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01

「起こしてくれればよかったのに」

「いやいや、君は駄目だろ」

「あ、やっぱり?」


重なった言葉にロンがすかさず突っ込んだ。私は悪戯に口の端を上げてベーコンにかじりつく。

そうか、ハリーが『みぞの鏡』を見つけるのはクリスマスだったか。一つ一つの出来事は覚えているけど時系列には付いていけないや。


「今晩一緒に来ればいいよ。僕、また行くから。君たちに鏡をみせたいんだ」


そう言ったハリーの表情は、心ここにあらずという感じだった。

あぁ、一目見ただけで魅せられてしまったのか。哀れな少年よ。

慰めの視線を送っていた私が、まさか一番哀れな人間だということを、この時はまだ知らない。


「First name?何処行くんだ」

「ん?ハリーたちと夜の冒険」


そう言ってレイに笑かけたのは数時間前の話だ。今、私たちはぎゅうぎゅうになりながら透明マントを身に纏い暗い通路をさまよっていた。


「凍えちゃうよ。もうあきらめて帰ろう」


ロンに賛成だった。みぞの鏡は見たいけど、もうつま先が冷え切って限界です。


「いやだ!どっかこのあたりなんだから」


うわーっとロンと顔を見合わせ溜め息を吐く。そしてロンがブツブツ言い始めた時、ハリーはそれを見つけた。

二人がドアを開け、ハリーはマントを捨てて鏡に向かって駆け寄る。その後に私とロンは続いた。

「ね?」とハリーが囁いても私たちは首を捻るだけ。


「何も見えないよ」


何も見えない。そう何も見えなかった。しかし、ロンの見えないと私の見えない意味が違うことをすぐに知る。

ロンが鏡の正面に立ち原作通り映っている自分を見て興奮し、そして私の番が来た。

あれ?

何も映っていない。普通の鏡のように自分さえ映っていない。

そこには、まるで何も存在しないかのように。


「First nameは何が見える?」


ハリーの声に私は答えられなかった。何も映ってないだなんて言えない。そんなこと、言えない。

左の手首を握り締めて笑顔を作った。


「えっとねー、みんなでパーティーしてるのが見えるよ。ハリーもロンもハーマイオニーも、皆で……」


言い終わった瞬間、私はそこから離れた。耐えられなかった。

二人が大声で討論しているのも、どこか遠いところで話しているように聞こえて、ただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

だから次の日の朝、どうやって部屋に戻って来たのか全く覚えていなかった。

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