new! それは決められていた道だったから



※「見守ってた」より。里抜けif世界。


「お前には関係ない…!!!」
「関係なくないだろ……」
「だから言ったんだ!俺はお前にそんな事頼んだ覚えはない…!」
「でも、もう終わっちゃったでしょ……」

まん丸な月が空に昇り、いつもより煌々と里を照らす中。イタチは声を荒げて目の前で座り込む男に詰め寄った。イタチの木の葉で最後の任務。それは木の葉内部でクーデターを企てるうちは一族の殲滅。それを…シモクは本人の口から聞いた。暗部棟から離れた岩場で。1人でその任務を遂行すると決意したイタチに、同調したのはシモクだった。「1人でやる事じゃない」と。うちはと木の葉の二重スパイで苦しんでいた事を知っていたシモクにとって、これ以上イタチの苦行を、その1人の肩に背負わせる訳にはいかなかった。うちはとの問題は里全体の問題である。その全てを負わせるのは間違っている。イタチがうちは一族を襲撃するのと同刻。奈良家の長男である奈良シモクは同じくうちは一族を同時襲撃した。イタチと違い、里から承認のないシモクの行為はまさに犯罪になるのだ。うちはイタチは表向き、犯罪者に。奈良シモクは本当の犯罪者になった。ダンゾウと三代目火影が存命の内はイタチの任務を汲み、木の葉側からの捜索は免れるだろう。ただその権力者2名が知らぬ、もう1人の犯罪者は木の葉が所持するビンゴブックへの記載は免れない。

「お前は自分どころか、家の名まで汚したんだ!」
「そうだね」
「なんて事をしたのか…理解しているのか!?」
「やっと少し理解できた。」
「なら!」
「お前の気持ちを。…こんな、千切れそうなくらい痛いもんなんだな……よかった……。お前に1人でやらせなくて…本当によかった」

いつもみたいに少し困ったように笑う顔に、イタチもとうとう地面に膝をついた。…巻き込んでしまったのだ。自分が、苦しいと思ったばかりに。シモクに、甘えたばかりに。知っていた筈だ。シモクという男は一度決めたらテコでも動かない。頑固で、一貫して後悔しないと笑うのだ。知っていたなら、俺はどうしてこの優し過ぎる男を巻き込んだのだろう。地獄へ、道連れにしてしまったのだろう。

「そんな顔しないでよ…怖いな」
「うちはじゃないお前は、本当に里を裏切った犯罪者になるんだぞ…」
「そうだね。でも後悔してないから。」
「…ッ、……すまない…、!」
「…ううん。俺が勝手にやった事だ」

暫くの間2人は放心したように座り込み、なにも喋らなかったが、うちは一族の死体が公に発見される前に三代目火影の元へ赴いた。遅かれ早かれ、木の葉とうちはは争う末路だったのだ。木の葉側が二重スパイであるイタチに持ちかけたのは、弟の命だ。最愛の弟の無事は木の葉が保証しよう。だから、無駄な争いが起こる前に、秘密裏にうちはを殲滅しろ。ダンゾウの発案に乗ったのは、これしかないと思ったからだ。

「三代目様。俺にイタチをそのまま見送ることは、出来ませんでした」

イタチの隣に立ち、同様に返り血で制服を汚したシモクを。三代目はゆっくりと瞬きしながら見つめた。意外だったとも、想定していたとも。なんとも分からない表情で。

「ワシからシカクにはなにも言えん…それはお前がうちはイタチの極秘任務を共に背負うからじゃ」
「はい」
「この任務を知らぬ者達にとっては、お前がうちは一族を襲撃し、里を抜けた犯罪者と思うじゃろう」
「俺は後悔してない。こいつに全て背負わせて。ずっと知らない振りするような…そんな生き方なんか、絶対したくないんです」

