13
早朝、部屋の扉が鳴った。迎えが来たようだ。
「本当に行かなきゃだめ?」
「あなた、何を言ってるの?」
「だって……寒い」
口を尖らせて駄々を捏ねさせる理由は、それだけじゃない。軽い肩に私は気が乗らなかった。
「ハリーの初試合なのよ?」
「知ってる」
「じゃあ、行くわよ」
「えー」
何が、じゃあなのか私にはさっぱりだった。私に行けと言ったレイは朝になって自分は行かないと言うし。昨晩、あんな顔をさせてしまった私が強く言えるわけない。
傍にいて、なんて。
「朝食、しっかり食べないと」
「何も食べたくないよ」
「トーストをちょっとだけでも」
ハーマイオニーに引き摺られるように連れて来られた大広間。クィディッチの試合があるためか、皆いつもよりいくらか元気が宜しい。しかしそんな中、元気の無い奴が一人。
ハーマイオニーが甲斐甲斐しくお世話しているのは我らがヒーロー、ハリー・ポッターだ。
一方、私はと言えば頬杖付きながらフォークの先でソーセージを転がして、それを面白くなさそうに眺めていた。
「お腹すいてないんだよ」
ハリーが、力なく言った時、タイミング良くフォークがソーセージに刺さった。私は意地悪く口の端を上げて、そのソーセージとハリーを見比べた。
「ねぇ、ハリー」
「何?」
試合前から既に疲労困憊らしいヒーローに私の笑みは深まる。そして、次の瞬間うんざりとしていたハリーの顔が固まった。
「私、朝食って食べない派なの」
「え」
「だから……あげるね」
「い、いらな……むぐ!」
ハリーが拒否する間も無く私はハリーの口にソーセージを突き刺した。
「はい、これも、これも、これもっと」
ハリーの口に、見事なソーセージの花が咲いた。
それを指さしてお腹を抱えながらケラケラ笑う私を、ハーマイオニーとシェーマス・フェネガンが唖然として見ていた。
どうでも良いけど、シェーマス。君、ケチャップかけすぎじゃない?
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