その答えに触れて2 | ナノ


▼ 71.虚構の未来

≪パラレルワールドは、ウチらの元の世界の事じゃない。…実はこの未来の世界は、ウチがやり直した未来になります。なんでこんな事が出来たかというと、風のボンゴレリングの役割とウチの異邦性が合わさったから、としか今は説明のしようが無い。風の特性は多分縦軸の時間遡行。≫

…縦軸の、時間遡行…??

≪今あんたがいる世界線は、…もしかしたらまた何かが狂って、白蘭に攻略されてしまう世界になるかもしれない。≫

ちょっと待って…でもこの世界では守護者は順調に揃ってる…今のところ原作通りの物語が続いてる、変な点は今のところどこにも…

≪ウチはこの未来をやり直した。今あんたが居る未来はウチがやり直した未来なんだよ。信じられないかもしれないけど、今の世界で歪を感じたら…やり直して欲しい。意識共有されないかもしれない。だから必ずこの匣を残して欲しい。あんたが匣を開けられたという事はリングに炎を灯す修行に進んだという事だから。見極めて。その世界が正しい軸なのか≫

「そんなのどうやって…」

≪見極めて欲しいのは、修行の順調さ。メローネ基地へ行けるまでのレベルだよ。もし一人でも遅れをとったり、欠けていたらアウト。そして、誰も死なずにメローネ基地を攻略する事が第一。≫

修行スピードはまちまちだ。本編に沿ってるといえば沿ってる。でもウチらはどうなるんだろう。えりかと修行を続けてはいるけど、メローネ基地へのレベルは誰が決めてくれるのだろうか。それとももう流れに任せるしかないのだろうか。この話を信じるとしても、修行のレベルや進行速度なんてこっちからしてみたら分からない。パラレルワールドへ意識を移行するなんてとんでも判断を下せる時は…

…誰かが、死んだ時…?そんなの、黙って見てられる?

≪あのね、今は打倒入江正一と言われてるかもしれないけど本当に倒すべきはもっと上。ミルフィオーレファミリーのボス、白蘭だったよ。外見だけはイケメンだけど騙されないで。あれはイケメンの皮を被った殺人鬼だよ。今ボンゴレがこんなことになってしまったのも全部白蘭がそうさせた。圧倒的武力を行使して≫

「…白蘭。」

ちらっと出てきてたな、本誌に。入江正一と連絡を取り合っているミルフィオーレの総大将だ。20代くらいの若い外国人。作中は笑顔が多い印象があるけれどあの切長の目に睨まれたら蛙になってしまいそうだ。となると入江正一は何者なのか。メローネ基地を牛耳っているというのはビアンキさんとフウ太君の情報によりわかっている。でも入江正一ってどっかで見なかったっけ。

≪時間軸の話は混乱極まりないし、突飛すぎて頭がどうにかなっちゃいそうだと思う。実際ウチだって今そうだし。…もしウチがしくじって原作からまた外れた未来になった時。あんたは2回目になるんだよ。… えりかと約束したよね。軌道修正。歪めたならやり直さなければならない≫

「…なんでえりかに協力を求めないの?」

≪じゃあなんでえりかに協力求めないの、って話になると思う。えりかはこの世界唯一無二の同胞。そうだよその通りだよ。…ウチがこの時間を変えようとしたのは……最愛の人が2人も死んだから。それなのにウチは何故か生きて、いまボイスレコーダーを残せてる。いや、生き残ったからこそウチはやり直せたんだ≫

…本当に起こった事なんだと想像した。友達を失うって、…どういう事なんだろう。いやこの話からして一人は確実にえりかの事だ。この世界に来て前より更に命の危険に晒される事が沢山あった。背中に穴空いたり、ぶん殴られたり、色々あった。だけどどんな時だってなんとかなっていた。…それが覆らない、世界のひとつなんだって、ウチはどうやったら受け入れられる?

≪ねえ。2回目のもえ。その時は、次こそは…次こそはどうか。≫

いまここに居るウチもそんな残酷な世界にいるのかもしれない。

≪どうか成功させて。その時になれば、絶対何も言わなくても意識を移行できるよ。助けたい。みんな…盃を交わした仲間だよ。たくさん沢山助けて貰った。恩義がある。情がある。…ウチがやるしかないんだ。

…修行が上手くいかなくてメローネ基地で敗れる。
もう一人死んでしまったのはね…


…雲雀だよ。≫




「今度はなに…その顔なに…」
「イヤ、ナンニモ。」
「なに…その棒読み…こわ…」

少し放っておいたら今度はこのシワッシワの顔よ。良い表情筋してるじゃないか。山本との修行を切り上げて戻ってきてみれば一人で頑張るもえがいた。やる気が戻ってきたのはいいんだけど、まあ、なにを聞いてもこれな訳。入江のメローネ基地に乗り込むのだから、どうにかメンタルコンディションも整えて欲しいものだ。

「なんか色々考えてるみたいだけど、大丈夫?笑ってあげるとは言ったけど…本当に困ってることない?」

頬っぺたをぷにぷに突きながら至極普通の事を聞いただけなのに、もえは異常に身構えるような顔をした。は?なんだこいつ。

「困ってんの?」
「困ってない!」
「いや食い気味」
「なんでもない!元気になっただけ!!」
「うるさっ。キャラ被るからやめろ」

まあ…うん。元気ならいいんだけどね?でも、お願いだから何かあるなら相談して欲しい。10年後のもえ…ていうかあたしからしたら一緒に10年歩んだもえなんだけど、隠し事や秘密が多くなって秘匿回線まで使って誰かに連絡をとった。行動からみたら完璧に黒。上層部にも目をつけられている。CEDEFのラル・ミルチだってもえに疑惑的だ。なんで、こんな状況で疑われるような事をするの。なんで急に変わってしまったの。本当に急だったんだよ。まるであたしと紅鬼が入れ替わったみたいに。

「ね、ねえ!えりか」
「ん?」
「……じ、自分を大切にしてよ!」
「え。何。急になに。」

言って満足したもえはフンスと息を吐いて風呂!と叫んで出て行った。なにか悪いもんでも食べたのだろうか。もえの情緒が殊更心配された。


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