112.選びかけた思い

おいおい…あれが…赤砂のサソリ?チヨバアの孫だろ?こんなに若くて計算合うか?合うわけねぇだろ。皺一つない陶器のような肌に薄桃混じりの髪。幼い。幼な過ぎる。奇妙過ぎて堪らない。

「とっておきを見せてやる。殺す時苦労したコレクションだが…それだけに一番気に入っている」
「!!…そ…それは…まさか…」
「…!?何?どうしたんです?」
「それは…三代目風影…」
「クク…さて…やるか」

三代目風影…?なぜ。こいつは元砂の忍…まさか…自分の里の影を手にかけた…ってのか?現風影の我愛羅と合わせて………己の生まれ育った里の影を、守るべき中枢を。こいつは一人で三人も奪ったっていうのか。

「俺は野郎共の喧嘩程どうでもいいもんはないって思ってるし、そっちの三代目風影を知らない。…だけどこれだけは。お前に吐ける唯一の言葉だ。赤砂のサソリ」

…影っていうのは。里の核だ。皆に認められた者こそが里を背負うんだ。…時にはその影の為に、命を散らす者だっている。でも、それが本望だと言う奴もいる。その中でこいつがやったことは、それすらも無にする。里の民から…砂隠れから、大切な核を三度も奪った。

「お前、最悪最低の下種野郎だな」
「木の葉のガキが、随分お熱くしゃしゃり出てくるじゃねぇか」
「アンタ見てると思い出したくもないものを思い出しちまってしょうがないんだ」

元来、俺は人のイザコザに頭を突っ込んでしまうタイプだ。そんなの自覚してる。それで失敗した事だってあるし、その逆もある。

「人の命を何だと思ってんだ、なんて青臭い事は言わねぇ。俺も忍だ。」
「ほぅ…言動と表情が一致してねぇぞ。ガキ」
「新さん…」

今回も、頭突っ込んでいいだろうか。

「だが…売られた喧嘩は買ってやる」
「俺から見りゃお前も充分青臭いがな」

喉を震わせてさも可笑しそうに笑うサソリ。あの這いつくばった傀儡の中にこんなのが入ってたとは正直驚いたが、暁。これ以上好き勝手させてはいけない存在。葬り去らなければならない存在。

「俺は木の葉の忍、日向新だ。」
「日向。木の葉の白眼一族か…ほぅ、いいコレクションになりそうだ。」
「侮るなよ。俺はその一族の中で最弱を誇ってんだ」
「それは自慢にはならないだろうよォ…クク」

バッ!三代目風影の傀儡が飛んでくる。反応が遅れたサクラはチヨバアの傀儡糸で引っ張られる。くっ、次の動作の展開が速い!傀儡だからか、生身の人間とは違い無理な体制を取っても痛みなど感じない。人間には関節が存在し、分かっていても動けない隙が沢山存在する。それを培い、先手を打つのが忍なのだけれども。

「ソォラァ!」
「すげ、傀儡ってそんなこと出来るのな!」

無数の手が飛び出る。傀儡に書かれた文字が術の一つだろう。なるほど、ビックリカラクリ劇場だ。

「お前達息を止めろ!」
「!毒っ」

俺はチヨバアに操られてはいない。飛んできたクナイにはロープがついているのが分かった。チヨバアが走るより俺が、っ

「ってオイ!!!」

爆風!サクラのやつ爆風で毒煙を吹き飛ばした!?なんて肝が座ってやがる。起爆札の威力は強い。そんなの自分ごと使うなんざ……

「アンタは…アンタは私が捕まえる!手足が吹っ飛ぼうが毒を食らって動けなくなろうが必ず捕まえる!」
「サクラ!早く体勢を立て直せ!」
「どんなに抵抗されようとどんな手を使われても!私が半殺しにして大蛇丸の事を吐かせてやる!いいか…っ」
「おい!!伏せろ!」

向こうは聞く気ねえみてぇだ!手を動かした!瞬時にサクラの前に滑り込んだ。向かうクナイを叩き落とす自信はあったのに現れた2体の傀儡が更に俺の前に現れた。

「女が喋っている時は、男は黙って聞いてやるもんじゃ」
「…それ、俺にも言ってますか」
「ああ……それか。」
「そうじゃ…お前が造った最初の傀儡……」

父と、母じゃ。

「いまさらそんなので何しようってんだ。俺の造った傀儡だ。手の内はバレバレだぜくだらねぇ」

傀儡師には同じ傀儡師。己が持つカラクリに対して絶対のプライドを持つ者が多い。サソリはそれが強い。自分の傀儡に絶対の自信を持っている。そしてチヨバアにも、この傀儡を出した時になんらかの意志を感じさせてくれた。

−わしも長く生きている分、後悔なんぞ。それこそ死ぬほどしてきた
−奴の両親は、白い牙に殺された。傀儡に縋るほど…愛が欲しかったんじゃろうて

赤砂のサソリ。お前、なんだろうな。腹が立つ奴だが、親を揃って亡くした時の気持ち。痛いほど分かるんだ。

「久しぶりだろ。この術で三代目風影は最強と謳われたんだからな。グチャグチャだぜ」
「砂隠れで…最も恐れられた武器、砂鉄じゃ。あらゆる形状に砂鉄を変化させ、状況に応じた武器を作り出す…三代目風影は練り込んだチャクラを磁力に変えることが出来る特別な体質だった」
「やっぱりですか、目が悪くなったかと思いましたよ。さっきから見えてまして。傀儡にチャクラが」
「どういうことです…?アレはただの人形でしょ?どうして生身でもない人形にチャクラが…」
「アレはもともと生身の人体から造った人傀儡…そしてそれは生前のチャクラを宿したまま造られる」
「つまり……」
「人傀儡はサソリにしか造れない。そしてそれによって生前のその者の術を扱うことが出来る…それが人傀儡の最大の利点でもあるのじゃ」

……人を傀儡に変えて……それはぶっちゃけ歪んだ夢物語みたいだ。朽ちることのない身体。永遠の生命。……この世にいなくなって欲しくない人をそのままの状態でいさせることができたら。俺はネジが死んだらどうするんだろうか。いや、やめろ。共感するな。

「お前達はここから外へ出ろ!後はワシ一人でやる」
「え!?」
「それはカカシさんの命令無視になっちまいます。出来ません!」
「これは想定外過ぎる。アレが出た以上お前達では無理じゃ!」
「なめんな俺は日向家の人間だ!」
「遅いんだよ…」

!!砂鉄のが雨のように!

「回天!!!!」

鉄壁の守備力を誇る防御だ。……よし、貫通はしてこないようだな。2人も傀儡の盾で防いでる。

「チャクラを宿しながらの高速回転。やはりお前、いい素材だな」
「野郎に褒められても、毛程も嬉しくない」

しかし、さすが磁力というだけはある。傀儡が受ければ……砂鉄で身動きがとれなくなる。

「さて……今度は3人狙って、一斉に攻撃する。確実に仕留めるため…殺傷能力重視の形状にしてな。お前の高速回転でも防ぎきれないはずだ。一つの傀儡じゃ3人いっぺんにはガード出来ないぞ。どうするババア!?」
「日向家なめんなっつってんだろ!回天……っ」

ババア……あんた、その手……




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