03.想い出はもう散りました

「どうしたんだシカマル」
「!!……新さん」

相変わらずいい天気で眠くなりそうな気候の中。ぼちぼち生えてる木々の下で小さな背中が小さく揺れていた。あの背中の服についてる紋様と一つにくくられた髪型。一瞬肩がびくりと上がって飛び上がった背中は一気に目線が合される。やはり、シモクの最愛の弟シカマルだ。

「やっぱシカマルか。どうしたんだ?こんなとこで一人」
「……兄貴が…」
「シモク?」

シカマルは空を見上げながら呟くように言った。

「兄貴が、帰ってこないんだ」

…と。シモクが帰ってこない。それは新も知っていた。あの火影の件から4日。シモクは帰っていないのだという。シカクさんに聞いても『あいつは暫く任務に出ている』と言われるばかりだ。どうやらシカマルも同じことを聞いたようだ。

「兄貴、いつもおれが帰ると家に必ず居て、鬱陶しいくらい絡んでくるけど、でも
…いきなりいなくなられると…困るっていうか…」

なんだ。シカマルにも可愛いところがあるじゃあないか。ネジには及ばないが。そう付け足して新はシカマルの隣に座った。いい感じの芝生だ。にやけた顔をそのままに、シカマルに問うた。

「そーいやシモクのやついつもここで昼寝してたな。…そういうことか?シカマル」
「べ…別に…ただいつもここに兄貴がいたから寝れなかっただけで、むしろいなくなってくれたお陰でおれがここで寝れるし…」

ツンデレか。ツンデレなのか。

「…任務ってなんだろうな」
「…知らねーですよ」
「……なぁ、シモクって頭良いの?」
「悪くはない」
「あ。そうなの」

……………で、結局頭良いの、悪いの?普通なの?

「早く帰ってくるといいな」
「……」

シカマルは何も言いはしなかった。帰ってきた暁には暫く会えていなかったシカマルに引っ付いて補給しだすだろうし。確かに鬱陶しい事になるかもしれない。だが、シカマルはたっぷり間を置いてから本当に小さく頷いた。腐っても兄弟。腐ってなくても兄弟だ。突然鬱陶しい兄貴が目の前からいなくなったんだ。寂しくないはずはないのだ。なんだかんだ、シカマルは兄貴を慕っているんだから。



「ただいまーネージィ」
「うわ」
「開口一番うわ、ってなにネジ君もうクソ可愛いな」

可愛さ半分格好良さ半分。将来かなりの有望株であるこの少年は日向ネジ。新の一族の一人である。詳しくいえば従兄弟だ。

「腹減ったよー」
「引っ付くな鬱陶しいから」

あー。艶のあるキューティクルがものすごいネジの黒髪が翻った。どうやら抱着こうとしたら避けられたようだ。それだけなら傷つくが、…まぁいい。問題は避けたことだ。少し前までは簡単に捕らえることができたのだが。新とて忍。ネジ相手だとどうも血走って本気で捕獲してしまうのだが、躱された。それは、ネジの忍に対しての技術が上がっている証拠であった。日向の人間だ。これは普通のことかもしれない。新も身に覚えがある。

「……」

いきなり黙り込んだ新を不審に思ったのかネジの日向家独特の眼で覗き込んできた。先祖代々忍一族の日向家。無論ネジも。宗家であるヒナタ様も後にやはり忍になる。それは…やはり避けて通れないことなのだろうか。

「……どうした?」
「いいや…なんでもない!おらっ隙あり!!」
「なっ、しまった!!」

まだ、完全に避けきれていない今に安堵した。いつか完璧に避けられた時、きっとネジは忍の道に進んでいることだろう。

「あーあ、俺もネジと同期だったらなー」
「更に鬱陶しくなりそうだな」

ネジの腕を(少し無理やり)引っ張って居間に向かった。ネジはそんな新の手を振り払うことはない。やはり、忍の道に進ませたくはない。そう思うのは罪ですか。




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