114.穏やかな毒に侵されて
「……いつまで、燻ってる…立てサクラ。解毒薬なしで立てないのなら、それを自分に注射でもなんでもして立ち上がれ」
大蛇丸の事を、こいつから聞き出すんだろ。倒れている場合じゃない、俺もお前も。
「すぐに……っ、すぐに助けますから!」
「頼もしい女。もしまだ残ってたらババアに渡しとけ」
俺って痛覚でも死んでるのかな。立てなくもない。おかしいな、変な俺。
「三代目の傀儡……叩くぞ」
「はい!」
サクラの怪力パンチが三代目傀儡にヒットした。砕ける傀儡に、やっと反撃が成功した。
「サクラ…お前」
「解毒薬です…あと一つだけ、これはチヨバア様に渡しておきます」
「いつの間に……童は打ったのか?」
「……新さんは、自力で立ってるんです、早くしないと危ない、」
あっべ、フラフラする。
「……どうして動ける。」
「あ?なんか言ったか?」
耳の聞こえが悪くなる。毒は食らったが、白眼の回復はできた。俺にはこれしか頼れるものがないんだ。しっかり回復させてもらった。
「お前、本当は傀儡なんじゃねえのか」
「ははっ!天才傀儡師にそう言われるのは光栄だぜ、嬉しくねーけど」
「あれは俺の作った毒だぜ。解毒薬の調合は毛ほどのミスも許されねぇ。」
「…こっちにも医療の天才がいるんだ。」
3分間しか持たない解毒薬だ。サクラは一時的に回復した。
「…お前だけはそれを打っていないな。痛覚が死んでるのか、それともただの痩せ我慢か?」
「…はっ。痩せ我慢とか、バレたら速攻かっこわりー。」
「…ふん、認めてやろう。……暁に入った時のいざこざ以来だな。いつだったかな……」
知ってたさ。その身体。
「あやつはワシの手元を離れた時から歳をとっておらぬ…昔のままじゃ…その理由がアレじゃ」
「本当に久方ぶりだ……"自分を使う"のはな」
「人傀儡…自分を」
「また厄介なカラクリを仕込みやがって……」
だが、そんな形状をしているなんてな。人の内臓すら取り除いた、異型だった。マントを取れば奴の無感情がさらに際立った気がした。手のひらから突起が伸びた瞬間、それから火が吹いた。この火力……並じゃない。火遁か!
「どうした。来ないのか?」
毒が回ったか、これ以上立っていられることはできなかった。
「しゃーんなろおおお!」
すっげ、俺なんか最早回天でババアを守る事ぐらいしかできない。サクラは凄い。俺も、もっと高みを目指すべきだな。
「すげー…俺の代わりに殴ってくれてありがとー」
「はは…やりました!」
「!サクラ!まだだ!!!!」
まだ終わりじゃねえ!!毒の染み出たカラクリがサクラの背中を貫く前に、咄嗟だった。……まじかよ俺。ネジ以外を庇うなんて。いや……分かってたからか。
俺、本当にもう、ここまでなんだ。
「……新……さん……っ!!!?」
…申し訳ありません…ヒザシ様……貴方の大切なご子息を、最後まで見守る事、できないようです。