想い出を繋ぎ止める物



※『見守ってた』より。load to ninjaでの奈良主人公とイタチ。仮面の男の事件終息後、木の葉に一時戻ったイタチが奈良主人公を連れ回します。友達以上恋人未満な彼等です。完璧なるif世界。奈良主人公のload to ninjaでの性格は真反対です。温度差に風邪ひく。♂×♂注意!


「ッチ。またお前か」
「火影の要請で来たんだ。文句あるのか」

修練の洞窟で、ナルトとメンマの対決が終息した頃。例の仮面の男は、木の葉の黄色い閃光の息子、メンマであった事が発覚した。今は親子揃って保護している。黒幕がいた事から、メンマが操られていたことは明白。尋問ではなく、事情聴取で終わるだろう。事の収束に当たっている中、イタチは見知った面を見かけ、肩を叩いたのだ。即座に振り払われて、凄みのある顔を向けられたが。

「大有りだな。てめぇの面拝む羽目になった」
「暗部だけでメンマのサポートが出来たとでも?」
「出来なかったとでも?俺の部隊は優秀だ」
「その優秀な部隊は木の葉の事態収拾で手一杯だったようだがな。だから俺たち要請部隊、暁が雇われた。」

奈良シモクは心底うざったそうに二度目の舌打ちを打った。こういう理屈っぽい喋り方が暗部の同僚であった時から嫌いなのだ。

「しかし、メンマだと思っていた彼は二人存在した。その一人は空間移動忍術で来たとみて間違いないだろう。」
「空間移動忍術?」
「平行世界。というやつだ」
「はっ。馬鹿馬鹿しい。」
「シモク、このまま木の葉に戻るのか?」
「前にも言ったが、俺はお前と慣れ合うつもりはこれっぽっちもない。どこに行こうが俺の勝手だろ」

そう言ったの何度目だ、と顰めた顔を向けたシモクはスタスタと早歩きで仮設医療テントの棟に足を向けた。

「イタチ、俺らも引き上げるぞ。うん」
「火影から金は貰った。これ以上ここに居る意味はない」

デイダラが芸術と豪語する大きな翼を持った鳥がイタチを見下ろしていた。

「すまないが、時間をくれないか。」

暁のリーダー…ペイン。相変わらずの無表情で、すたん、とイタチの前に降りた。詳細な理由を求めているのだろう。

「久し振りの友との再会。時間をくれたっていい筈だ。そういう条件だったろう」
「いいだろう。俺たちは先にもどる」

彼の髪色である橙色が残像で消えた。デイダラも「じゃあな」とメンバーを乗せた鳥と共に空へ舞い上がった。そういうところは、とてつもなく淡白だ。

「ミナトさん、良かったですね。息子さん」
「…ん、そうだね。これで仮面の男の脅威もなくなるだろう。」

テントの中で休んでいたのはクシナとメンマ、ミナトの親子だ。カカシ繋がりで交流のあるシモクはミナトに対して、イタチに向けていた態度が嘘のように穏やかだった。

「…君だろ?暁の要請を火影に進言したのは」

知ってるよ、とミナトはにっこりと笑った。

「…より効率よく使える手段があるなら、使うのは当然です」
「確か暁に友達がいたんだっけ…、って顔こわいよ」
「知り合い、です。友ではありません」
「ははっ!イタチ君も大変だ」

けろっと笑ってみせたミナトに、シモクはいたたまれない表情をした。ミナトにしてみれば、あの冷血漢と恐れられる暗部きっての帰還屋奈良シモクは、ただ天邪鬼で表現下手。恥ずかしがり屋な青年くらいにしか見えていない。実際間違ってないと思うのだ。積極的に暁を雇うよう進言したのも、ひょっとしたら、なんて。

「でも、本当に機転が利いてたよ。ありがとう」
「…いえ。」

これ以上、いたたまれないのは居心地が悪いらしい。こういうことで、ミナトに勝てた試しがないのだ。頭を下げてテントを出て行くシモクに、ミナトは再度、笑顔で見送った。



「…おい」
「そこの角を右だ」
「なんで貴様がここにいる」
「里帰りだ」

事態を把握した頃には夜が明けていて。元々非番だった休みを振り替えで取り戻して里をぶらぶら出歩いていたのだが。この男に遭遇した。

「ならついてくるな。」
「それはできん相談だ」
「ざっけんな。さっさとうちは地区に帰れ」

シモクの長い足の速度についてくる。イタチも身長はそこそこある。だからこそ、この速度に合わせる事が出来るのだ。

「新商品が発売されたんだ。うちは地区で。ネギトロせんべい。それに伴って全品値下げ中でな。」
「…お前、相変わらず卑怯な…」
「忍は裏の裏を読め」

言ってることは真面目腐っているが、つまりはシモクを誘い込むためのいつもの常套句である。毎回の如くやられているが、好物をちらつかされると欲求は動くものだ。イタチは勝ったな。と心で呟いた。シモクは不貞腐れながら柄の悪い目つきでイタチの後ろを一歩下がって付いてくる。

