その答えに触れて2 | ナノ


▼ 54.おせっかいボタン

「子どものウチには単に逃げたようにしか思えない」

えりかの気持ちを、自信のなさを理由にして拒絶したのなら、そんなの。

「そんなの弱虫だ」

山本を応援していた。えりかがずっと好きな人だから。キャラクターだった時からあの子の支えだったから。

「言ってくれるじゃねーか。けどまぁ、はは…そうだな。俺は逃げたんだな。…後悔か…いつまでも未練抱えてっから、2人とうまくいかなくなっちまったんだな…」

肝心の獄寺も、過去と入れ替わってしまった。これから山本も直ぐに入れ替わる。…えりかは自分のプライベートな未来を変える事を良く思わない。獄寺と結ばれた事を後悔していないからだ。それは、もう分かってる。だけど、本当にそれでいいのかな。ウチがどうしようもないお節介なのは百も承知。でも。山本1人、そんな顔させたままにはしておけないよ。

「山本は廃工場で京子ちゃんとハルちゃんを助けに綱吉君と獄寺を連れて地上に出る。ミルフィオーレのブラックスペルの連中と交戦になるんだ。…山本もそこで過去と入れ替わる…!」
「!そういや、お前も先の事が分かるんだったか」
「その前に、時間がない!えりかと話す事を勧める。」
「獄寺がいない内にってか?そんなの獄寺に申し訳な…」
「あーもー!!ウチの知ってる山本はこんな腰抜けじゃないんだよ!行ってよお願いだから!もう今の山本が此処にいれるのは今夜で最後なんだよ!!」

そりゃ、すっごいやりづらいのはわかる!だって人妻だもの!そのドン引きな顔を受けるウチも正直つらい!

「もう二度と帰ってこれない今だから!今だからこそ…伝えて欲しい!」

だけども…!!例え変わらなくたって!その想いを消していいとは…ごめん!思わないから!



「おうわっ!!?」
「あっ!わりぃ!出てくると思わなかった!」
「あたしこそごめんね!?えっと、用事?」

10年前のもえにぶっ叩かれて勢いで来たはいいが…いざ面と向き合えば、なにを言ったらいいのか分からない。10年前ならすらすら出た言葉。こいつの照れた顔を見るのが楽しくて、同時に周りの奴等より距離を置かれている気がして寂しくもあって。高校入学を機に、部屋はそれぞれ分かれてクラスも違ったし、俺は高校まで野球を続けていたものだから同じ家にいても生活サイクルは全く噛み合わなかった。ただ、剣を持つ者同士。親父を審判に試合をするのはすっげー面白かった。えりかの剣にはよく魅せられた。

「なあ。」
「どうしたの?」

今まで、いや。あの日から。

「俺、後悔してる。お前があの日、俺に伝えてくれた言葉を素直に受け取れなかったこと」

野球に剣にマフィア。ツナや獄寺のイタリア滞在。色んな事が二十歳になるまでにあって。俺は混乱してしまった。いまなら分かる。あの時もまだガキだった。柄にもなく、ない脳味噌を使って将来を真剣に考えたんだ。

「後悔してるからこそ…幸せになってくれな。えりか。入籍したって報告聞いた時は…本当は心から祝福してやれてなかった。けど今なら…頑張れば出来るから。」
「…本当に、遅過ぎるよ。ありがとう。山本のこと、家族として大好きだよ。」

…ああ、畜生。こんなに綺麗になっちまって。なんで俺、こいつの手を離したかな。10年前は平気で思ってた。将来、嫁さんを貰うならこいつだって。信じて疑わなかった。それを、大人だからとこじ付けて。かっこつけて捻じ曲げたのは俺自身で。

…もしこの未来を変えられるなら。俺は今度こそ獄寺と正面からぶつかれる。そうしたら、獄寺はきっと。あの好戦的な顔で口角を上げるんだろう。望むところだ…と。



「あああああ」

お節介ボタン、ウチのはどこにあるんだろう。ここか!?ここか!?どこだ!?でもですね!?放っておけなかったんだ!あんな顔されてみなよ、見放せないよ!

「怒っちゃうかなぁ。」

その話しはすんじゃねーってムキになってたし。普段がヘタレのへにゃへにゃ人間だから怒るとそれなりにギャップあって怖いんだよな。

「あ、綱吉君」
「わっ!吃驚した!」
「寝れないの?ハグしてあげようか?」
「いいいっいいよ!!!大丈夫だよ!…ただ、母さんや京子ちゃん達の事が気になって…」
「あれ?えりかに会ってないの?」
「え?うん…まだ会ってないんだ」

"両親の無事くらい子どもの彼に教えてあげたい"

「あー…あのさ、大丈夫だよ。奈々さんと家光さん無事だよ」
「え!!?」
「10年後のえりかがね、ヴァ……、イタリアの仲間と協力して捜し当ててくれたんだって。大丈夫、無事だよ」
「…っ、母さん…!」

…うん、確かに。これくらいなら教えても問題はないだろう。大丈夫、伝えて良かったんだ。ぐすぐすと鼻を鳴らして咽び泣く綱吉君の背中を摩った。そうだよね。14歳ならこれが普通。いくらザンザスを倒したって言っても、ボンゴレボスと言っても、まだこちらの世界に足を踏み入れたばかりの子どもなんだ。…ウチらって本当に普通じゃないって痛感させられるわ。もしウチの父親が行方不明と言われても、多分香港辺りか故郷のブラジル辺りでドンパチってるかなんかだろうとしか思わない。

「えりかちゃん…母さんを探してくれたんだ。」
「明日会えるよきっと」
「うん。その時にはちゃんとお礼を言うよ」

泣きべその顔にティッシュを押し付けた。なんだかんだ、綱吉君って庇護欲そそられるっていうか。なんていうか。同い年だけど弟みたい。おお。鼻水の伸びがすげえ。

「というか…もえは怖くない?俺より先に未来に来てたんだよね?」
「え?あぁ。リボーンもいたし、未来の獄寺やえりかがいたから別に怖くもなかったよ。…いや、未来の人間関係の方が怖かったような…」
「人間関係?」
「いいんだ。いいんだよ綱吉君。君は知らなくていい」

あんな恐ろしくドロドロした昼ドラ並みの大人事情など、純粋無垢な今の綱吉君の耳に入れるのもおぞましい…!!!

「そだ。獄寺は?一緒の部屋だよね?」
「あ!そうなんだよ!獄寺君!どっかに行っちゃったんだ!」

…あのやろおおおおお!!獄寺隼人!勝手にふらっふらふらっふらと!!!!この時代のえりかと鉢合わせたらどうする気だー!


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