きっとどこかで会えるよね


“あいつの代わりに俺がお前をマウンドに立たせてやる”

御幸は遥華にそう告げた。それはつまり古鳥と同じようにこの本気球をミットで受け止めるという意味で。

「……できるわけ、ないだろ」

古鳥でも、一度俺の球を逸したことがあるんだ。あのときはすごく不機嫌になって、それ以来絶対後ろに逸すミスはしなかった。捕手である古鳥がどれだけ努力をして自分の球を受けてくれていたのか、もしかしたら腕の限界が来ていた…?

「理由を言わずに野球も学校も辞めたのも…俺が古鳥の肩を壊し…て」

そうなれば全ての辻褄が合ってしまうことに、ここ一番に絶望した。

「あいつの捕手としての道を…俺は気づかぬ内に潰していたとしたら俺の球受けたから受け続けたから…」

なんて、俺は最悪な相棒なんだ。もう相棒なんて胸張って言えない、言うのもおこがましい。俺のせいで新が辞めた。俺の球のせいで。これ以上、投手としてマウンドに立っていいのか。捕手を退部に押しやった投手が、怪我をさせる投手が。あのチームの期待を一身に背負うマウンドに立ってはいけない。

「…野球を辞めるべきなのか?」

野手投げでも、力めばあの威力になって飛ぶ。他のポジションの人がもし怪我でもしてしまえば?倉持に御幸、小湊先輩、増子さん、白州、伊佐敷先輩、キャプテン…そんな人たちを怪我させるわけにはいかない。それが、もしかしたら案外ベストなのかもしれない。他にも良い投手はいる。丹波さんに川上、あの二人は期待が他とは違うから。俺はいないほうが、いいのかもしれない。




「っと…洗濯干し終わり!!…上城のやつ昨日の洗濯物干しっぱじゃねーか」

早朝、倉持は自分の洗濯物を寮の外に干した。その時に見上げた部屋からは昨日のままその場に残された可哀想な洗濯物が見えた。

「……ッチ」

仕方なしに倉持は遥華の居る部屋に向かった。同室の先輩は早朝ランニングするから部屋には遥華のみだということも分かり切ったことなので倉持は遠慮せずに戸を開けた。ずかずかと部屋に上がり込み、下の段のベッドを覗き込む。

「おいこら上城!休日だからって寝込けてんじゃねーぞ…!!どわっ!びっくりさせんな!起きてんじゃねーか!!」

倉持は大袈裟に真横にぶっ飛んでみせた。寝てると思っていた遥華の目は完全に覚醒していた上に瞳孔が開いていたという。さすがの倉持でも驚いたらしい。ただ、人一倍人の表情から気持ちを察するのが上手い倉持はすぐに違和感に気づく。ゆさゆさと自分より大きい体を揺らしてもこちらに反応を返してはくれない。

「…おいなにがあったよ」
「…俺、怪我をさせる投手だ。」
「は?」
「なんでもない、着替える出てけ」
「ちょ、ちょいちょい!押すな!着替えるから出てけって…女か!」

女顔なだけに!そう悪態ついた瞬間にはもう戸は閉められていた。やばいのではないだろうか。倉持の頭に警告が鳴りだした。




「上城が?」
「はい…なんかずっと落ち込んだままズルズル引きづってたし」

倉持は危機を察し、主将である結城に被害を報告した。結城自身、このままのストレス状態が続けばよくないとは思っていた。

「なんか…自分は“怪我をさせる投手”だとかなんとか…」
「怪我を…」
「あのキャプテン、一つ聞いていいっすか?」

結城は返事の代わりに視線を寄越した。

「青柳が退部したのは上城の球のせいじゃないっすよね?」
「勿論だ」

結城は嘘をつかない。倉持はその結城の態度に安堵した。

「だったらそれアイツに伝えてやってください。俺よりキャプテンの方が信憑性高いですし」
「俺が?」
「アイツ…精神面弱いから。きっと青柳が退部したのは自分の球のせいだって、変な妄想してて。だからキャプテンがそう言ってやってくれれば変な事考えるのやめると思うんで」
「…わかった」

