×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
08

あ、やばいと思った時にはもう目が合っていて、引き返すことはできなかった。


「お、おはよう。み、ミス・Family name」

「おはようございます。……クィレル教授」


一段と血色の悪いクィレルと朝から遭遇なんて、運のない。


「ず、随分早いですね?ミス・Family name」

「そうですか?」


確かに、私にしては早く起きた。その証拠にレイは傍にいない。きっとまだベッドの中で睡眠を貪っているのだろう。

それにしても久々に近くで見たターバン。時期も時期だし、自然とターバンに目がいってしまう。

くすんだターバン。帝王様は息苦しくないのだろうか。なんて見当違いなことを考えていたら視線に気付かれた。


「な、何かね?」


クィレルが、もそもそとターバンを弄る。私は慌てて視線を外した。


「い、いえ、何にも」


やばいやばいやばい、目を付けられたらたまったもんじゃない。否、既に遅しか?


「それじゃあ、クィレル教授ご機嫌よう」


頭を下げ、するりとクィレル教授の横を通り過ぎる。すれ違い様、もう一つの目に見られた気がして思わず振り返ったがターバンには何の変化も起きてはいなった。


「どうか無理をしないで」


無意識に零れた言葉は、哀れなクィレルにか、それとも……。

[ 76/125 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]