61.心臓が止まったら会おう

翌日火影邸。砂隠れから帰った木の葉の受験者は我愛羅の言う各里の影に送られたレポートの判断を聞きに集められていた。シカマルと新もネジ達と共に木の葉に帰り、綱手の横に控えた。これから、合否が言い渡されるのだ。

「諸君の二次試験のレポートは、精査させてもらった。その結果、シノ、キバ、ヒナタ、チョウジ、いの、サクラ。この6人は問題なく中忍試験昇格!」
「わああっ!」
「やったぁ!」
「コムギ、ゲンナイ、イナホ。お前達は次の機会に譲る事とする」

合格する者もいれば落ちる者もいる。皆昇格ハッピーなんてことにはならない。厳しい世界なのだ。肩を落として去る3人を見送った。

「あと、二本の巻物こそ揃っていなかったものの。そのめざましい働きにより十分に力量ありと認められた為、リーとテンテンは中忍昇格!」
「…!五代目!」

ネジのチームメイトだ。認められて嬉しい。だけど何故ネジの名前が出ない!?無意識に五代目に声を上げていた。

「綱手様!我々ガイ班は3人で一つ!ネジの名前がないのは、」
「どいつもこいつも!黙って聞け! 」

一喝。萎む俺とリー君。

「日向ネジは二階級特進の上忍昇格」
「……え?」

「風影からネジの働きは特にめざましく、特別に配慮されたし、との事だ。元々ネジは中忍扱いだったしな。」
「…我愛羅…が。」

そうか…ネジは我愛羅の中にある尾獣を守ったんだ。それを考慮したってことか…。そうか…。ネジが…上忍に…。

「そう、か…。」

前まで。ネジが忍になることすら望まなかった。忍なんてものがなくなれば。誰も。傷つくことはないのに、と。だけどネジはやはり忍になった。俺はあの日、諦めたんだ。ネジの邪魔をすることを。運命を受け入れない。抗う力を持ったネジを、認めたんだ。おかしいな…少し前まではアカデミーの生徒だったのに。音忍によって死にかけた時の事も。色々蘇る。

「やりましたね!ネジ!」
「おめでとう!」
「ありがとうございます」
「2人とも、ありがとうございます。僕が中忍になれたのはガイ班のチームワークあってこそです!」
「あたし達のスリーマンセルは永遠よね」
「あぁ、そうだといいな」

ネジの穏やかな微笑に、思わず涙が少し流れた。贔屓目で見ても、見なくても。ネジは変わり、成長したんだ。見てますかヒザシさん。ネジは……立派な忍です。

「あれ、新さん泣いてるのー?」
「あちゃー」
「新さん、大丈夫?」
「いやーだめだめ寄らないで、今ダメだから、涙腺弱いから…って溜息やめてネジ!」

暖かな笑い声。それを暫く観察した五代目がこほんと咳払いをした。

「新、シカマル、そして今回中忍、並びに上忍に昇格したお前達に一つ頼みがある」
「…?」
「まずは、火影の直轄の部下である暗部の重鎮、奈良シモクという男について話す。」
「あれ?奈良って、シカマルの…」

シカマルは口を噤んで五代目を見つめていた。一言一句聞き漏らさないようにと。

「あぁ。シカマルの兄であり、あたしの優秀な部下でもある。…ある任務で大怪我を負ってな。暫く任務についていなかった事で身体能力は衰えている。…そこでお前達の力を貸して貰いたい」
「…1人の暗部の為に…か?」
「先程も言った通り、シモクは火影直轄暗部の重鎮だ。…死なれる訳にはいかないのさ」

それがなにを意味するか。木の葉にとって、どう損害になるのか。キバ達にはわからなかったのだろうが、聡いネジやシカマルは理解した筈だ。

「任意だ、辞退しても構わん。まぁ…公式戦とはいえ今回を逃したら、暗部の手練れと戦う機会は今後ないとは思うがな」

ぴく。リー君の耳が動いた。器用な。

「はい!僕やります!」
「ちょっとリー」
「シカマル君のお兄さんですよね!僕ちらっと見たことがあるんですが、暗部の手練れだったとは…是非手合わせしてみたいです!」
「もー、どうする?ネジ」
「…いいだろう、参加しよう」

ネジは俺の目を見つめて、なにかを感じ取ったのだろうか。参加の意を示した。

「シノ!ヒナタ!俺たちも参加するぜ!なんだかよく分からねーけど!」
「ワン!」
「う、うん!」
「この公式戦の参加するには意味がある。なぜなら、」
「よっしゃー!やるぜー!!」
「シモクに会えるなら、僕参加しよっかな〜?」
「あたしもやります綱手様。いのは?」
「…あたしは…」

…そっか、いのちゃんはシモクとまだギクシャクしてるのかな…。シモクとは、あの拷問の時以来会ってない。てか、あいつ怪我治るの早くない?

「いのちゃん、手伝ってやってくれないかな。シモクもそれを望むと思う」
「…新さんは、そう思う?」
「うん」

悩むだろうけど。いのちゃんは俯いた顔を一度下げてから、ぱっと上げて頷いた。

「新さんも参加するの?」
「うん、あと俺と同じ上忍のオクラって奴も」
「…綱手様、俺も」
「シカマル」
「…なんかめんどくせーけど…やるっす」
「全員参加だな?」

この場にいる全員が、奈良シモクの為に力を貸す。…シモク、良かったな。

「2日に分ける。1日目は個人戦、2日目にはチーム戦で各自スリーマンセルで対戦してもらう。チームはあたしが決める」
「まるで中忍試験の続きしてるみたい」
「お前達、同じ木の葉の仲間だからと言っても気を抜くなよ。本気でなければ演出にならん。殺す気で掛かれ。」

なにを隠そう、シモクは暗部だ。修羅を潜り抜けて、9年間暗部に籍を置く強者。殺しても死なないような男。それに殺気を込めて直接対決しなければ、シモクの演出にはならない。本当の暗部の激戦は、俺たちの公式戦なんかとは比べものにならないのだから。シカマルが自身のピアスを弄った。シンプルな白いピアス。猪鹿蝶の証。

「頼んだぞ、お前達。」




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