「昔から一匹狼なお前だからな。」
「は?」
「いや、前よりは大人しく…猫。狼卒業して野良猫になったのか?」
「…意味わからねぇ」

呆れたような溜息。こうして隣(正確には一歩違い)を歩くのは二年振りだろうか。木の葉の里を離れてからは要請部隊暁に属し、どんな依頼も引き受けてきた。それは勿論木の葉も該当する。イタチは暁に属す前に、リーダーであるペインにある条件を突き立てていた。それは木の葉からの依頼があった時には里に一時戻ること。離れた親友と会うことを許してほしいと。

「ほら、ネギトロせんべい」

うちは地区の入り口から少し奥まった所にあるうちはせんべい屋はシモクのお気に入りだ。ただ、超絶人見知りで且つ暗部の仕事が詰まっている為、中心部から離れたうちは地区に来るのは億劫だったのだ。

「美味いか?」

懐に沢山の煎餅を詰め込んだシモクの顔はご満悦だ。その微妙なる変化は長らく一緒にいなければわからない程。ネギトロせんべい。新商品に限らず売れ行きは悪いのだがシモクの舌には合ったようで、無言でせんべい屋の店員に小銭をもう一度差し出してネギトロせんべいの文字を指差した。

「お兄ちゃん、ありがとうね」

袋を差し出されたシモクはこくりと頷いた。それを微笑ましく見守っていたのだが、シモクがイタチの前に音もなく近寄った。

「やるよ」
「?」
「ここまでくるの正直億劫だったからな。来れて良かった」

その礼…という訳らしい。なんだ、本当に不器用な奴だ。野良猫並みに丸くはなったが、それ以前に、本当は優しい性格なのだ。

「どういたしまして」

変わらないのが嬉しくて、イタチはおもわず少し吹き出しながら袋を受け取った。

「それにしてもうちは地区は多彩だな。露店も個性的で」
「堅苦しいが創造性豊かな一族だからな。」

近寄ったのは装飾品が煌びやかに輝く露店だった。首飾りや腕輪、指輪、ピアスもある。シモクは、ピアスが嫌いだ。それは奈良一族の長子でありながら、自分より遥かに劣る弟のシカマルがピアスを継いだことが原因だ。シカマルはフォローしきれないほど抜けている。ならばシモクの方が頭脳も忍としての素質もあるのに。それを逆手にとられて暗部に入隊する羽目になったことを、シモクは人づてに聞いている。

「兄さんじゃないか。帰っていたんだな」
「サスケか」

シャラ。美貌を武器に、真っ赤な薔薇を片手に近寄ってきたのはイタチの弟のサスケだ。誑かしの天才、チャラスケと名高い男だ。真っ赤な薔薇は普通の男が持ち歩くと引くのに、何故か違和感がないのもうちはの血であろうか。

「珍しいな、あんたがここにいるなんて」
「煎餅を買いに来ただけだ。」
「あぁ、あれか。気に入ってくれたならなによりだ。なにか買うのか?」

パーソナルスペースに入り込んでくるような。絡んでくるサスケが鬱陶しいのか、横目でイタチを睨みつけるも、彼は気づいてる癖にわざと見ないふりを決め込み、商品を物色した。

「仕事柄、装飾品はつけられないだろ」
「お前はジャラジャラだがな」
「人生、遊ばなきゃ損だと思わないか?」

痒い。シモクは聞くに耐えないと顔を背けた。どうやらサスケの身につけている複数の装飾品はこの店で購入したらしい。まさにサスケ行きつけの店である。もう家に帰ろうと踵を返しかけた時。ピタリと耳に冷たい感触がした。

「買っていかないか。ピアスなら邪魔にはならんだろう」
「……喧嘩売ってんのか」

イタチはシモクがピアスを嫌う理由を知っている筈だ。神経を逆撫でされて無遠慮に睨みつけた。サスケはなにがなんだか分からないと言った顔で二人を交互に目線だけ忙しなく動かした。

「お前がピアスを嫌う理由は分かってる。だからこそ、好きになってほしい。ピアスは、お前達一族の大切な装飾品だ」
「俺はそれに該当しないハズレ者なんだよ。」
「いや…それでいいんだ。お前が奈良一族の16代目になっていたら、それこそ俺と接点はなかっただろうからな」

イタチはシモクに当てがった暗赤褐色のシンプルなピアスとそれと対になる翡翠色の同じデザインのピアス2つを持ち上げた。

「これをくれ」
「まいど!」
「おいイタチ!」

会計横に売っていた穴開けの道具も2本購入した。サスケに片手を振り、シモクの手首を引っ張った。強引なイタチの意図を察せないシモクとは逆にサスケは合点があったかのようにククッと喉で笑う。

