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03

可愛らしいお嬢さん方に囲まれるのは嬉しい限りなのだが、追求されるようなそのキラキラしたお目々はどうも苦手だ。なんてフェミニストみたいなことを思っていれば再度名前を呼ばれる。名前を呼ばれるほど仲を良くしたつもりもない。


「ねぇ、First name。ハーマイオニーどうしたの?First nameなら知ってるでしょう?」


知っているが名も知らない君たちにそれを教える義理が果たしてあるのだろうか。否、ない。


「うーん、さぁ?」

「さぁって!」

「あはは、それでハーマイオニー何処にいたって?」

「え?あー、トイレよ。トイレ」


あんな汚いところによく篭ってられるわよね?とぱっちりお目々が語っていた。確かにと同意もするが、ただの冷やかしなこの女の子に私は少しも好感が持てないでいる。


「そっか、ありがとう」

「え、ちょっと!」


一方的に礼を述べて女の子たちに背を向けた。まだ何やら喚いていたけれど、そんなの聞こえぬ損是ぬだ。


「あー、どうしよっかなー」


きっとハーマイオニーのところに慰めに行ったって「帰って」の一点張りに違いない。彼女はプライドが富士山のように高いのだから。

どうしようかななんて言っておいて足は真っ直ぐ大広間に向かっているのだから本当薄情な人間だ。


「だって、ねぇ?」


肩にで羽を休めるレイに言ってみても片目を少し開けただけで、またすぐに伏せてしまった。知らんということらしい。


「あぁ、良い匂い」


香しい匂いに、もう頭の中はカボチャだらけになった。


「うまっ!」


舌の上でとろけるようなカボチャパイに頬っぺが落ちそうになる。本場のハロウィンは凄いなと改めて装飾を眺める。ところ彼処も橙色の広間は温かい。

これで皆が仮装したら完璧なのになんてカボチャパイを頬張りながら思えば、既に皆魔法使いや魔女に仮装中ということに気付く。危うく、一人で噴き出してしまうところだった。

あぁ、楽しいな。来年はあのカボチャをくり抜くお手伝いでもしようかな。きっとハグリッドあたりがやっているのだろう。

来年も楽しみだな。来年も……。

思ってて悲しくなってきた。

あはは、私に来年なんてあるのかよ。

レイと素敵な料理を堪能していれば、前触れもなく、広間の扉が音を発てて開いた。雷の落ちたような音に皆の手が止まる。そしてその視線の先には……。


「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」


雪崩れ込んできた人物はクィレル教授。力尽きたように倒れた後、皆が弾けるように騒ぎ始めた。

始まった、滑稽な茶番劇が。

冷めた視線でターバンを見つめていれば、レイが小さく鳴いた。


「ん?」


レイに促され周りを見れば生徒たちが逃げるように広間から出て行っていた。

私も素知らぬ顔でその波に紛れ込む。すると聞き慣れた声が後ろからしてきた。


「いったいどうやってトロールは入ってきたんだろう」


ハリーとロンだ。嫌な予感がした。

二人はハーマイオニーがトイレにいることに気付いたらしく波から離れて行く。


「え、何これ」


一人、笑った。神様は何もするなというのに、それでも神様は関わっていろと仰っているらしい。

だって知ってしまったら動かずにはいられないじゃないか。

私は二人の背中を追うように波から抜け出した。


「そこで何をしている」


誤算だった。否、もう全てが誤算だ。
全部、全部全部全部、私の思い通りにいったことなんてないのだから。

疑わしき者は罰せよ。

セブルス・スネイプの顔がそう語っていた。

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