113.君が守る一瞬を抱きしめさせて

「その、手…」
「傀儡師同士、考える事は同じらしい」

ババア…あの手は、義手!それもカラクリを仕込んだ。さすが老いても砂の忍。自分の欠けた腕に仕込みをするなんて…!

「そうか……そういうことか」

チヨバアの言葉に、俺もやっと納得した。サソリの体は三代目風影の人傀儡と大差ない。

「…成程。お前が歳を取らないのも頷ける」
「白眼か。」
「白眼は生き物の持つ生命エネルギーたるチャクラの流れが見える目だ。…お前の身体、生身じゃないな」

がきょ。ババアの義手には砂鉄が入り込み、俺とサクラを守ったばかりに「母」の傀儡にも砂鉄で動けない。

「砂鉄が入り込んだらもう終わりだ。傀儡も尽きた。どうする?天下の傀儡使いも傀儡がなけりゃただの人か。」

砂鉄が巨大な形を成す。…潰されたら一溜りもないな。

「ワシとあろう者が…さて、この状況どうしたものか…サクラ…とにかくお前は逃げろ」
「あれ、俺を除外してくれたんですね」

やっと俺を戦力として見たか。といっても、俺の柔拳はネジのような完璧さはないが。どうしても俺。お宅のお孫さんをぶん殴らないと気が済まないんだ。

「チヨバア様、私を使って下さい!」
「……ワシは今片腕じゃ…さっきまでのサポートは出来んぞ」
「大丈夫です!確かに私は傀儡みたいに立派な武器は仕込んでありませんが、師匠譲りの負けん気が、嫌というほど仕込んでありますから!」

は、負けん気ね。さすが、あのカカシさんの生徒であり火影の弟子でもある。すごい、女の子と思って甘く見てたけど

「三代目の能力は磁力じゃ!よって鉄や鋼でできた武器は効かん!」
「上等!素手で戦うのも師匠譲りです!」
「こっちも上等!日向を舐めんなよ!」

ピタリ、いや、あれっ頼んではいないけど。俺の体にもババアの糸がくっついた。あ、俺も使うって事か。

「またそれか…くだらない」

俺とサクラの体が動き出したと同時に砂鉄の塊が猛スピードで迫る。ここからは、ババアが操る世界だ。勝手に動く四肢に苦笑いした。操られるって、こんな感じなんだな。自分の意思とは別に動く。……あいつも…シモクも、こんな感じだったのかな。望まない道を歩く他なかった。それも、自分の気持ちを押し殺して。自分の選んだ道を進んだ俺達を、どう思ってたのかな。

「いっくぞおおおお!」
「八卦空掌!!」

なんだ、砂鉄の塊もこんなものか。サクラのパンチと俺の柔拳が塊をぶっ飛ばす。

「まだまだ!」
「っ!、」

やべえ!!こんな時にっ!ナルト達の前衛を走っている間も白眼を開眼しっぱなしだった。己の力量を間違えるほど俺は馬鹿じゃないが、畜生視界がぼやけやがる。

「新さん!?どうしたんです!?」
「おいおい、勘弁しろよ。コレクションは質なんだ。」

俺の眼は日向の中で未熟だった。それを補おうと遠距離を見渡せるように日々自分なりに策を練り、修行した。もう誰にも馬鹿にされたくなかった。それに何よりも、ネジがいたから。ネジをどんな場所にいても見つけ出して守る。ヒザシさんとの約束だ。俺は約束を違えない。必ず守る。俺がこんなところで、こんなやつに、負けるなんて許されない。俺が許さない。

「砂鉄界法!!」

父親と母親を失い、寂しかったその気持ちは痛いほどわかる。だけどそれが、己の道を踏み外した言い訳にはならない。野郎の人生だ。口出すのは違う、だけど俺とサソリは似ている。

「範囲が広い!新さん!!」
「八卦掌回天!!」

だけど決定的に違う。風影を三度殺したお前なんかとは。俺の両親は里の為に死んだ。里を守る為にだ。

「俺は、こんな黴臭せぇ場所で死ぬつもりはない」

……まぁ、二人仲良くかすり傷で毒を食らった訳だけど。

「だから言ったろ…それだけじゃないってな」
「やはり砂鉄に毒を染み込ませてあったか…!」

こんなことならもっともっと修行しとくんだった。ガイさんのように、もっと高みを目指すべきだった。目の開発に満足して次の成長を止めたのは俺だ。これがサソリの毒か。

「新、さん……解毒薬です…、これで、!」
「……サクラ。それは、自分に打て。…大丈夫…見くびるな」

日向の誇りと、上忍のプライドだ。

「でもっ、!この毒で、…っ…」
「そうだなぁ…あいつ倒したら、また薬でも作ってよ。カンクロウ君助けた時みたいに。」

まだ死ぬなよ俺。まだまだ、未練だらけなんだからよ。




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