♂それでもあなたは行くのだね(沖田総司)
沖田君は、つよいひとだ。それにとても優しいひと。本当は傷付いてるのにひた隠して戯けてみせる。本当は構って欲しくてたまらない。子どもみたいなひとでもある。
「…また、来たの?」
まあ、他に行くところもないし、一人じゃ寂しいと思って。
「ふうん。その顔、素直じゃないね、僕そっくり」
一緒にするな。
「はいはい」
沖田君は身体が大きかった。大きかったんだ。今じゃ、その腕も女子みたいに細い。血を吐いてるところを見たことがある。苦しそうに胸を抑えて血を吐き出す。君にも移るのかな、なんて馬鹿なこと言ってたりもした。
「ねえ、土方さん達どうしてるのかな…嗚呼、土方さんってね、僕が−…」
ひどく懐かしそうに話す横顔を隣で見上げていた。静かな場所だ。戦場とやらとは、きっと似ても似つかないんだろう。
「ッゲホゴホッ!!!」
沖田君!急いで側に寄ったけど片手で遠ざけられて、顔を逸らされる。
「はぁ…っ…大丈夫だよ、こんなの、全然」
嘘つきの君のその言葉、いつも聞いてるよ。その、千鶴ちゃん、と土方さんという人は沖田君の側にはいられない。だけど、僕ならいられるんだと思うんだ。こんなとき、どう言えばいいのか。
「…ははっ、まるで僕を励ましてくれてるみたいだね」
みたい、じゃない。僕は、沖田君の側にいれるよ。確かに沖田君と同じく寿命は短いかもしれない。
「君は、随分と長く生きているのかな」
身体こそ現役だけど、結構おじいちゃんなんだよ、僕。
「……僕より先に行ったら…斬るからね?」
そんな目で見なくても、大丈夫だよ。確かにおじいちゃんだけど、沖田君の息が途切れる、最期の最期の時まで…。どうか僕の命も、その時に。
『変わらずに傍にいるよ』
「あの猫どこいったんだろうなあ。ほら、茶模様の懐かない猫」
「そういえばぱったり見なくなったな。結構年寄りだったし、死んだかもなぁ…」