結城は倉持の剣幕に負けた。どうしたものか自分はどうも口下手だ。それにあまり饒舌な方ではない。自分が主将として何をすべきなのかもまだ微妙だというのに。こんなデリケートな問題を自分一人で解決してやることができるのか。結城は真面目で責任感が強い、余計なことまで考えてしまう性分なのだ。頭の中はもう迷宮迷路状態で行き着く先は…どうせ伊佐敷なのだが。

 


さわさわと春の風がヘルメットの間からはみ出た飴色の髪を揺らした。どこからどう見ても身長と体格以外は女と間違えそうな顔面をしている。顔面だけが浮いていればいいのに。遥華のバッティングに付き合っている先輩方はそう思っているに違いない。体格と身長が邪魔なのだ。その身長と青年らしい体つきをどうにかしてほしい、切実に。とはいってもそこまでムキムキというわけではない。そこは勘違いしないでもらいたい。

「おー、飛ぶなぁ」
「お前外野手でも十分やってけるぜ!」

引き攣ってる。らしくもなく、引き攣ってる。口が不自然に曲がり、口角は上がり、ひくひくと痙攣している。せっかくの顔が全部台無しだった。今日一番にブサイクだった。

「ま、まぁ…ほら!次いくぞ!!」

遥華の身体を突き動かしているものはただ積み重ねた練習が染み込んでいるだけで。それだけでなにも考えずにただ身体を動かしているに過ぎなかった。温厚で楽観的な遥華でもストレスは溜まる。本職はピッチャーである。なのにブルペンで投げられない。でも投げたらいけない。そもそも野球を続けていくことさえ臆病になってきた今日この頃だ。もうわけがわからない。自分の気持ちと状況とで板ばさみ状態だった。いい加減に爆発しそうだった。もう火山が噴火するくらいに限界だった。そうして、長く感じた練習はこれから寮に入ってくる後輩との対面のために早めに切り上げられて終わった。グローブを右手から外してキャップを取る。日は浅く沈みかけてきていた。追い打ちをかけるように、自分の部屋に戻った遥華は驚愕した。

「…なんでお前がここに?」
「…上城さん?」

身長が高い少年が部屋の前で突っ立っていた。見覚えがありまくる顔にムンクのような顔で彼を指差した。

「忘れないよ同じ中学だった…“あきら”!!」
「さっそく忘れてる…僕、降谷暁…“さとる”なんだけど」
「知ってた、わざとだ」
「今間違えてわざと言う必要がどこにあったの」

同室に地元の後輩が新たに加わりました。




「まさか降谷も東京に来るなんてな…世界は狭いね」

降谷の荷物を一緒に持ってやりながら遥華は暢気だった。

「あの」
「ん?」
「いないんですか、あの人」

あの人、とは言わずもがな、古鳥のことであろう。降谷も遥華と同じ本職はピッチャーだ。2年間は同じチームとして古鳥は降谷の豪速球をも受け止めていた。つまり、古鳥や遥華が上京してしまった後にチーム内で降谷の球を捕れる人物がいなくなってしまったのだ。

「古鳥に受け止めて欲しくてここ来たの?」

降谷はコクリと頷いた。

「青柳さんと、捕手の御幸さん、その二人なら僕の球を受け止めてくれる」
「あー、御幸なら捕ってくれるよ」
「…青柳さんは一緒じゃないの?」
「降谷、あいつはもう青道にはいないんだ。理由も言わないで部活も学校も辞めて、どっか行った」

理由は昨日散々いやというほど辻褄あってしまったけれど。

「どっかって…」
「知らないよ、知ってたら俺だってこんな。」

こんな思いしてなかった筈なのに。もし俺が原因なら怒れよ。怒鳴って殴ってお前のせいだと責めてくれた方が楽なのに。古鳥は俺にそんなこと一言も言わず、手をあげることもなく、ただ去っていった。結局なにも教えてくれないまま。

