05
ハーマイオニーの悲鳴が木霊する。私は鷹の姿に戻ったレイを抱えながら廊下の隅で座り込んでいた。
高い高い天井を見上げながら、綺麗な装飾だななんて思って耳を傾ける。
何かが壊される音、鈍くぶつかる音、それに混じる悲鳴。耳を塞ぎたくなる音にも関わらず、私は浮世離れした気持ちでただ腕の中の鷹の温もりを感じていた。
レイが鳴く。
「行かなくて良いのかって?」
金色の瞳を見つめながら可笑しそうに目を細める。
「レイは行きたいの?」
返事はない。
「そうね、私はどっちでも良いのかも」
ただそこで観てろっていわれたのよ。
だから、そうするだけ。
まるで他人事みたいな言い訳に自分でも分かってる。酷薄な奴だ。
「大丈夫、だってあの三人は神様に愛された子だもの」
だったら、私は神様に嫌われた子なのだろうか。否、嫌われる以前に私など……。
音が止んだ。覗き見れば丁度マクゴナガル教授を先頭にスネイプ教授、クィレル教授がトイレの中へ駆け込んでいた。
「あ、終わった」
気を抜いたのが悪かったのだろうか、不意に陰ったことに顔を挙げれば、半月眼鏡の奥に笑わない瞳を見つけた。
「何が終わったのじゃろうか」
「こんばんは、ダンブルドア校長」
グリンゴッツの鍵を貰ったのは、たった数ヶ月前の出来事なのに、あの頃のように笑えない自分に嗤った。
「お茶でもどうじゃ?」
「喜んで」
今宵、彼らは友情を手に入れた。
だったら、私は何を失ったのだろう。
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