘弁してやってくんねーか?丸腰な女一人嬲ってもつまらねぇだろ?」
「一人?二人だよ。そこの彼女だって武器を構えている、向かってくるなら敵とみなすよ」

えりかは瞬間で刀を収めた。はっっや!!

「こいつらはツナの用心棒として雇ったんだ。それに並盛に来て日が浅い、そろそろ返しちゃくれねーか?」
「リボーンがイケメン過ぎて直視できない。もういっそ眼球潰して」
「だめだ、もえの眼球強靭過ぎて潰すどころじゃない」
「ぶっ放つぞこの裏切りもんが」
「あたしがいつ裏切ったー!」
「山本に意識いっちゃってウチを忘れたのはどこのどいつだー!」

えりかはえへ、と笑ってみせた。全然可愛くない。

「へぇ。じゃあ君が相手してくれるっていうの?」
「不服かもしれねーが、ツナをくれてやるぞ」
「ちょっ!!」

赤ん坊らしからぬ腕力で綱吉君を雲雀の方向へ投げつけた。ギラつく雲雀の目は、完全に標的を変えていた。



「いってええ」
「沢田君、大丈夫?」
「ごめんね綱吉君」

ボコボコにされた綱吉君と家に帰ってきた。えりかと山本、獄寺も一緒だ。

「ガハハ!ツナばっきばきのボコボコだもんね!!」
「うわ、煩いのがきたよ…」

がちゃりと音を立てて入ってきたランボさん。えりかは初日に見かけているが混乱状態だったため、まじまじとランボさんを見たことがない筈だ。だからか、食い入るように眺めてはじりじりと近づいている。

「ら、ららランボさん!!」
「ぐぴゃ!?」

がばり!!ランボさんを抱き上げたえりかは満面に笑みを浮かべてその黒髪の癖毛を撫でくり回した。

「か、可愛いー!!!頬ずりしたくなるぅー!!」
「汚いって!絶対スーパーのカーペットで寝てるから!!」
「ランボさん汚くないもんね!やーいツナひがんでる!」
「僻んでねーよ!」
「十代目の言葉遣いに気をつけろアホ牛!!」

満更でもないランボさんは得意げだ。一緒に入ってきたイーピンちゃんを抱き上げたら、言葉は理解できないけど嬉しそうにしているイーピンちゃん天使。やっぱ女の子は大人しいわ…。

「えりかは子どもが好きなのな!」
「えっ、あっ、いや、その…」

うわ、あいつなにもじもじしてんだ。にっこりと笑顔を向けられたえりかは視線を散々彷徨わせた後、やっと頷いた。お互い向き合って座り、その間にいるランボさん。なんか、こう…ほっこりとした家族絵に見えるのはウチだけだろうか。

「すいません十代目、そろそろお暇させていただきます」
「お。悪いツナ。俺もそろそろ帰るぜ」
「あ、うん!わかった!」
「また明日ね」
「うん、じゃあね!お邪魔しました!!」

まだ恥らってるけど、山本はお構いなし。天然強引。言動行動一つ一つに顔を赤くするえりかに、面白くない顔をしているのは意外にも獄寺だ。ただ単に、なんで山本がいいのかわからなくて変な女と思っているのか、それとも…。まさに王道展開を地で行くえりかに笑いがこみ上げていた。そんな、安息な日常はトリップ二日目でピリオドを打つのだ。


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