その答えに触れて2 | ナノ


▼ 56.ボス戦でパーティ置いてく感じ

「山本、お願い」
「任せろ。お前の言う通りにすりゃ大丈夫だ。信じるぞ」
「信じて。山本は必ず入れ替わる。そして…過去の山本がボンゴレリングを持ってきてくれる。必ず、絶対に、未来を変える」

山本は少しだけ、ほんの少しだけ泣きそうな顔をした。永遠の別れではない。だけど。あたし達の今は過去のあたし達によって変えられる。それがどうなるのかなんて分からない。この時代の友人達。家族。仲間。結びついたファミリー。過去の彼らは知らないから。未来を変える事に前向きで積極的だ。でも"今のあたし達"は、とても臆病だ。なにかを失敗すれば、なにかを失う。それを知ってしまった。理屈を詰めて計算して確率を弾き出して。勝算に見合わないものを切り捨てる。子どもの頃は、色んな事が出来たのに。なにも恐れずに。

「ツナがリングの破棄命令を下した時、なによりも伝わってきたのはツナの覚悟だ。俺達にゃ到底理解できない業をあいつは一人で背負っちまってた。…力になれなかった。命令通りリングを砕くことでしか、答えられなかった。」
「…沢田君は、やっぱりボスらしくないや」
「それが、沢田綱吉って男なんだ」
「もう一度会いたいね」

刀を肩にかける。真っ白な、昔の笑顔ではないけれど。…ねえ、山本。あたしは山本と一緒になることは叶わなかったけど、今だって思ってるよ。

「取り返すさ。もう一度。…だから、俺からも頼むぜ。過去の俺たちを…よろしくな」

《Bハッチ工事跡地、開口しました。》

必ず守るから。




「………………」
「そんなガン見しないでよ。照れちゃう手元が狂っちゃう」
「10年経っても手動運転か」
「SFの見過ぎだわ」

いや、運転免許持ってるんだ…取れたんだ??えりかのくせに。

「皆んなはバイク免許も取得したんだけど、あたしは車で精一杯だったんだ。仲間はずれよ」
「やっぱえりかはえりかだった。」
「もえはバイク免許取れたのにさー。どんだけ自分センスないんだって思ったよ」
「否めない」

えりかが唯一所持しているという一般車両。…お前本当にあのボンゴレマフィアの守護者か?というくらい普通の車だった。日本製。

「一般人に紛れるのはこれが都合いいし、なにより日本製の安心感半端なくない?」
「でもちょっとカッコつかないよ」
「そりゃフェラーリ乗り回してるお宅の雲雀さんはご立派だけどさ。似合うし」
「お宅って。てかまじでどこ連れてかれるのウチ」
「言ったでしょ?財団所有のヘリポートまで向かうって」
「でも雲雀って未来ではまだ日本に来てないよね?」
「本当にあたしの話聞いてないね。だーかーら、あんたの話したらすっ飛んで帰ってきたって言ったでしょ。」
「あの…さ、質問一個いい?」
「あたしに答えられる範囲なら。ていうかシートベルト締めれ」

ガチャ。締めました。…信号で止まった瞬間ぐっと引っ張られて確認されました。

「未来のもえと雲雀さんの関係?……草壁さんに聞いて。」
「答えられない範囲??え?答えられない範囲だった?」
「過去のもえに不用意に話すと怒られそうだもの。まぁ2人の雰囲気は昔のまんま。スパルタ愛に溢れた微笑ましい関係だ。良かったね」
「未来のウチ相当体、丈夫だろうな」
「でも今までの雲雀さんとは全然違うよ。愛を感じるって泣きながらたんこぶ作ってきた未来のもえがそう言ってた」
「ウチ色々大丈夫!!!?」
「大丈夫大丈夫。あんたは昔からおかしい」

…言うようになって。としみじみしてたらえりかがウインカーをあげた。律儀。一般車両に似つかわしくないアンテナのついた機材をどこからともなく取り出したこいつはピッと親指を突き出した。

「妨害電波だ。ついたよ。ここが財団所有のヘリポート。草壁さんには話しておいたから、行ってらっしゃい」
「……は?」
「え?行ってらっしゃい。」
「なにそのボス戦でパーティ置いて単独で乗り込む寂しい感じ。急に見放される感じ。」
「パーティと言ってもあたしともえしかいないけど」
「お願いしますううう!ウチを1人にしないでえ!」
「しょうがないじゃん。群れ嫌うんだから。むしろ単独パーティの方が生存率上がると思う」
「未来のあんたは本当に鬼畜だな!!!!」

いいから降りろ。はやく歩け。しっしっと片手であしらわれたウチは泣く泣く車から降りた。ご丁寧にクラクション鳴らして去っていった奴の、ありふれた普通車は颯爽と一般車両に一瞬で紛れた。

「う…うううううっうっうっう。」

久々に泣きたくなった。


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