×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
07

冷水を浴びせられたかのように、凍えきっている体。ベッドに潜り込んでも、彼の胸に抱かれても、一行に温まらない体に、どうしてしまったのだろうかと不安になる。


「まだ寒いか?」

「う、うん」


震える唇から、そっと息が漏れる。彼は先ほどから労わるようにずっと背をさすってくれている。

本当にどうしたというのだろうか。言う事のきかない自分の体に怖くなった。このまま凍え死んでしまうんじゃないかなんて、馬鹿げたことが過るぐらいに。


「レイ、ごめんね」

「なんの事だ?」

「セブルスさんにビリビリって。私、助けられなかった。それに今だってレイの方が体辛いんでしょ?」


窺うように視線を上げれば、レイは瞼を伏せながら小さく首を振った。


「First nameが気にすることじゃない」

「……」


そんな、そんな寂しいこと言うなよ。
心の中で囁いて、一層隙間のないように擦り寄った。


「寒いか?」

「うん」


寒い、寒い、寒いよ。
あぁ、温めて。この凍え切った心を。


「First name」

「……ッ」


耳に唇が触れてしまいそうなぐらい、近くで名前を囁かれる。吐息が直接注ぎ込まれれば、体の芯が反応した。


「First name」

「やっ、レイ、近い」


逃げようと体を竦めれば、追い立てるように更に近付く距離。じわじわと体の中から熱が溢れ出してくる気配がする。


「First name」

「ん!」


とうとう触れてしまった唇に耳が大袈裟な程感じる。まるで性感帯。


「First name」

「……ッ、もっと」

「First name?」


予想外の私の反応にレイが離れる。それを許さないと私は彼の胸倉を掴み、引き寄せた。彼を見上げる私の目には生理的な涙が溜まっている。


「もっと、もっと、もっと……私の名前を呼んで」

「……First name」

「レイ」


彼に名前を呼ばれるのは心地良い。先程までの寒さが嘘のように体が熱くなる。


「First name」

「もっと」

「First name」

「もっと!」

「First name」


もっと私の名前を呼んで。
あなたの唇が私の名を刻めば刻むほど、私はあなたに必要とされているんだと感じるの。

たとえ、それが幻想だとしても。

名前を呼んで。

名前は、この世で一番の呪文の言葉だから。

[ 75/125 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]