54.海の中に沈むおはなし

「…つ、」
「疲れたとか言うなよ。これからこっちも準備じゃん」
「そうだったじゃん」
「パクんな」

この…ハードさ!これが砂隠れ…どこの里も同じか…!!!五代目の鬼かと思う程の書類審査等を上忍4人がかりで終わらせた…。あの手伝ってくれた同胞は生きているのか…いや、生きているだろうな、家族に会うって言ってたもんな。

「我愛羅、優しいくらいだぜあんたに」
「…カンクロウ君って苦労してるんだぁ…」
「その目やめろ」

砂も木の葉も関係なく上忍はこき使われる運命か…。

「それにしても、何故急に風影は…」
「我愛羅って呼んでやれ」
「…我愛羅は中忍試験を急遽、砂隠れで行うって言ったんだ?」
「砂隠れと木の葉隠れの協力の元、今回の中忍試験は行われる。第二次試験場所が砂隠れでも何ら問題はないじゃん?」
「そうなんだが…急過ぎて。火影も困惑していた。俺はニ里を繋ぐ連絡役だ。なにかあれば俺が伝えるが…」
「日向新、せっかく来たんだ。仕事がてら、砂隠れを探索してこい。何なら我愛羅が案内すると言ってたぜ」
「恐れ多過ぎるだろ!なんのプレイだ!その話は置いといてだな…!」
「我愛羅ー。」
「うわああ!カンクロウ君んん」

俺が砂の上役達に刺されたらカンクロウ君のせいにしてやるわ。風影に観光案内?冗談が過ぎるだろ…!


「よし」
「よしって、全然よしじゃないから」
「大丈夫ですよ、肋骨はもうくっ付いてます。なんなら看護婦さんに聞いてみて下さい」

驚異的な回復力でベッドから起き上がり、暗部の制服を装備したシモク。急ぎたがる理由は、明白だ。

「…うちはイタチを追いかけたいんだね?…君はうちはイタチに肩入れし過ぎだ。冷静な判断もまともにつかず、あまつさえ攻撃できないと、君が言ったんだ」
「確かに俺はイタチに肩入れし過ぎかもしれません。分かってます。…でも、俺はイタチを木の葉に連れて帰りたい。誰がなんと言おうと。」

シモクの目は、やはり素直に真っ直ぐ。テンゾウを貫く。

「だって、イタチは俺の友ですから」

いつだって、きっと。

「…向こうは、そう思っていると思うかい?もしかしたら、君のことを敵と見ているかもしれない。」
「そんなの…イタチにしかわかりません。」

確かに。イタチはあの夜。友でいる資格がないと言った。

「それでも…俺が友でいたいと、イタチに言ったんです。」
『シモク、お前は――』

あの時、なにかを言いかけたイタチ。その顔に隠された意味を、…俺は信じている。

「イタチを信じたい」

なによりも、誰よりも、優しい男。一緒に任務する期間は確かに短かったかもしれない。でも。

『うおおおおお!?な、なんっ!』
『く、ふははっ…!』
『ひ、ひど…酷いだろ!蛇仕掛けてくるなんて!』
『いつもの訳の分からない悪戯のお返しだ』『爬虫類近づけんなって言ってるだろー!』

過ごした期間は、嘘ではないから。

「シモク、僕はナグラさん。それにカカシ先輩から君を託されたんだ。」
「カカシ先輩?」
「かつて君と親しかった暗部の者達は、君がうちはイタチに拘る事を、よしとしていない」
「…イタチは抜け忍で、暁だからですか?」

その顔が肯定を告げている。分かっている。前に、イタチのことを話した時、新とオクラの反応も似通ったものだった。うちはイタチは、里の抜け忍で暁で、敵で。

「君には今後一切、暁に関わる任務からは外れてもらう」
「!!待ってください!」
「散々周りに迷惑をかけて、君の弟や僕だけでなく火影まで振り回したんだ。そのくらいの命令は聞けるね。…ナグラさんだって、そうしたよ」

それを言われたら、反論することは欠片もできない。火影様に至っては、イヅルの事で寛大な処置を取って下さったことに、心底感謝するべきなのだ。シカマルにも、新にもカカシ先輩にも、そしてテンゾウさんにも。かなりの迷惑をかけたのは分かってる。分かっているけど…!くそ…!

「…わ、かり…ました」



「ああああネジいい!よく来たね!よく来たね!?砂漠の道は走り辛かったろ!?」
「見ないと思ったら…!なんでここにいるんだ!」
「木の葉と砂の連絡役だからだ!」

会いたいと、何百唱えただろう。ネジがついに…砂隠れに…!

「時間前までに到着できたんだな。リー君もテンテンちゃんも」
「はい!貴方はネジのお兄さんですね!?」
「あ、従兄弟な」
「よかったー、漸く着いたー!」

くったくたな様子のテンテンちゃん。リー君とネジは元気そうだ。俺も走ってきたからわかるけど確かに砂隠れは遠いな…。ネジ達は時間制限をかけられているから更に疲れただろうな。

「砂の試験管の指示に従って、俺はこのまま他の受験者を待つから…ネジ?なに?」

じーっと俺の顔を見つめるから何事かと思った。というか、そんな見られると恥ずかしいんだけど。俺シャイだから!

「寝不足だな、受験生より疲れてどうするんだ」
「あ、はは…面目ない」

全く、と肩を竦められた。ネジのツンデレってことでいい?いいよね。その反応ごちそうさまです。

「それじゃあ後で!」
「あぁ」
「ちゃんと休むんだぞー!」

…我愛羅は第二次試験の監督官。わざわざ風影がするまでもないだろうに。カンクロウに聞いても、いいようにはぐらかされた。…もしかして、別の思惑が動いてるのではないだろうな?今回の合同試験は、岩隠れと霧隠れ、雲隠れ以外の里から集まった受験者達だ。砂とは木の葉崩しの一件から和解したとはいえ…他里をそう簡単に信用も出来ない。俺だって木の葉の忍だ。そもそも今回の中忍試験再開は、他里の様子を探る目的も含まれていた。しかも、二次試験の会場は魔の砂漠という場所を使う、だから木の葉の試験官は不要と砂隠れ側が提示してきた。担当上忍が同行してるとはいえ…。俺が連絡役としてここに派遣された。

「…あー、駄目だ。俺はシモクみたいに状況把握出来ないからなぁ!」

シモクなら、どうする?いや。あいつ要領悪かったよな。でも…あいつが中忍試験にいたら…いくら要領悪くても、あの頭脳でなにかしてくれたかな。…あいつが…暗部に引き抜かれなきゃ。

「ふっふっふ…下位30名は足切り、忍の脚でも3日はかかるこの砂漠を………ほんっとうに!ネジは!頑張ったなあ!俺誇らしい!」




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