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馬鹿だと思った。こんな寒さの中で箒に跨ってボール遊びですか。馬鹿ですか。

マフラーを鼻の上まで巻き上げて、ニット帽子は目深く被る。やっぱり手袋なんて武器の無い私は厚手のコートに両手を突っ込んだ。ホッカイロがないなんてありえないと魔法世界の不便さを恨むのも忘れずに。

観客席は想像以上に高かった。映画でイメージは付いていたものの、百聞は一見に如かずと言ったところだろうか。


「あー、寒」

「First nameったら、さっきからそればっかり」

「だって寒いんだもん」


ハーマイオニー、君は何故スカートなんだい?いくらタイツを履いていたって無防備にも程があるよ。

高いところは嫌いじゃない。高いところは、くだらない地から一瞬でも切り離してくれるから。クィディッチなんてと思っていたけれど、何だか少しワクワクしてきた。

きっと、高くて空気が薄いからに違いない。

そんなことを考えていれば歓声が湧き上がる。ふとグランドの方へ顔を向ければ、選手たちのご登場だ。

きっとハリーは、この『ポッターを大統領に』って書いてある恥ずかしい旗を見て無邪気に喜んでいるだろう。

作ってる時、手伝いはしないものの傍にいた私が「大統領?総理大臣じゃないんだ」なんて、ぼそっと呟いたらハーマイオニーに国際的ギャップについて語られた。一生の不覚だ。

箒に乗って自由に飛び回る人間を見上げて、魔法みたいだなんて改めて思ってしまう。魔法の世界なのに。

リー・ジョーダンの楽しい解説は歓声に負けずに大迫力で、試合そっちのけで爆笑してしまう。

いつの間にか綻んでいた頬、いつの間にか観客と一体になっていた私。滑稽だなんて思う暇もなかった。それは壮絶で、心をくすぐる世界だったから。

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