07
レイの膝の上に手をつきながら顔を覗き込むように近付く。長い前髪から見える金色の瞳が美しくてもっと近くで見たくなったんだ。
「First name?」
「何?」
目と目は合っているのに視線が合わないようなちぐはぐした感覚で言葉を交わす。
「そんな格好じゃ風邪をひく」
「あはは、今更」
素肌にワイシャツ一枚、レイが私の腰に添えてる手の感触が妙にリアルに伝わる。
「そんなことより、もっとよく見せて」
そっと指先で前髪を掻き分けて現れた金色の瞳に、思わず吐息が漏れる。
「綺麗」
「……」
「ねぇ、この美しい瞳に私は映ってる?」
「First nameしか映っていない」
そんなわけないのに、そうだったら嬉しいななんて自惚れる。
「聞いて」
「あぁ」
「ハリーがね私とハリーは一緒だって言うの」
可笑しいわよねとクスクス笑えば、腰に添えられていた筈の彼の手がするりと太腿の裏まで這い下りる。
「レイ?」
「お前とあの少年は似て非なる存在だ」
「え」
それ以上は何も言わないということのようでレイは私の首筋に顔を埋めた。
似て非なる存在?
何それ、物語の主人公と私を一緒にしないで。
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