04
ハリーたちは何処かその辺に隠れているはずだ。視線だけを泳がすがその姿は見当たらない。私だけが引いた外れくじに舌打ちする。
「何をしていると聞いているのだが?」
「あー、セ……スネイプ教授」
危うく名前で呼びそうになったが、ハリーたちに聞こえてるかもしれないことに気付き咄嗟に呼び名を変える。普通の生徒みたいに。
「まだ、懲りていないようだな。ミス・Family name?」
「え」
彼の言葉に先日のことが思い起こされ、顔から色が無くなる。無意識に後ずさるのは正直な防衛反応。
「は、逸れてしまっただけです」
「ほぅ、あの人混みで?」
「……すみません」
「何対しての謝罪か教えて下さいますかな?」
意地の悪い男だ。頭を下げながら唇を噛み締める。ふと肩が軽くなった気がした。
「レイ!駄目!」
咄嗟に顔を挙げれば、レイが鋭い嘴をセブルス・スネイプに向けていた。
「くそっ」
襲い来る鷹にスネイプは悪態吐き真っ直ぐ杖を向けた。そして杖先から光が迸る。
「いやぁ!レイ!」
感電したように力無く翼が下り、地へと堕ちた哀れな鷹。
私の頭の中は真っ白になった。ただただ、胸に抱き鷹の名を呼び続けた。頬を伝うそれに気付かず。
「ふん、さっさと寮へ戻れ」
蝙蝠のように真っ黒なローブを靡かせ背を向けたスネイプの言葉なんて耳に届かなかった。
「レイ、レイ!」
「……ッ、First name、泣くな」
「あ、レイ……ッ」
腕の中で人の姿になった彼に私は安堵とともにその胸に顔を埋めた。
「泣くな」
「だって!そんなの、無理だよ!」
失ったかと思った。こんなにも呆気なくあなたの温もりを手離してしまったのかと。震えるこの体をどうかあなたの温もりであたためて。
「大丈夫、私はここにいる」
「……ッ」
恐ろしいかった。彼を失うことにも。そして、私が彼に依存していることに気付かされたことにも。
恐ろしい。
本当に失ったとき、私はどうなるのだろう。
これ以上、可笑しくなれるのだろうか。
[ 72/125 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]