「やるな、兄さん」



「冷たいんだが」

連れてこられたのはうちはの大元。本家だ。イタチはれっきとしたうちは本家の血筋であり、写輪眼を開眼させている。天才と呼ばれ、火影にもなれる器を持っているという男が何故、自分の耳をキンキンに氷で冷やしているのか。そこまでくれば察せない程シモクは間抜けじゃない。

「きっちり冷やさなければ、痛いぞ」
「…嫌だっつってんだろ」
「心配するな、俺も一緒に開けてやる」

シモクの耳に氷を当てがいながら、自分の耳にも氷を当てた。溶けた氷の水がぽたりと畳に落ちる。染みになっている箇所をぼんやりと眺めた。そう、俺はピアスが嫌いだ。見れば見る程。機嫌感が増すだけだ。なのに、なんでイタチは。

「開けるぞ、怖かったら目を閉じていろ」

誰が怖いかよ。馬鹿。静かな部屋で、穴開け道具を手にしたイタチはシモクの耳に照準を定めた。穴開け道具と言っても、ただの鋭利な針だ。通常だったら痛いだろうが、氷で冷やされた耳は感覚がない程。

「っ、て…」

ぶち。耳障りな音が聞こえた。じんわりと。穏やかな痛みが走る。

「いいぞ。終わりだ」

イタチは満足そうに笑むと、自分に当ててた氷を離して針を自分の耳に近づけた。自分で器用に開けた穴を、シモクに見せた。嫌だって言ったのに。…何故俺は強く抵抗しないのか。

「…遠国から要請が来た。でかい仕事だ。今度は二年以上になるかもしれない。俺はお前を親友だと思っている。だからこそ、覚えていて欲しい。そして願わくば、俺を思い出してくれ」

ぱちり。シモクの耳に微かな重み。暗赤褐色のピアスが、窓からの光に反射して淡く光った。

「俺もお前を思い出そう。」

他国からの要請があれば、その間は他の仕事に当たれない。比較的状勢が良い木の葉で要請部隊を雇うのは本当にイレギュラーな時だけだ。木の葉からの要請がなければ…イタチは簡単に木の葉に戻ってこれない。

「奈良シモクのところに、また戻ってくる」

シモクのピアスに口を近づけたイタチの耳には翡翠色のピアスが眼下で見えた。心臓の奥が、震えた。思わず俯いて口に片手を当てた。なんだこいつ。なに言ってるんだ。

「…馬鹿じゃねーの…そういうキザな所が本当にサスケの兄貴だな」

憎まれ口を叩くのは…恥ずかしいからだ。無条件に人に優しくされること。自分の為に、なんて。そんなもの、他人の事だと思ってた。

「…俺ピアス嫌いだっつってんのに、無理に開けやがって。」

あんなに嫌だった。弟が耳に何気なくつけているのは、奈良一族16代目である証だ。俺には、手に余るもの。…そっと耳に手を当ててみる。自分じゃ確認できないが、イタチの写輪眼の色と似た赤が、そこにある。そしてイタチの耳には翡翠色。奈良一族を代表する色だ。

「……ありがとう」

一族の証でもなんでもないけど。お前となら、…悪くない。わざと窓の方を向いて顔を逸らした。耳まで赤く染まったシモクの耳に同じように輝く赤。

「…どういたしまして」

イタチは一瞬惚けた顔を見せたが、すぐに穏やかに笑んだ。このピアスだけは…嫌いじゃない。イタチが俺のために、くれたピアスだ。なんだか丸め込まれている気がしなくもないが、イタチが嬉しそうだから、…もういい。胸がじんわりと、暖かかった。

「ん!シモクどうしたのこれ」
「ミナトさん。」

イタチが暁に戻った数日後、偶然火影邸で鉢合わせた報告帰りのミナトはシモクの耳に輝く赤を見つけた。

「珍しいね、装飾品をつけるなんて」
「あぁ、まぁ…」

耳に触れた時。ほんの少しだけ鉄面にはにかみが浮かんだ。おっと、これはレア。

「大切な人から貰ったんだね」

そう言えば、シモクは周りを見回して、誰もいない事を確認した後に、恥ずかし気に頷いた。ねぇ、イタチ君。君だけだよ、シモクにこんな顔させられるの。そして、赤色。なんだかここにいる筈ないのに、まるで君の写輪眼で見られている気分になるよ。シモクに近づくな、ってね。


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リクエストありがとうございました!ロードトゥニンジャの奈良主人公とイタチです!イタチは映画でもあまり変わらなかったんですが、あのチャラスケの兄貴ですからね。似通ったものがあると思い、強引兄貴でした(*^^*)チャラスケや、波風ミナトとも絡ませることに成功しました!ロードトゥニンジャといったらミナト先生です!!私得です。ありがとうございました。



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