121.静かに繰り返される失敗

「火ノ寺…ですか?確か仙術を操る忍寺でしたよね」
「そうだ。お前もそろそろ暇を持て余しているんじゃないかと思ってな。里外の中期間任務だ。」
「お引き受けします!」
「なんだ、やけにやる気だな」
「あ、えっと、久々の任務で…」

火の国に火ノ寺ありと謳われる忍寺。神なんて信じてはいないけど、木の葉の外に出られるのだ。里外に展開している暁と接触できる好機。イタチの手がかりを掴める足がけになるかもしれない。ダンゾウ様の写輪眼奪取作戦は延期になるが。

「任務の内容は護衛任務だ」
「要人がいらっしゃるんですか?」
「火ノ寺に大名派閥の息子が武者修行をしに数日滞在される。忍寺には元守護忍十二支の地陸がいるが念の為だ」
「なるほど。警護任務は得意です」
「お前の調べ物は滞る事になるがな」
「丁度詰まってしまってましたから、いい機会です」

火の国圏内とはいえ大名派閥の子息か。手元に上がってきた資料に視線を落とす。齢18歳。その歳で武者修行に興味を持つとは。大名らしくないな。

「急で悪いが明日旅立ってもらうぞ」
「はい。準備します」

忍寺辺りなら俺も護衛がてら良い修行ができそうだな。

「大名の子息直々の指名だ。頼むぞ」
「御意。」



「ネージは賢く優秀で〜つやつやお髪のキューティクル〜」
「その歌やめろ」
「ずるいじゃないか。俺が行きたいって言ってるのに新しい人間を編成して早々に行っちまうなんて」
「そんな状態で行かせられる訳がないだろう」
「カカシさんと同じこと言ってる。」
「それ以外なにを言う」
「薬師カブトに一発クレーム入れたかったんだがな。……仕方ないか」

シモクの上司のテンゾウさん、もといヤマトさんがカカシさんの代行。そして暗部「根」から新人が一人選出されたそうだ。全く信用出来ない。できるはずもない。お上はなにを考えているのか。理解出来ない。

「今朝シモクが挨拶にきた。立場逆転だな。今度は俺が病院滞在だ」
「どこかへ任務か?」
「火ノ寺に護衛任務だそうだ。」
「あの忍寺か。」

……正直、あまり良くないのだそうだ。カカシさんが言っていた。暁の活動が活発化している中で、人柱力を探す様子が伺えたと。デイダラとサソリは「ノルマ」と言っていた。暁の他のメンバーが同じように「ノルマ」を持っているとしたなら、尾獣が居そうな場所を虱潰しに探している。火ノ寺はまさに標的にされそうで。今回は大名子息の護衛だが、暁が来襲したらどうする?本当にお偉い方は現場を分かってない。シモクは暗部の重鎮だ。任務停止を受けたとはいえ、その能力は護衛に売ってつけであり、同じように護衛任務を得意とするテンゾウさんは天地橋任務に出てしまっている。火の国の手前、木の葉側としては最良の忍を提供しなければならない。その最良の忍がシモクだったのだ。

「最近さぁ、あいつ色気出てきたよね」
「……は?」
「なんてーか、こう…分かんない?」
「話をした事もないからな」
「んー、男から見ても魅力的?あ、ネジは別枠だよ?勿論」
「いらん」
「…と、カカシさんは仰ってました」

カカシさん、一体シモクのなにを見てるんだ。俺も少し苦笑いした。



「初めまして。護衛を務めさせて頂く奈良シモクと申します。貴方の命を最優先に尽くします」
「初めまして、シモクさん。」

膝をついた状態で頭を深く下げた。あの大名の子息とはとても思えないくらい穏やかで爽やかな青年だった。こんな要人初めてだった。シカマルと2つしか変わらないのか。この御方。

「何故俺を知っていたのですか?暗部の詳細は火影のみ持ち得る情報です」
「あなたの場合それだけに収まらなかった。木の葉の帰還屋なんて、今じゃ有名ですよ」
「…貴殿は特別忍に興味を持たれているようで」
「んー、あなたに興味があっただけなんですけどね」
「…………はい?」
「シモクさんを知って、忍に興味を持ったんです」




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