「とりあえず、古鳥はもういない。ごめんね俺だけが残ってて」
「…そんなことは」
「荷物片して降谷、もうすぐ3年の同室の先輩が戻ってくるんだから」

ただでさえ広いとは言えない室内に高校生の男3人が押し込まれているのだ。夏場は最悪最低な男の熱気やらなんかで部屋の気温が上がってしまう仕組み。これからのことを考えるとどうもやる気もなにもかも萎えてしまう。北海道民の遥華や古鳥にとっては一年前、東京の夏がどれだけキツかったか。あのだるさと身体から水分が抜けていく感覚と食欲のなさは今でも思い返せる。本当に辛い。

「夏、気をつけろよな」



早朝。辺りはまだ日が差していないほど薄青い空が広がっていた。小鳥の囀りがどこからか小さく聞こえてくるがそんな小さな囀りはグラウンドからの声に掻き消されていた。

「はようございます!!」
「はようございます」
「はようございまーす」

青道高校野球部監督、片岡鉄心の登場によって。入部希望者は横二列に並んで監督の前に立っていた。他の2・3年はその後ろで同じように並んでいる。

「入部希望者はこれで全員か?」
『はい!!!』
「まずは順番に自己紹介してもらおうか…」

監督の言葉に一番目の列の端にいる少年がうわ擦った声で精一杯自己紹介をしている間、遥華は降谷がちゃんと整列しているのをチラリと見て確認した。

「ああ〜〜!御幸かず…!」
「……御幸?」

キョロキョロと同じ列に御幸がいないことを確信し、微妙な表情で再び前を向いた。自己紹介はスムーズに進んでいく。

「よし次!2列目…」
「あ〜こいつ遅刻したのに列に紛れ込もうとしてるぞ〜!!!」

御幸だ。確実に御幸の性格の悪さがで始めた。いつの間にか遥華の隣にちゃっかり並んでいる御幸は遅刻したであろう、御幸に嵌められたであろう新入部員に軽く手を振っていた。

「よぉ上城」
「お前、勇者?」

結局あの新入部員は練習が終わるまでタイヤをお供に走らされることになる、御幸や同室の倉持に増子も同罪になってしまった。
 



「ちくしょー!!もう二度とてめーの言う事信用しねーからな!」
「はっはっは、ありがとう」
「誉めてねーだろ今のはよ―!」

仲良くタイヤを腰につけて走らされている4人を少し離れた場所から眺めていた遥華は主将の結城から言われた言葉を思い出していた。

――「青柳が青道からいなくなったのはお前のせいではない」
――「…え」
――「怪我もしていないから安心しろ」
――「…じゃあなんで、なんで古鳥は学校も辞めたんですか!」
――「…それは」
――「俺の球が原因じゃないことがわかって、すごく安心しました、でも…!」
――「俺も、全てを知っているわけではない…すまない」

あんな、あんな顔されたら、追求できなくなるじゃないか…。ベンチで座って暫くぼーっと4人を眺めていたら遠くにいた倉持が片手を上げていた。俺に気付いてくれたらしい。ズルズルとタイヤを引きづってベンチにやってきた倉持は不自然なほどいい笑顔だ。嬉々として倉持は依然笑顔のままだ。気持ち悪い。

「よ!顔色が良いようですがなにかいいことありましたかー!!?」
「いいこと?いいことっていうか謎が謎を呼んだ…みたいな」
「はぁああ?」

期待ハズレ。そう顔にデカデカと極太マッキーで書かれている。なにを期待していたのかは定かではないが俺の返答はご期待に添えなかったらしい。なにかギャーギャー言ってるがなにを言ってるのか意味不明。