三代目はそうか、と呟いた。残されたうちはサスケの保護は木の葉が責任を持って行う。真実を闇に葬る為、奈良一族には一切の情報を開示しない。うちはイタチ、並びに奈良シモクは木の葉隠れの里を抜け、里外より木の葉の脅威となるものの排除、守護する任務を改めて授ける。なにか望む事はあるかと、三代目は最後の慈悲を投げる。イタチはサスケの無事が確保されるなら他は望まないと。シモクは少しの間、火影の背中に広がる里を見つめた。無意識に呟くように言葉が落ちた。

「…弟……うちの弟が…めんどくせーなんて言わないくらい…師を…指導を…お願いします」

「……お前たちは本当に優しい子じゃな…」

深く、深く下がる頭を横目に。隣にいたイタチが、きつく拳を握った。三代目との話が終われば、もう…故郷に用はなかった。必要最低限の物だけを手に取り里を去る間際。イタチは弟の話を切り出した。最悪な場面であったとは言え、弟と対面した自分に対して、シモクはシカマルと最後の別れをしていない筈。待っているから一目会って来いとぐいぐい背中を押すと、ゆっくり瞬きした。まるで昔話をするかのように口を開く。

「昨日、柄にもなくソーセージの取り合いして喧嘩したんだよ。兄弟らしいだろ?」

行こう。振り返る事なく結界が故意に緩められた門を超えたシモクに続き、イタチは里を一度振り返った。たった一言。その行動が示す彼の覚悟を今一度受け止めた。

「…兄を奪って…すまない。」

シモクの弟である、シカマルに向けた言葉は本人にも。誰にも聞き届くことなく闇に放たれた。

その日。うちは一族はうちはサスケを残し全滅した。里の脅威であったうちはの壊滅を心の中で喜ぶ者も。サスケを憐れに思う者も。これで良かったと肯定する者も大勢いた。そして一族殺しに加担した疑い、里抜けの事実を持って御三家、奈良一族の"継げなかった方の息子"がついにトチ狂ったと。暫くの間は奈良一族への風当たりは避けられない事であった。奈良の筆頭が父たるシカクでなければ。猪鹿蝶の団結が強固でなければ、いくら里の古参一族といえども身内が起こした罪に潰されていた。それ程にうちはの問題は里全体を覆うくらいに巨大なものだったのだ。



抜け忍の集団暁に所属してからどれくらいの月日が経ったのか。いや、…イタチがサスケに殺されてから、どれくらい…。実際そんなに経っていないのだが。シモクはぼんやりと道無き道を歩いていた。サスケから加具土命を受けても尚、瀕死の傷を負いながら歩き続けていた。とんでもない力だ。やはりうちは一族は特別だった。瀕死も瀕死だ。背中と腕の皮膚はぼろぼろで外の気だけでも激痛。貧血で目の前はチカチカぼんやり。雨の音しか耳に入らない。里を抜けてから伸ばし続けた髪が紅雲のマントに張り付く。水分を吸って余計に身を重くさせた。

「イタチ……俺は、後悔してないよ…お前もでしょ…?」

今日に至るまで、ずっと共にいた相棒が死んだ。望んだ死だった。こうなることを望んでた。イタチは、やり切った。自分が敷いた物語を完結に導き、築き上げてきた全ての力を弟に譲り渡した。ビリビリと抉るような傷口に思わず膝をついた。ばしゃりとぬかるんだ地面は気持ちの悪い柔らかさだ。

…痛い。痛くて痛くて堪らない。自分の精神を支えてくれていた相棒が死んだ。それがなにより。身体の傷なんかよりも痛い。目頭が急に熱くなってきて口を結んだ時。

「_見つけた。」

…背中から、声がかけられる。随分と、懐かしい気がして…。シモクは里を抜けたあの日以来、イタチと違い木の葉の里に寄り付くことはなかった。今日まで、会うことは決してなかった。険しい顔で立つ、着込んでいるのは上忍のベストだ。顔つきも大人びて、最後に見た丸っこい輪郭の印象とは随分違って見えた。共にいる上忍達にも見覚えがある。

