14.暗闇を孕む

「ああああああああああネジぃぃぃいいいい」
「煩いから、ねぇ、本当に煩いからね?」

一次試験通過した者の中にネジを発見し絶叫ともいえる声で叫んだのは言わずもがな新である。

「信じてたああああ信じてたよネジぃぃいいい」
「そーね、そーだよね。落ち着きなってまだ一次通過だから」

信じていた。そう、鬱陶しいほど信じていた。ネジと少しばかり目が合い、珍しく動揺した新にネジは呆れ半分の顔で少し笑っていた。よほど新が目立っていたのだろう。恥ずかしさがとうの昔に超えてしまったネジもネジだが。良い歳してこうも落ち着きのない新も新だ。

「二次試験は別名死の森での巻物争奪戦か」
「相変わらずエグイっすよねアンコさん。わざわざ今年も第44演習場」
「毎年恒例だからね」
「…アンコさん。少し妥協してくれないかな」
「無理でしょ」

がっくりと肩を落とした新は、とぼとぼとカカシと共に演習場にこっそり向かった。もう受験生達はスリーマンセルで各々のゲートをくぐり抜けているらしい。確か"天の書"か"地の書"を相手のチームから奪うこと。ネジ達のチームなら賢い者達が多いし、案外さくっとクリアしてしまいそう。悶々考えながら待機所に座って深い森の奥を凝視する。時折爆発音なんかも聞こえるので戦闘は始まっているようだ。

「ネジ…頑張れ!頑張れ頑張れ!」
「…」

カカシは隣で両手を組み、その手を天に向けている新を横目で見つめた。出会いは最悪であった。あのとき少しスレていたカカシは新入りのシモクとツーマンセルを組むことになり、意外にも暗部のなかでカカシとシモクは結構馴れ合っている方だった。街に出たときも召集がかかったのでシモクを呼びに行った後で。いきなりの召集に苛立っていたのも事実。というより睡眠時間が計2時間。寝ていないのだからあのときの態度は勘弁してほしい。睡眠不足とストレスも溜まっていた頃に生意気な白眼少年が現れて半ば八つ当たりしてしまったのだ。それは認める。大人だからね。

「うぉぉぉぉ…ネジぃ」
「…」

はぁ、と溜め息をつく。あの最悪な出会いの後、シモクから彼はアカデミーの頃からの戦友兼親友であると聞かされた。…そう。少し違うが二人はカカシとオビトのような関係なのだ。お互いを意識し力を競い、高め合っていく存在なのだ。自分の隣にもうそんな存在はいない。だから暗部の冷え切る前の心でシモクに伝えたのは「忍の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる、けれど仲間を見捨てる奴はそれ以上のクズだ」。…かつての親友、うちはオビトがカカシに放った言葉だ。その言葉は、今もなおカカシのなかに生き続けている。

「新じゃねーか。なにやってんだよこんなとこで。あ。カカシさん!ちっす」
「オクラじゃねーか。」
「ん。警備の上忍ってお前だったの」
「ええ。俺も上忍ですからね!!受験生を守るのは当然のこと!!」

相変わらず、暑苦しい男だ。オクラの男らしい笑顔の眩しいこと眩しいこと。そうか。とオクラは手をぽんと叩いてまた白い歯を見せた

「制限時間は120分だ。部外者は立入禁止だからここで大人しく待っててくれ」
「わかってるよ。だからカカシさんと待ってるんじゃないか」。
「そろそろ塔に到達するチームが出てもいい頃だな」

地べたに座り込んでぼーぅとしていると音も無く現れたのは、

「カカシ先輩!!!」
「え、シモクか!!?」

鹿の面をつけた、シモクであった。

「おお、シモクか!!暗部姿は初めて見るぞ!肩寒くないのか」
「どうだっていいんだよオクラ。今は緊急事態だ。事が公に露見しないよう極秘として
扱ってください。…第44演習場にて抜け忍・大蛇丸を確認。逃亡。現在みたらしアンコが追跡中。」
「なっ…!!?大蛇丸だと!?」
「俺から単独で知らせに参りました。」
「…わかった。ありがとうシモク」
「はい。もう少しで第二次試験も終わる。じゃあ後で!新、オクラ、先輩!」

シモクも大蛇丸を追うのだろうか。そうなればシカマルとの約束が…!!!

「待てシモク!!お前は大蛇丸を追うのか!!?」
「それは俺が決められることじゃない。状況が掴め次第、暗部も動くつもり」
「…っ」
「今は受験生に余計な不安を与えず試験を終了させることが優先だ」

シモクは相場のない声で言うと瞬身で姿を消した。あれが…あの対応が暗部…。

「シモクのやつ。俺達、第4班の久し振りの再会だったというのに!」

オクラが腕を組みながらプンスカと鼻息を荒くする。どうしようもなく友情にも熱い男なのだ。

「大蛇丸…里の抜け忍で確か悪質な研究を重ねていた…」
「よく知ってるじゃない。新」
「カカシさん程じゃないんですけどね」

嫌な予感だ。




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