「なななッ!あの人彼女いるんすか!!?」
「は?」

御幸が隣に同じようにタイヤを引きづってこっちに走る後輩を訝しげな目で見た。

「マネージャーっすか!マネージャー!!」
「あん?」

倉持の死角になってて見えなかったがどうやら俺は女と勘違いされたらしい。

「お前どこに目ついてんだよ」
「ちゃんと顔面に!!」
「ユニフォーム着てるだろーが!それにあんなでかい女居てたまるかよ!!」

倉持も失礼にも程がある。

「嘘ォ!だ、男性でいらっしゃいましたか…!」
「俺をどこからどうみたら女の子に見えるかな」
「え、だって」
「まぁ究極の女顔だからな!!」
「御幸、怒るよ」
「でも倉持、彼女は否定しないんだな!女としては否定したけど」

御幸がニヤニヤしている。本当に性格悪い。顔面偏差値と比例していない、だから友達出来ないんだ。

「べ…!別に俺は」
「いやー、前から思ってたんだよなー親友以上恋人未満?」
「さっきから言わせておけば勝手なホモ疑惑作りやがって」
「疑惑じゃなく、今俺は確信した」
「すんな!関節折るぞオラァ!!!」

…もう部屋に戻ろうと思う、腹減った。




ワイワイ。雑踏の中で飯を食う。優雅にみんなと楽しいランチ。それは遥華の一番好きな時間。

「ご飯ください!」
「おめーもう5杯目じゃねーかぁ!」

体に似合った大食いなのだ。

「吐け!もう吐いちまえ!!沢村みてぇーに!!」
「俺は食物を粗末にしない、一度体に入れたものは消化するまでは、出さない!!」
「余計な気迫で言うんじゃねぇ!!!!」
「俺のモチベーション崩さないでください」
「崩してるつもりはねーよ!!」

少し離れた場所で3杯のノルマを達成しようとしていた結城と伊佐敷。

「随分元気になったな」
「あぁ、なによりだ」
「なんかしたのかよ哲」
「まぁ…倉持に負けてな」
「は?」
「青柳が青道を辞めた理由を自分の球のせいだと思っていたらしい」
「で、どうなんだよ」
「それは違うと伝えておいた」
「…お前は本当に口下手だな!」
「む」

言葉足らず。結城には本当の意味で口下手の言葉足らずだった。

「お前、本当は知ってんだろ」
「なにをだ」
「…青柳の行った“学校名”」
「………。」
「あんなにお前に懐いてたんだ、なんか知ってるだろうとは思った。ま、嘘が下手っつーかよ…俺くらいには話してもいいんじゃねーか」

結城はふ、と緊張が溶けたように肩の力を抜いた。

「…青柳は、本当に上城の球のせいでここを辞めたわけじゃない。…いや、そもそも原因はやはり上城なのだが…」
「上城の球じゃねぇが、あいつが原因で?」

伊佐敷は未だにむぐむぐと倉持と御幸、沢村と一緒に食事をとっている遥華を見やった。

「対戦したくなったらしい」
「対戦…?」
「あぁ、相棒としてではなく、敵同士で投手・捕手として戦いたいと…だからあいつは稲実へ行きそこの野球部に入った」

結城の次の一言で伊佐敷の周りから音がシャットダウンされた。昨年、青道はそこに敗れた。因縁のライバル校であるのだ。




「なー上城」
「んー?」

湯船に仲良く肩を並べて絶賛入浴中の遥華と倉持。エコーがかかった2人の声はよく響く。割と遅い時間帯なのかさっさと上がっていく者が多く、プチ貸し切り状態だ。膝を抱えて疲れをとるように瞼を閉じている遥華を横目で見やって倉持は口を開いた。

「キャプテンから聞いたろ、青柳のこと」
「うん」
「うんって…」
「いや、そりゃあ安心たよ…俺の球で怪我したりしたんじゃないって」
「だったらさっさと一軍戻って来いよ!てめぇーがいねぇとなんか締まらねぇんだよ!!」
「俺一人がいなくなったところで何も変わらないでしょ」
「周りは変わんねーかもだけどオレの…っ、ハァ…」