「…長いこと、探したぜ。まさかこんな場所で会うなんてな」

イタチ。

「S級犯罪者、元木の葉隠れの奈良シモクだな」

俺もすぐに、いくよ。

「うちは一族の殲滅に加担し、里抜けの重罪。おまけにあれは暁のマント…話をしている場合じゃあない!そいつはビンゴブックに載る犯罪者だ!」
「イタチ同様、暁に属してやがったのか!」

俺たちの任務は、今も継続している。イタチはいなくなったけど、俺は最後まで「犯罪者」でいなきゃ…だって俺の我が儘だったから。三代目様が家族にずっと口を閉ざしてくれた意味がなくなるのだから。朦朧とする意識の中で必死に相手方の声を拾った。

「何故うちは殲滅に加担した。」
「なにも話すつもりはない」
「…埒が明かねえ。続きは…木の葉に連れて帰ってからだ!!」

弟…シカマルは素早く地面に膝をつくと影真似の印を組んだ。

「話をする…つもりはないんだ」
「俺はあんたに聞きたいことが山程ある…!」
「答えてあげることはできない」
「口割ってでも喋ってもらうぜ!ずっと、ずっとずっと!あんたを探してた…!!」

伸びてくる影が、自分の影とくっつく。無抵抗。あまりの呆気なさにシカマルは目を見張る。演じろ。イタチと同じように。騙れ。自分を。くっ、と息を飲んで弟の三白眼を見返した。

「奈良の16代目。猪鹿蝶の証のピアス。俺が、なれなかったもの。」
「…!」
「次男に主権が渡ったんだ。俺は奈良家で生きていけない。居場所がないから逃げた。それは悪い事なの?」
「…親父は、そんなつもりじゃなかった。」
「行動が事実を表してる。父からなにを聞いたか知らないけど、俺にはなにも言わなかった。」
「それが…里抜けの理由だってのか…?…ならなんであんたは、」

ぶちっ。シカマルの集中が緩んだ瞬間影が強い拒絶で千切られた。簡単に切れるものではない事はシカマルが一番よくわかっている。追撃に影の手を増やす。この離れていた10年近く。やっと捉えた姿は記憶の中の兄とだいぶ違って見える。雰囲気だけでなく、隠遁の力もそうだ。…最後の思い出は喧嘩別れだった。なんであの日に限って喧嘩なんて。普段滅多に喧嘩に進展させない兄が、なんであの日に限って。あんなくだらない事で。昔からずっと考えていた。全ての事柄のタイミング。無意味なうちは殲滅の片棒担ぎだったか?それをする事で、兄のメリットは…何だった?

「…俺の憶測だけど…あんた、もしかしてわざと。 …わざとあの日」

シモクは口を開こうとしない。先程の宣言の通り、"何も話すつもりがない"のだろう。加勢としてそれぞれの武器を抜いた上司達はじりじりとタイミングを読んでいる。

「…俺はあんたを木の葉に連れて帰る。話はその時に聞かせてもらう。」
「そんな時間はない!シカマル、いま殺るべきだ!」
「幸い相手は手負い!」
「連れ帰るって言ってんだろ!!漸くなんだよ!俺には!俺にとっては…!」

木の葉に連れ帰られて、山中一族の技を使われたらたまったものじゃない。いのいちさんの凄さは幼い頃から解ってる。しかも、いのいちさんだけじゃない。娘のいのまでいるんだ。頭の中を全部見られる。しかしこの状態で逃げ切るのは無理。なら…記憶媒体ごと消滅させてしまうか。俺という記憶を。たくさんの思いが詰まったこの頭と身を。

「どちらにしてもあの傷では長くは持たない!木の葉に連れ帰る前に死ぬぞ!」
「医療忍者達が!いのの班が向かってる!」
「しかし…!」

木の葉の忍の、この対応。誇らしいじゃないか。俺は、立派に里を抜けた大罪人だ。上手く、演じられていたじゃないか。

「…っ、」

背中を向けた瞬間捕縛用の術だろうか。全身に巻きつく絹のようなものは雨を吸って徐々に質量を増す。べしゃりと地面に頬を派手に擦った。シカマルの怒気に負けたのか、俺を殺す気は失せたらしいどちらかの忍の忍術だろう。

