21.俄か雨とキャンドルナイト

一ヶ月後、中忍試験本選が始まった。各国の忍頭や観衆が見守る中での開始であった。報告に上がっていたナルトの九尾の力を懸念していたがなんとか抑えたようで。ナルトは対戦相手日向ネジに勝利した。こちらも懸念していた一尾の人柱力の我愛羅、そしてうちはサスケの対戦の最中であった。シモクは火影直属の任で暫し会場警備をしていたのだが先輩暗部のナグラに至急応援を要請されたのだ。シモクが会場を離れた途端の事だった。

「あ、あれは…!!!」
「シモクよく聞け!!あの会場には幻術が掛かっている!!先刻、取り逃がした大蛇丸に
よる大規模な敵襲とみなしていい!!四代目風影様に化けていたのだ!!この一件には
同盟国である砂隠れも関与している!」
「で、では…これは懸念していた…」
「…木ノ葉崩しだ」
「木ノ葉…崩し…」
「三代目様が大蛇丸と交戦中だ。無闇に手を出せぬ、俺達の任務は木ノ葉に侵入してきた
砂忍共を退却させることだ!無益な戦いは望まない。…やもう得ない場合のみ殺せ」

自分のこの冷静な頭の思考回路にすこし自嘲した。ナグラは長い両手両足を活かし、どんどん先を進んでいく。シカマル…新。突如頭に過ぎった2人の顔。会場にいたはずだ。大丈夫なのか、無事なのか…?あの爆発で、生きてるか?

「…シモク!!任務に私情は挟むな!」
「す、すみません!!」

そうだ。これは任務、一刻も早い鎮圧が必要なのだ。シモクは一度迷いに迷った目を瞑った。次にその黒い瞳が開かれた時には、もうそれは暗殺者、暗部の瞳であった。

…事態は、収集できるものではなかった。

「シモク!!起きたか!!大丈夫か?」
「新…?一体…」

同じくボロボロになった新が自分の手が血に塗れる事も躊躇わず俺の手を握った。俺は、砂忍達と交戦して…

「ナグラさん……新!!ナグラさんは!!」
「…木ノ葉は今、状況の判断もまだ明確につかない状態なんだ。…悪い、その人の安否なんだが……」

安易なベッドに寝かされていた俺は新の言葉に弾かれたように飛び起きる。どうやら、自分が怪我で気絶している内に決着はついたようだ。くそ、情けない…。医療班がちらほら見えるということはここは治療場として設けられたのだろう。腹から血が滲み出る。暗部の制服の俺がウロウロしているのが気になるのか解らないがチラチラと視線を感じる。

「すみません!ここに…鳥の面の暗部は運び込まれましたか!?」
「貴方!!そんな傷で動いては…っ」
「お願いします!教えてください!」
「…お名前は」
「ナグラです!」

医療忍者は分厚い紙をぺらぺら捲ると、非常に言い辛そうに口を開いた。

「…貴方をここまで運んできたのは彼です…その、貴方を私達に預けた後、すぐに前線に戻っていかれたのですが………先程、暗部達の遺体を回収しました」
「え…」

「暗部小隊、合わせて27名…貴方以外、全滅したとのことです…」

…木ノ葉崩しが残した爪跡はあまりにも深すぎて。各々のキャパシティを超えてしまう程のもので皆が途方にくれていたのだ。中忍試験の妨害阻止は、形としては敵を退却させるのに成功。大蛇丸との交戦により…三代目火影…猿飛ヒルゼンの死去。風影が暗殺されていた事実を得るのはそう時間は掛からず、結果五大国の影2人を失ってしまった双片の里は甚大な被害を被った。裏切りと思われていた砂も、大蛇丸に利用されていたというこの、やる瀬ない事実。それに、あの我愛羅の一尾の暴走をナルトが止めたというのだから。正直、もうどこからどう手を付けていいのかわからない。新を含む上忍達は中忍と共に里の復興作業を続けており、シモク達暗部も里の復興に尽力。
ただ、泣けようにも泣けない状態でシモクはただ無心に瓦礫撤去の作業を繰り返していた。シモクの所属していたナグラ小隊は全滅。20名以上の犠牲を払った火影直属の暗部達の功績は称えられない。未だに傷が疼くが、こうでもしないと自分の思考がダメになってしまうような気がした。自分は、いつもこうだ。

「…ちくしょう」

自覚がなかったわけではない。ナグラはいつでも自分の側で見守ってくれていた。あんなぶっきらぼうな言い方してても、威圧的な態度だったとしても。あの人はいつだって、この暗がりの暗部の道をひたすら踏み外さないように先導してくれていたではないか。栗色の逆立った髪、ナグラさんの素顔は見たことがない。あの人は面を取らないから、隙をみせたりしない人だったから。

「っっ…なんでッ」

最期の時まで、ナグラさんの背中を追いかけていたかったのに。自分をわざわざ医療班の元に連れてきて、前線に戻っていった?なんだよそれ。暗部の掟は倒れた者は見捨てるのが鉄則だ。怪我人にかまけている暇はないのだから…なのに、なのに…貴方だって私情、挟んでるではないですか……嗚呼、引きちぎられるように痛い。




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