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06

暖炉の中で橙色に揺らめく焔は空間を心から温めてくれている気がする。まばらになった談話室で、暖炉の前のソファーにゆったり腰掛けていれば、三人組が加わった。


「ここ良いかしら?First name」

「うん、いいよハーマイオニー。こら、ロン。私のチョコに手を出すとは良い度胸だな」


そろり伸ばしたロンの手を叩き落とした。


「ちぇっ、けちけちすんなよな」

「なんだと?欲しいのならばそれなりの態度を示してもらおうか」


籠いっぱいのお菓子を抱えて胸を張る。


「……お菓子下さい」

「……まぁ、いいだろう」


抱えていた籠をテーブルの上に戻し皆で小さなお菓子パーティーが始まる。出品者は私だけだけども。


「それにしても、First name。君はいつもこの大量なお菓子どうしてるんだい?」


口の周りにクッキーのカスをくっつけながら首を傾げるロンにほくそ笑む。


「そのうち分かるよ」


再来年ぐらいかな?ハリーたちが屋敷しもべたちの厨房を発見するのは。まぁ、それまでは独占させてもらおうかな。


「First nameって日本人なんだよね?」

「ん?うん」

「僕、ホグワーツで日本人First nameしか見たことないや」


ハリーの言葉にそりゃそうだと思う。本来なら日本人なんているわけがない。これは英国の御伽噺なのだから。

あ、でも、チョウ・チャンとかいるぐいだし、実はいたり?


「First nameの両親も魔法使いだったの?」


どうやらハリーくんは私の私生活に興味があるらしい。困ったなと、視線を何処かに飛ばして甘いマフィンを頬張る。


「んー、普通のっていうか、マグルだったよ」

「そうだったの?じゃあ、私と一緒なのね」


嬉しそうに目を細めるハーマイオニーに苦笑して頷く。

一緒、ね。


「でも、日本からわざわざこっちまで来るの大変じゃない?」

「ううん、別に。日本から来てないし」


あぁ、嫌な雲行きになってきたな。

どういうこと?と顔を見合わせる純粋な三人に嫌気がさす。きっと、少し考えればもっと穏やかな言い方も嘘もあったはずだけれど、何だか無性に冷めた心がそのまま口から出た。


「だって私、今は家族なんていないし」


まだまだ幼い彼らもまずいことを聞いたと自覚はあるらしく、しゅんと小さくなるハーマイオニーとロン。しかし、ハリーだけは違った。


「僕と一緒だ……」


一緒にするなって心が叫んだ。

でも仮面を被った私は笑顔で頷いたんだ。

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