「…おい、この傷で…歩いて喋ってたってのか」
「バケモノかよ…」
「暁に所属してるだけあったな」
「こいつが、あのシカクさんの長男坊…」

木の葉の里。俺が生まれた…故郷。友と出会えた、運命を曲げた俺の居場所。愛おしいと共に、憎らしい。

「そんな風に言われるのも久々かな…」
「今医療班が来る。…こんな、状態で…会うとは思ってなかった」
「俺はお前が憎たらしい」
「構わねぇよ。口では何言ってくれたって構わねぇ」

俺分かるから。…と。シカマルは表情を強張らせた。下手くそな強がり顔だ。

「昔から、あんたは自分を隠すのが上手くて。よく分からない奴だったのは覚えてる。だからか、分かるんだ。あんたは目を見れば、分かる」

俺を心底憎んでないことくらい。

「理由が知りたい。あんたが、奈良のあんたが。なんでうちは一族殺しに加担したのか。」

「…お前が嫌いだよ」

だいすきだ。

「俺が持つべきはずだった全部。お前、持ってったろ。なんで、奈良の俺が暗部になったと思ってる」

お前が相応しかった。だから跡はなにも心配せずに、家族からも故郷からも。大切な親友を連れて離れられた。

「奈良に要らないって言われたからだよ」

暗部で沢山の恩師と仲間に出会えた。

「何処にも、」

俺を見出してくれた

「居場所がなかったからだよ」

居場所をくれた

「木の葉がうちはと内戦を起こすのも見物だったかもしれないけど。イタチとは利害が一致した。彼に加担することで俺自身が里に拳をあげることができる。楽しかったよ。なかなかに。見たろ?ペインの一撃。」

木の葉とうちはが内戦を起こせば、もしかしたら戦争に発展するかもしれない。俺達がその可能性を葬り去る事が、唯一の救いだった。それが全てだった。

「イタチは手段でしかない。互いにな。分かったなら消えろ木の葉の犬共」

互いに、重苦しい重圧を背負いながら。全ては自分の描いた終焉の為に。愛おしい家族のために。その一心で、言うならばそれ以外に支えがなくて。

「シカマル、この傷只の傷じゃない。医療班を待っていたら確実に死ぬ。」
「…分かってる」
「…追い続けた兄だってことは知ってる。だが人は変わるもんだ。家族といえども」




角都や飛段。師の命を奪った集団に属しているのは自分と血の繋がりのある身内。何故か、どうして。ずっと考えていた。うちは一族が全滅した次の日の朝には事態を収拾した親父の同僚がうちを訪ねた。傍らには兄の上司を名乗る暗部が数人。親父は人を払い話を聞いていた。短い、短い顛末。

_うちは殲滅に関わる容疑者として奈良シモクが浮上。奈良シモクは殲滅実行犯うちはイタチとツーマンセルを組んでいるコンビ仲。加担の可能性大。事件発生後に消息を絶っている事、結界から2名脱走の痕跡が残っていた事から殲滅加担容疑及び事実上里抜けの重罪でビンゴブックに登記した。

里抜け。それは里に属する忍にとって重罪。行きなしの忍が辿る道は大方同じ。親父がどんな顔をしているのかなんて、見れなくて。夜中にいのやチョウジの父ちゃんが顔を合わせて集まって朝からずっと、同じ場所から動けなかった親父の背中を支えてくれていた。母ちゃんも引退したとはいえ忍だ。里抜けの大罪、なにより"里や家族を見限って"出て行った事が何よりも…何よりも辛かったと思う。俺はあまり覚えていないが、母ちゃん曰く。兄は、とてもとても優しかった。だけど最近の顔が思い出せないと…顔をぐしゃぐしゃにして大声をあげていた。母ちゃんだけじゃない、俺だって思い出せない。ずっと、近くにいた気がするのに。三人しかいない家に慣れていた。本当に三人だけになった。

