02
聞こえて、あぁ、そうだと思い出した。今更そんなもの遅過ぎるのだけれど。
授業が終わり、重たい教科書を抱えながら教室を出たところでちょうどその言葉は聞こえてきた。ハーマイオニーの隣にいた私にもそれは必然的に聞こえるわけで、溜め息が零れた。咄嗟にはぐらかしたり取りつくることできない自分に。
世界、国、人種、年齢、そんなもの関係ないのだろう。どこにだって当たり前のようにそこにある、くだらない関係に息苦しいだなん思って、駆けて行く彼女の背中をただ見送った。
「First name……」
心配気な顔をしているハリー。そんな顔するぐらいなら最初から言わなければ良いのに。
気まずさ半分、僕は悪くないと唇を尖らせるロン。お前はもっと反省しろ。
作者が登場人物に言わせた言葉で、それは今後の展開的にも必要なことなのだけれども、悪意を感じてしまうのは、私もまだまだ人間臭さが残っているということなのだろうか。
ただただ呆れた顔しかできない私に、何て言ってほしいのか。そこから動かない二人にほんの少しお灸を据えてやる。
「ガキ」
「え」
「え」
結局出てきたのはそんなガキっぽい言葉。情けなく自嘲しながら二人の隣を通り過ぎた。
「若さって素晴らしいな」
思わず零れてしまった言葉に今度こそ乾いた笑いが溢れてしまった。
きっと振り返れば訳がわからないといった顔をした二人がいるだろう。今は分からなくたって良いよ。そうやって人は成長していくんだ。なんて、自分は一端のオトナみたいなことを言って。自分が一番オトナになれない子供だったのに。
それでも私は知ってるよ。
些細なコトバの破壊力を。
ねぇ、聴いて。
それは身体を痛めつけたりしないけど、それは心を痛めつけるんだよ。
それは目に見える赤なんて零さないけれど、見えない赤がそこらじゅうに散らばってるんだよ。
ねぇ、聴いて。
ダレかワタシのコトバに耳を傾けて。
それは、とてもとても残酷な暴力なの。
ねぇ、聴いて。
ねぇ、感じて。
ねぇ……ねぇ、ねぇ。
聴こえてる?
ココロの咽び哭く咆哮を。
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