上手くいかない。そう顔に浮かべた倉持は大人しくまた隣に座り直した。風呂の天井を眺めながら。

「戻ってこいっての」

呟くような声にらしくないな、と思いつつも昨日の出来事を話していなかったことを思い出した。

「一軍で思い出した。御幸が俺の球受けるって言ってくれたんだ」
「ハァ!!?」
「可笑しい奴だよな」

遥華の球の威力を知っている倉持は顔を歪めた。あの球を御幸が取る?なんだかとっちゃいそうなイメージが沸いたがそんな筈はない。古鳥しかあの球を受け取れないのだ。だから、古鳥が青道を離れた直後遥華はマウンドに上がれなくなった。監督の判断だ。

「可笑しい奴だけど嬉しかったんだ…」
「上城…」
「俺、古鳥が退部したのは自分の長年投げ続けた球のせいかと思ってたんだ、だけどキャプテンから教えてもらって…俺のせいじゃないんだって…」
「…」
「御幸が古鳥を目標にしていたのは知ってるし、俺もその糧になれたらいいと思う。俺は…相棒がいなくなっただけで埋もれるつもりはなかったんだ」

目を開けて遥華は光の篭もった目でいくらか目線が下の倉持を見た。倉持もただ見返す。

「俺は最初一人でここに来るつもりだった、だから投手を諦めたくないし…もし御幸が俺の球を受けてくれるなら…もう一度マウンドに立ちたい」
「……ヒャハッ、じゃあ早く上がってこいよ!上城!!」
「勿論だ!!絶対大会前には戻ってやるさ!!」

いつもの、あの時薄れていた笑顔。拳を水面に叩きつけて笑っていた。




青道は春の大会ベスト18を確定させた。センバツを決める秋の大会、本戦となる夏の大会。その前に準々決勝が今日行われる、その試合相手は去年秋の大会で敗れた市大三高。残念ながら遥華はまだ一軍への昇格は成されなかったが、その前向きな姿は評価されつつあるのか、時々ブルペン入りが許された。捕手が捕れない球を投げるわけにもいかないが、この時自分の強すぎる力をコントロールしようと努力を重ね続けた。ネットを破ってしまったことで監督に大目玉を食らったが。“一軍に戻る”それが遥華の全てだった。

「じゃあ、頑張れ倉持」
「まじで来ねぇの?」

球場に向かう一軍達に手を振っていた遥華に倉持は意外そうに目を剥いた。

「ったく、沢村も来ねぇんだってよ。ま、お前はすぐ嫌でもこっち行きだけどな」

そう言って親指をバスに向けた。倉持の当たり前だろ的な態度に小さく噴き出した。

「エラー、すんな」
「しねーし」
「観戦できなくでごめん」
「別に気にしてねぇ、てか気持ちわりぃ」
「俺、すぐ戻る…夏の本戦まで…絶対だ」

にっと笑った倉持の横顔がバスの中に消えてった。

「あ、そーだ上城!!お前アレだアレ!力加減意識しすぎて最近コントロール悪ぃから!ヒャハハッそこ気をつけろ!!」
「え、あ、うん!!」

ビビった。なにがビビったって…あいつ、人のことよく見過ぎじゃね?殆どの部員達が観戦に行ってしまった、こんなに寂しい青道グラウンドも久々だ。掛け声一つもない、風だけを感じる。

「夏の本戦まで三ヶ月…降谷や沢村、丹波さんに川上…予想外の競争率だ」

4人の投手。降谷の実力は中学で見ていたからわかる。沢村はまだまだ発展途上だがクセのあるムービングボールの使い手だと聞く。川上に丹波さんは投手の2本柱だ。エースの“1”を背負うあの背中に憧れたのは遥華だけではない。グラウンドを見下ろせば既に衝突したのか沢村と降谷の姿が見えた。

「……古鳥、俺はお前がどうして去ったのかなんてもう聞かない…野球を辞めてなければ…きっと何処かで会えるよね」

沢村と降谷は、少し…自分たちに似ている気がした。



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