怪我はしていないか。路頭に迷っていないか。元気で、生きているか。兄がいなくなって幾年。奈良一族は兄の影を消していった。さらにまた一年、二年と。俺には元から兄弟がいなかったかのように。払拭されていった。冷蔵庫を開けるたびに思い出す。あの日のやり取りを。最後となったあの日の会話を。

本当は、なにを考えていたのかを。



「本当の事を、聞きたくて。ずっと考えてた。俺はあんたの事何にも知らなかった。知ろうと、しなかった。だから…今教えてくれ……兄貴」

…それができたら、幸せかな。ううん、そんなこともないか。どちらにしても晴れることがない。今この時でさえ俺の弟は信じている。イタチのところのサスケのように、殺意を持って向かってきてくれたなら。

「………ああ、お前…」

さっきまで父さんにそっくりだったけれど、

「その顔は……母さんに…似ているな…」

その…なんていうか、泣きそうな顔。朦朧とする意識の中で決して色褪せない記憶。父と母。弟。みんなの顔。

「……か、さん……元気か…」
「…っ、何でそんなこと聞くんだよ。元気な訳ねーだろ、あんたが居ないんだから…ッッ大変だったんだからな…!あんたが奈良を出て、里を出てから!親父がどれだけ泥被ったと思ってやがる…!どれだけ、捜してると思って…、っ」

「おまえは……元気か」

聞きたい事は…俺の方だってあるよ。ごめんな。俺が我儘なばかりに。家族を傷付け家名を傷付け。俺は、お前達を失うことこそ恐れて。どちらも失いたくなくて。

「…俺は…元気だよ…もう、ガキじゃない。木の葉の上忍だ。めんどくせぇけど…あんたを追いかけるためにな」

どうにもならん。今更。あの時の選択、俺達本当にこれで良かったのか?イタチ。俺達は、ガキだったかな。でもこれしか無かったんだ。そうだよな?そうに決まっている。ここまできたんだ。ここまでやってきたんだ。俺達が俺達を肯定しなければ。

「……なあ」

一等光って、目に刺さる。眩しいよ。そのピアス。しかし、嗚呼、父さんから下げ渡されたピアスじゃないな。そうか。お前の新しい誇りなのか。

「俺は間違ってない」

「間違ってなんかない」

「そんなこと、俺達が許さない」

「絶対に」

「俺達の選択を、俺達がなによりも尊いものだと信じている」

「俺達は俺達を肯定する」

わかってほしいわけじゃない。こんなの、気が狂ってるからだ。俺達は身内を愛し過ぎる。それが、たまたま揃ってコンビ組んでたんだ。必然か。俺が暗部になって、カカシ先輩が暗部を上がって。そうして。裏で蠢く陰謀に気づいちまって。周りの人間を信用しなかったわけでも、信頼をしなかったわけでもない。そう、あの時。

『俺達が守らなければ』…お互い一族の長兄だ。弟を家族を守るのは当然のこと。むしろ自分達で動かなければと。必死だったんだ。イタチも、それを見てきた俺も。

「誰にも、文句なんか、言わせない…」

悪運尽きるとはこのこと。頭が割れそうな程の激痛と、凍りそうな程の悪寒。指先ひとつも動かすことができない。これが、死か。

よく生きたよ。俺。よく、頑張ってきたよ。その生き汚いところが、俺をここまで連れてきてくれた。

なんで俺がイタチに協力したかって。
損得を前提に考えるウチの一族には、わからないかもしれない。

でも、それが俺という男なんだ。
とても、愚かで、人間らしいだろ?

ふつりと切れた意識の先で、弟が「わかったよ」と。
小さい頃に聞いたような、ぐずぐずの顔と声だった。




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