109.悲しくなるのは好きじゃない

尾獣とは世界に9匹存在し、各里に1匹づつ納められている。火の国、木の葉隠れにはナルトに封印されし"九尾"。風の国、砂隠れには"一尾の守鶴"。古くから茶釜に封印されていたそうだが今は我愛羅に封印されている。今になって何故暁が尾獣を狙い出したのか…それは分からない。そもそもテロリストの思想など知らん。

「新の兄ちゃん、大丈夫か?」
「私情を挟むべき時じゃないよな。すまない」
「…会いに行くってばよ。絶対。だから、…我愛羅を一緒に助けてくれ!」

…ナルトの事を、九尾の子供だと思わなかった時がないわけじゃない。こちとら九尾には両親殺されてるんだ。恨んでないわけじゃない。次目の前に現れたら殺してやりたい。…でも、ナルトは…。

「大丈夫だってばよ!我愛羅もシカマルの兄ちゃんも助ける!」
「……当たり前だ!!」

なんでこんなに真っ直ぐに前を向けるんだろう。なんでこんなに眩しいんだろう。

「なぜ…お前が…」

おかしい…とは思わない。だけど、こいつがくるなんて思わなかった。それだけパックンが突き止めたアジトは本物なんだと思える。

「…うちはイタチ」

シモクの暗部時代の相棒…だったか。

「こやつが…一族皆殺しのガキかのぅ…」
「久しぶりですね。カカシさん。ナルト君」
「こんにゃろー…俺だけじゃなく我愛羅までっ」

そうか、ナルトも一度イタチに九尾を狙われたと報告されていたな。まさか…ここでご本人様登場とは…さすがに出来過ぎだろ…おい。

「俺がお前ら、ぶっ潰す!!」
「!皆!あいつの眼を直接見るな!危険だ!!」

!なにか仕掛けてくる。その外套だけでなく、指にある指輪だけで暁のメンバーであると再確認する。だってあいつ、イタチを庇うような事ばっか言うから…!俺もイタチは本当は…なんて、思ったこともあった。でも、こいつはやっぱり犯罪者だよ。シモク。お前がこいつを庇うのは大間違いだ。なんでわからない。ナルトの九尾だけでなく、我愛羅の一尾まで…

「イタチの幻術は瞳術。つまりは、視覚で嵌めるタイプだ。目さえ合わせなきゃOKだ。」
「あぁ、わかってるって」
「でもそれじゃあ、どうやって戦えば…?」
「それはな…体や足の動きだけで奴の行動を判断するんだ。」
「それってかなり難しいような…」

…簡単に言ってくれる。

「うちは一族か。写輪眼を相手にするのは久しぶりじゃがのぅ。この瞳術とやり合うにはいくつかの戦術がある。」
「えっ」
「隠居ババァ…」
「どうすりゃいいんだ?」
「一対一なら必ず逃げる。二対一なら後ろを取れじゃ。一対一は必ず逃げろは絶対に勝ち目はないということじゃ。じゃが二対一なら…一人が幻術にかけられてももう一人が奴の後ろをとる。本体を叩けば幻術は解ける。」

…この隠居ババァも簡単に言いやがる。つまりなにか?このうちはイタチの背後をとれと?そう簡単に後ろを取れていたらS級クラスの犯罪者になってない。

「たとえそれが無理でも。仲間をどつけば幻術を解いてやることもできる。つまりこちら側が複数なら一人が陽動。その他は写輪眼の死角になり常に後ろから攻める手だ。」
「なるほど。」
「さすが歳食ってるだけあるってばよ…じゃあ俺が陽動…」
「お待ちください。」
「わしの写輪眼に対する戦術、間違っていたかのぅ?」
「普通の幻術ならば俺もそうしましょう。ですが、うちはイタチはS級犯罪者。並みの幻術使いではない。…こいつの眼は、厄介でしてね。」

カカシさんもやはり同じことを。

「万華鏡写輪眼という、普通の写輪眼よりも強力な瞳術を使います。その瞳術を食らえば、ほんの一瞬で奴の幻術を体感することになります。」

カカシさんが食らったっていう奴。確か串刺しの…。

「それに周りからは一瞬でも術を食らったものは数時間、あるいは数日にも感じられるんです。現に俺は奴の幻術に丸3日間彷徨い、意識を失ってしまいました。」
「…恐ろしい限りですよ。うちはイタチ。」
「さすがカカシさんだ。一度私の月読を食らっているだけはある。」
「わかってるのは、それだけじゃないよ。お前はあの瞳術を使用した後かなり疲労し、戦いを納めてすぐに立ち去ろうとした。あれはかなりのチャクラを使用する上にお前の眼にもなんらかの重いリスクを伴うようだな。イタチ」
「たった一度の手合わせでよく分析している…」
「…お前は足元に転がってたシモクを殺れたはずなのにやらなかった。それも俺を術に嵌めた後。だからそう分析したんだ。イタチよ。お前の視力、どこまで落ちている?」
「!!!」

…なんだ?イタチの表情が変わった?視力?なんの話だ。写輪眼は視力を落とすものなのか?

「カカシさん…貴方まさか」
「ま、この間は油断しちゃったけどね。俺もそうダサくはないよ。前回と同じようにはいかないんだなぁこれが。」
「この俺も前回と同じだと思ったら大間違いだってばよ」
「ナルト。こいつは俺がやる。」
「正気なら正気って冗談言ってみてくださいカカシさん。俺にとっても、うちはイタチは勝手に因縁付けていますんで。」

シモクの中によく出てくるこいつは、今も。嗚呼もう。ややこしいことは嫌いなんだ。

「また…また戦わないチームワークってやつかよ!」
「いや、今回は援護を頼む。本当は格好つけて先に行かせてやりたいところなんだけどね。俺もこいつを一人で抑えきれない。」
「…意外とまともでしたね。カカシさん」




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