♂欲しいものを言ってごらん(赤司)


※♂×♂表現注意

赤司は悩んでいた。彼の普段を知る面子が見れは何事だと思わざる得ないような顔で。仕事中でも、この思案顔は不安要素にしかならない。今回のプロジェクトを任された黄瀬なんかは、自分がなにかポカをしたのか気が気でない。それを共同でやった青峰もそろそろ高血圧でやばい。

「赤司君、なにかあったんですか」

青峰と黄瀬の顔が一斉に上がる。赤司に近づいたのは黒子だ。本当に度胸の据わっている男である。キングオブ男である。

「あぁ、黒子。」
「黄瀬君と青峰君が怯えてますよ」

自分がなにか失態したのではないかって。そう説明されれば赤司はふっと笑った。

「まさか。黄瀬に任せたプロジェクトは上々だ、なんの問題もないよ」
「ならプライベートですか」
「まあ、ね。なにかと迷うところではあるんだ…ねえ、黒子」

結婚相手が男であっても、ウエディングドレスは発注すべきだろうか?



「おいこら赤司」
「ああ、おかえり。早かったな」
「おかえりじゃねーわ、おま、お前黒子になに吹き込みやがった?あん?」
「人聞きが悪いな。それと口調も昔に戻っているぞ元ヤン」
「うるせーな!元からだよ!!」

目の前で爽やかに笑うこのすかした顔を一発殴ってやりたい。やっと終わった仕事の帰り道。
懐かしいアドレスから連絡があったかと思えば、

『赤司君とのご結婚おめでとうございます。男主名前さんがウエディングドレスを着るなら僕はアリだと思いますよ。では』

式には呼んで下さいね。…なんて一方的に切られた。俺の血管も切れた。

「結婚式は世間一般的に言えば新婦は花嫁姿だろう?ならば俺たちの結婚も男主名前のウエディングドレスもどんなものを発注すべきか大いに悩んでな」
「いや要らねーだろ!!男が着て誰得だよ!!?てか結婚てなんだよおい!?」
「まぁ、肩幅はあるが腰は細い方だし大丈夫だな、やはり白で発注しよう」
「ねえ人の話聞いて!!?」
「白は嫌いか?」

ついでに腰触んないで!!?赤司の人の話を聞かないこの悪い癖は高校んときから変わってない。俺と赤司は高校からの付き合いだ。洛山バスケ部の主将、そしてキセキの世代っつーなんかバスケのチート集団のボスがこいつ、赤司征十郎だ。目の前でウエディングドレスがどうたら言ってるこいつね。何故俺がこいつに丸め込まれたのか。というか始まりはなんだったのか。強いて言えば俺の実家が京都の豆腐屋で俺もその店の味を継いでいく次男坊で。ちまちま修行がてら余りに余りまくった豆腐を学校の昼飯に消費していたらたまたま赤司に遭遇。…奴の好物を知って練習ついでに湯豆腐を作って奴にあげたのが失敗だった。俺は、奴の、胃袋を掴んでしまったらしい。その頃からだろうか…。執拗なアタックもどきが始まったのは。奴の目は俺の顔が豆腐にでも見えてるのではないだろうか。それで、なんやかんや流されて、高校卒業する頃には何故か赤司が用意したばかでかいマンションに同棲。そして…今に至る。…なんだかんだ、奴はやはり憎めなくて。俺の性格でもあるんだが嫌いにはなれない。たとえ強引な事をされようと、一度懐に入れた人間は憎めない。

「いや白はふつーに好きだよ」
「良かった」
「あぁ、うん」
「帰りに書店にいってゼグジィを買ってきたんだ、やはり純白の花嫁の隣に並ぶタキシードは純白だろうか」
「…まさかと思うけどお前1人だけタキシード着ようってんじゃねーだろうな」
「なにを言ってるんだ。僕は新郎なのだからタキシードを着ないでなにを着るんだ」
「その頭に、俺が新郎で自分が花嫁役のウエディングドレスって選択はなかったのか」
「ないな。男主名前ならよく似合うだろう」
「だから誰得!!!?」

何様俺様赤司様!!!!そんなキョトン顔されても腹が立つ!!どっからどーみても童顔で小柄なお前の方がウエディングドレスだろーが!デカイいい歳した男がドレスとかそもそも間違ってる…!え、なにこれ不可避なのか?赤司の言うことはゼッターイとか言ってる場合じゃねーぞ俺!!赤司は、結婚式を本人の了解もなく強行しようとしている。てか結婚式とかほざいたのも今日が初めて初耳。まてよ黒子、俺はなにも言ってない…!

「あ、そういえばまだだったな」
「なにが」

もうなに言われても驚かねーよ。こいつの思考回路まじぶっ飛んでやがる。常人の俺にはついていくのにやっとだ。というか、既に波に飲まれてる感じ。赤司の手が肩に乗る。あ、やばいこいつ…っ!!

「なっ、…っ、お前!」

アンクルブレイクだ。肩に少し力を入れられただけで俺の体は後ろに倒れて尻餅をついた。なにこれDV?転ばされたんだけども。

「俺も男だから、少しは緊張するんだこの場面」
「どの場面!?一体これなんの場面!?」

1人で勝手に緊張やらをして深呼吸し始めたぞこいつ。人を転ばせといて、まじなんなの!?

「これからも俺だけの湯豆腐を作って欲しい、結婚しよう」
「順次おかしいだろ!!」

てか転ばせた意味は!?頭が高いってか!?俺がプロポーズするのに頭が高いよってか!?なら座るなりなんなり促せよ!!って、

「そ、…れはプロポーズですかね赤司さん」
「勿論、そのつもりだ」
「あ…えーと、そうっすか…」

…ああ。もう勘弁してくれ。お前へのツッコミまじ疲れる。その目は先が見えるんだろう。なら俺の気持ちも返事も見透かしてんだろ。見透かされる人の気も少しは知れよ。くそ恥ずかしいじゃねーかよ。ふざけんな赤司。

「…俺もお前と結婚してーよ馬鹿野郎」

でもウエディングドレスは絶対着ないからな。


 


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