25.君だけがいける場所

「"暁"…知っているかい」
「いえ…」
「暁は抜け忍達が集まるS級犯罪者の集団だ、あの大蛇丸も所属していたという。」
「その暁が…なにか?」
「最近妙な動きをしていてね、里でも密かに警戒態勢が敷かれてるんだ」

シモクはあれ以来この猫面…テンゾウの指示の元暗部で活動していた。ナグラの事を完全に振り切ったわけではないが、働かなければならない身。テンゾウもそれをわかって"上からの要請"なんて都合つけて陽が当たる商店街へシモクを出そうとしているのだから、なんだかんだ優しく。それを露ほども知らぬシモクは正に親の心子知らず状態である。

「今回の君の任務は里内の巡察及び不審な者が居たら速やかに声をかけること」
「…何気にリスク高くないですか」
「ほら、早く行った行った」

手をひらひらさせてテンゾウは有無を言わさずあの例の怖い顔で送り出した。シモクは心の底から妙な恐怖を感じ。

「いってきます!!!」
「やれやれ。」

猛ダッシュで壁を駆け上がっていったのだった。見送ったテンゾウは頭をかきながら自嘲したようにため息を吐いた。先輩のナグラに、あいつを頼んだ、なんてあんなに念を押されたんだ。どんな子かと思ったら…あの奈良のご子息…。それに、戦地でも死地でもどんな場所に身を置こうと必ず帰還するその絶対的な生命力。折れない不屈の闘士。正に暗部にうってつけだったわけだが…初めて、あの墓場で見た青年はまだ若く。その背中には数え切れない重荷を背負っており。とてもじゃないが見続けることは出来なかった。いざ対面すればその頑な瞳には消しても消えぬ闘士が灯り。ナグラは本当に、育て甲斐があったことだろう…。志半ばで…残念過ぎる…彼の成長をまだ見守っていたかっただろうに…。



暗部の待機所を抜けたシモクは仕方なしにその近辺をウロウロし始めた。町中での面は住民達を威圧してしまうのでその面は今は懐に入れられている。

「不審な者って言ってもなぁ…」

不審って、一体どこからが不審?むしろ俺の方が不審なんじゃ?なんて思考を巡らせながらたった一人で巡察の任を任された。テンゾウは怖いが余計な無駄を出さない理論的現実主義者だ。人情家のカカシとは正反対だ。ツーマンセルを組む相手がコロコロ変わるので暗部にも色んな奴がいるんだなとは感じていたが。

「…そういえば…ずっと家に帰ってないけど…皆元気かな…」

最前線で暗部が全滅したことは里内でちらほら広まっているらしいからもしかしたら自分も死んだと思われているかもしれない。いや、それはないか。自分が無様に生き残ったことも、広まってるんだから。

「――ッ!!!!!」

ざわり。忍の直感が告げた。もしかして本当に言っていた通り…。サッと懐から取り出した面をつける。この感覚なら木ノ葉の川辺だ。この微かな気配では瞬身の術を使うわけにもいかずにただ全力で駆けるしかなかった。里の中心部から少し離れた場所でシモクの足は止まった。侵入者だ。深く笠を被り、紅い雲の模様が入ったマントで体を覆っている。背に大きな刀を持った大柄なのが一人、小柄なのが一人、計2人。

「貴方は木ノ葉の暗部のようですねぇ?」
「…嗅つけたのはついさっきだが…お前たち、一体いつから侵入していた」
「先程まではそこの茶屋で一服していましたが」

大柄の男が口を開く。まさか。そんな。最悪だ。誰一人として侵入者に気づかなかったとでも言うのか…?それとも三代目の死去で混乱した里内の結界が歪んでいるとでもいうのか…?どちらにせよ、自分がやることは一つ。クナイを構えて印を結ぶ。

「影縛りの術!」
「!!」

小柄な方が一番に反応し、すぐに飛び退いた。

「…まさか…その術に、その面…」

足場の悪い水中の上。足に回しているチャクラ量は微々たるものだがそんなに大量のチャクラを有していないシモクには水辺上での戦闘が一番苦手であった。ともかく、こいつらを逃してはならない。一対二ではかなり分が悪いが、そんなこと言ってもいられない。

「疼きますねぇ」

刀を持っているということが更に相性が悪い。

「なっ!!」

大柄な男に向かっていたのだが先程から執拗に小柄な男が割って入る。

「鬼鮫、退いてくれ」
「…仕方ない、わかりましたよ」
「…お前、なんのつもっ…!!」

なんのつもりだ。そう言おうとしたのだが言葉が出なかった。油断していたわけではない。目の前の男が、早すぎるのだ。バキッと顔面に亀裂が走り、鹿の面は真っ二つに割れた。その行動はまるで面の下の顔を確認するかのようで。

「やはりか…まだ暗部に所属していたとは…酔狂なことだ」
「お、前…嘘、だろ…」
「お知り合いですか?――――イタチさん」
「…う…ちは…イタ、チ……?」

イタチなんて名前、一人しか知らない。

「久し振りだな………シモク」

――目の前の男の口角がゆっくり上がった。




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