07 − その後の二人 (7/37)
 シャチの言葉に、ペンギンは作業を止めた。この様子では適当に返事をしても済まなそうだと思ったからだ。
「ああ……部屋に篭る方が多いな」
 溜め息をつきながら、シャチの方を向く。
「まァ時々、イユと食堂で酒を飲んでるな……イユは飲ませてもらえないだろうが……あとは宴をデッキから見下ろしてたり……おれ達と作戦会議なんかを食堂や船長室でしていて――あ、」
 ぽつぽつとローの夕食後の行動を思い出していて、ペンギンはふと気付く。そして、それにシャチが頷いた。
「気付いたか? 船長は夜、船長室に居て。イユは見張りがありゃァ見張り台へ、そうじゃなきゃおれ達と遊んでるか、部屋で読書してるとか寝ちまってるとか……とにかく、自室に居るよな」
 ローの一日の行動は、昔からの付き合いもあり大体把握している。そしてイユの行動は、シャチが最近観察していて把握したものだ。
 シャチが“妙に引っかかっていた”のは、“そこ”なのだ。
 そしてペンギンも目を瞬かせ、“そこ”に気付かなかった自分に首を振る。
「何だ、おれはてっきり……」
「おれも“そう”思ってた……イユは船長と船長室に居るんだと思ってたよな? ――だってさ、だってあの二人は相惚れだろ、コイビトドーシってヤツだろっ!?」
 シャチはどうしてそこまで、と云うくらいに興奮していた。
「夜は“ソーイウコト”してると思ってたよな!?」
「おい、シャチ……声がデカいぞ」
 あからさまな表現を使わないだけ、まだいいものの、“そんな事”を大声で口走りながらシャチはペンギンに詰め寄る。そのサングラスはズレていたが、彼は構わず荒ぶるばかりだ。
「だってよ、ビックリしたんだよ! 平然とキスだのハグだのしてるくせにさ……! おれはここんとこ、イユを見ていて気付いたんだがよ、船長とイユって一緒に居る事の方が珍しくてさ……一緒の時は一緒で、それはそれは甘―い感じなんだが、結構二人共、職務を全うしてると云うか……」
 船長と船員――相思相愛の関係になるより先に、“仲間”となった二人なだけに、それぞれがその日やるべき事をしっかりこなす、と云うのが無意識にもあるらしい。それは、海賊団に腰を据えるには当然の事だったが、シャチや他のクルーだって、二人がじゃれ合っていたとしても何の問題も無い事なのだが。
「云われてみれば……。本当に、キスだのハグだの目の前でしてくる割には、あの二人は何とも健全な付き合いをしているな。ずっと二人で居るのは上陸した時くらいか」
 イユが上陸したいと云うと、大概ローが有無を云わさず付いてきており、イユも他クルーもそれが当たり前のように思っている。
 ローの気がどうしても向かない場合や仕事がある場合は、ベポがイユを連れて行くのだが、ベポとしてはいつもイユと遊びたいらしく、時々ローに文句を云っていた(そしてローが綺麗に無視していた)。
 上陸した後の二人の行く先をクルー達は知らなかった。けれど、町を歩いていれば店を覗いている二人を見掛けるし、カフェでお茶をしているところも見た事がある。時折、身の程知らずの海賊や賞金稼ぎなどが喧嘩をふっかけていたりするが、サクッとローに“執刀”され……そして何事も無かったように、散策の続きをする様子を見たクルーは苦笑するしかなかったが。
 夜は夜で、二人だけで飲む事はあまり無いようだった(おそらく、イユは酒を飲ませて貰えないからつまらないのだろう)。クルーが集まる酒場に来る事もあれば、ローが宿を指定する事もある。島が気に入らなければ船に戻ってくる事もあった。

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