60.夜の街のあしあと

「三次試験は中止?」
「すまん、詳しくは言えないが砂隠れ内部の事情だ」
「じゃあ中忍昇進は?」
「二時試験における各班の活躍を詳細なレポートにしてある。中忍に昇進させるかどうかは各々の里で決めて欲しい。」
「まあ、元々中忍としての任務を遂行出来るかどうか見極める為の試験」
「仕方ないじゃん」
「しかし、魔の砂漠を命懸けで渡った受験生が、納得するかどうか…」
「わかっている」

我愛羅の考えていることはすぐにわかる。少しの間だけだったけどあいつの側に居たんだ。昔、木の葉の道端で対立し合ってた奴とは思えない程に良い方に変わった。ここにはいないけど、これも全てナルトのお陰なんだろうな…。ナルトの言葉だけで、風影にまでなった我愛羅も。本当に、ただ純粋な少年だ。

「受験生諸君、ご苦労だった。時は流れ、忍の世界にも新たな秩序が必要になった。今まで忍は掟の為なら仲間の命すら犠牲にせねばならないと言われていた。…しかし、我々は今規則より大切な事があると知った!」

隣のカンクロウ君が素早く振り返る。俺達に言っていた内容と違うからだ。確かに我愛羅は受験生達を納得させる為ここに監督官として立っている。だが砂隠れの長、風影が忍の根っこの掟を否定したのだ。

「それは友であり、同じ里の仲間であり、痛みを分かち合える者同士の絆である。」
「我愛羅…あいつなに言ってんのか、」
「カンクロウ君、聞いてやれ」
「今ここに居る諸君は常にその事を知っている者達と理解している。よって第三次試験の必要はなく免除とし、更に二時試験における一部条件を解除する」

受験者達がざわめく。おいおい我愛羅、アドリブ続きでこっちが参っちまうんだけど。

「今ここに並ぶ受験生諸君の活躍は詳細なレポートにして各々の里に送られる。諸君の中忍昇進は各影達によって判断してもらい、決める事とする」



「我愛羅、吃驚した。」
「…それはすまない、だが間違ったことを言ったつもりはない。」
「責めている訳じゃない。お前が仲間や絆を大事にしているのは、今回のことでよく分かった。それに里を守りたいと思ってることも」

これなら、大丈夫だ。我愛羅は風影として活躍していくことだろう。そして、木の葉ともより良い関係を築いていける。

「今回の木の葉と砂合同中忍試験の遂行、心より感謝致します。俺が連絡役で不甲斐なかったと思いますが、風影様の元で様々勉強させて頂きました」
「…」
「…我愛羅、これからも木の葉と砂としてよろしく」

我愛羅は目を閉じて開くと、穏やかに頷いた。差し出された手。風影の握手を俺なんかに。と渋っていたらゆっくりとした動作で見た目の割りに体温の高い指先が触れた。…大丈夫、お前は先代を超える風影になる。体温の高い手をがっしりと掴んだ。中忍試験、終了だ。


「奈良シモク」
「はい」
「中忍試験は無事終了した。次はお前だなぁ?」
「…えっと…はい。」

にやにやと楽しそうな五代目。また一段と笑みが濃くなっている。

「実はな、第三次試験は免除になったんだ。各班の詳細はレポートで送られ、各影が判断して中忍昇進を決める。」
「そうなんですか」
「丁度良いと思わないか?」
「…は?」
「三次試験を免除されたんだ。体力有り余って帰ってくるだろう。お前の対戦相手はあたしが決めさせて貰ったが、チームワークを伴った演習も必要だ」
「……あの」
「ということで、追加して。中忍試験を突破した新しい中忍達とも闘って貰おうと思う!面白いだろう!」
「五代目様!俺の身体が持ちません!」
「なにを甘ったれたことを言っている!帰還屋、奈良シモク!」

ダン!片手を机上に叩きつけて立ち上がった五代目の顔は、悪どい。…実に、楽しそうでいらっしゃる。

「2日に分ける。1日目は個人戦、2日目はチーム戦だ。チームはこちらで決めさせて貰う。」
「…俺1人に、大掛かり過ぎではありませんか。それに中忍達は砂から木の葉へ戻るだけでも疲れると思います」
「それしきの事では中忍にはなれんぞ。それにお前はあたしの暗部の重鎮。なくてはならない存在だ」
「…!」
「それに、お前との手合わせは良い教訓になることだろう。」

…今回中忍試験の主な受験者は、いのにチョウジ、春野サクラ。日向ヒナタに犬塚キバ、油女シノ。ネジにテンテン、ロック・リー。シカマル要する猪と蝶。武闘派のガイ班。探知型の紅班。五代目の弟子、春野サクラ。その全てがシャッフルされるかどうかは分からないが、ただ単に申し訳ない。俺なんかのリハビリの為に。というか、面識ない子達多い…。油女さんは暗部繋がりで知っているが。

「シモク、本気でやれ。でないと演習にならん。お前は根っこから優しい奴だから、手を抜かないか心配だ」
「………正直、難しいです。俺はシカマルのように影と頭脳での戦闘を専門にしません。殺傷能力の高い武器も有します。」

奈良家の能力が薄いことは昔から分かっている。分かっているからこそ。それを使って堂々と戦闘できるかと言ったらできない。だから俺は体術と武器を使った戦闘が主だ。影は捕縛か、敵の不意をつくためだけに用いる。…奈良家の能力をフルに活用するシカマルに比べたら、天と地の差だ。

「…でも、頑張ります」

皆が協力してくれるなら、それ相応に応える。それが感謝の表れだ。五代目はまだ腑に落ちないといった表情だが頷いた。俺のチームって、誰なんだろう。




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