08 − その後の二人 (8/37)
「だったら、上陸時にしているんじゃないか? “ソーイウコト”は」
 二人の行動を考えれば自然とそう思いつくものだったが、シャチの推理は違うらしく、チッチッと指を振った。
「いや〜? おれの鋭い勘がそうじゃねェって云ってるぜ」
 シャチは何故か胸を張り、ズレたサングラスをグイッと押し上げる。
「じゃあ何なんだ。まさか…………“その答え”を叩き出すつもりか、お前の勘は」
 ペンギンも何故かゴクリと唾を飲み込んでしまう。自分の船長に対して“その答え”を叩き出すのは、トンデモナイ事のように思えるからだ。
 それが互いに分かっているので、二人は神妙な面持ちになる。
「……どうする? イユに訊きに行くか?」
「訊いてどうするんだ……ただのセクハラだぞ。船長に知れたら“オペ”されるに決まってる」
 “よう、イユ! ところで船長とヤッてるか?”と訊ねるシャチが一瞬にして真っ二つ……否、細切れになる映像が、二人の脳裏によぎった。
 まだ胴体がくっ付いているのにも関わらず、シャチはアワワワと青ざめている。
「そ、そうだな……“お前の首を見張り台にくっつけておこう”とか云いそうだもんな」
「誰の首を見張りにするんだ?」
 いつの間に入って来ていたのか――と思いかけ、ペンギンは首を振る。いつの間に“サークル”が作られていたのか気付かなかった、と云うのなら正解だろう。
 ローは二人の背後にあったソファに足を組んで腰掛けていた。
「ウギャアアアーッ!!?」
 まるで化物にでも遭遇したかのような悲鳴をシャチが上げる。
「アイ〜……あれェ、キャプテン……?」
 先程から大声を上げていたシャチだったが、その悲鳴は熟睡していたベポにも届いたらしく、ハンモックからベポがのっそりと起き上がった。
「ど、どうされたんですか、こんな時間に」
 ローがいつから居たのか気になる――何せ、今までの話を聞かれていたら、二人共タダじゃ済まされないのは目に見えている。
 が、ローは特に気を立たせた様子もなく、鬼哭を持って立ち上がった。
「ちょっと来い、ペンギン。あの計画の話だ」
 思わず盛大な安堵の息を吐きそうになり、ペンギンは慌てて咳払いで誤魔化した。
「ッゴホン! い、今行きます……ベポ、起こしてすまなかったな。シャチも早く寝ろよ」
「お、あ、あァ……」
 椅子から立ち上がり、二人にそう声を掛けたペンギンは、シャチに哀れみの視線を貰いつつ部屋を出るのだった。



 ローがペンギンを連れて向かった先は、船長室ではなく食堂だった。
 二人で話をする時、いつも船長室なのかと云えばそうではない為、ペンギンは特に気にしなかった。――むしろ、今日は何も気にしていなかった。頭の中では、今さっきシャチとした会話の事を考えていたのだ。自分に話す前のハンモックに居たシャチと同じように悶々と、だ。
「……」
 黙ってローがいつもの席に腰掛ける。ペンギンも次いでその向かいに座った。その席は、普段ならイユが座っている席である。
(イユ……と、船長か……)
「新世界入りの話だが――」
 早速、ローは作戦会議を始める。
 作戦会議と云うより、ローの構想、策を教えてもらうと云うものなので、“会議”とは少し違うかもな、とペンギンはぼんやり思う。

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