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05

豪華な朝食も私にとっては何の魅力にもならなくて、我が儘を言って出してもらうようにした緑茶をすする。仄かな苦味が故郷心をくすぐるというか、沁み渡るような温かさに、ほっと息がつけるんだ。

しかし、足を組み頬杖をつきながら茶をすする姿はいかがなものか。酒瓶片手にやさぐれたオヤジに匹敵するだろう。

だが、仕方が無い。面白くないんだ。心底、面白くない。面白くないと思ってしまう自分も面白くない。

私の荒んだ視線の先には仲良しこよしの三人組。もういっそのことオテテ繋いでランランランってしろよ。


「やぁ、First name」
「やぁ、First name」


そんなところに綺麗に口を揃えた少年たちが来た。湯呑みに唇を付けたまま視線だけ向ければ予想通りに双子がいた。


「やぁ、ジョージ、フレッド。ご機嫌よう」


何処かの王子みたいに湯呑みを持つ方の腕を広げ、もう片手を胸に当てて大袈裟に挨拶をすれば双子は顔を見合わせきょとんとした後、面白そうに私と同じポーズを取った。


「はははっ、朝から愉快だな。First name」

「そんなことはないよジョ……フレ?」

「ジョージさ」


私の失礼な発言にも笑顔で応える爽やかなジョージが右に座る。


「僕がフレッドさ。ところで君、何飲んでるの?」


興味深々に湯呑みを覗きこみながら左に座ったのはフレッド。


「緑茶。じゃばにーず、ぐりーんてぃー。あーゆーおーけ?」

「あー、何だって?」


理解頂けなかったようで、それ以上の説明も面倒だから呑んでみるかと差し出せば、おっかなびっくり湯呑みを受け取ったフレッド。


「うぇ、苦い」

「あはは、お子様舌だな。フレッドくん」


舌を出すフレッドを指差しながら、けらけら笑えば男のプライドに関わるのか、それとも年下の女の子に子供扱いされたのが癇に障ったのか、湯呑みの中味を一気に飲み干してしまった。


「ちょっ!全部呑むな!あー!!」

「へへん、どーだ!」


空っぽの底にうな垂れる。一日の楽しみが奪われてしまったのだから。


「フレッドの馬鹿馬鹿馬鹿。そんなんだから爽やかジョージ、ヘタレフレッドなんて言われるんだよ」

「ちょっ、誰がそんなこと言ってるんだい!?」

「私」

「俺のどこがヘタレだっていうんだ!」

「全部」


くだらない言い合いをしてればジョージが見計らったように間に入ってきた。


「はい、ストーップ」


ぐっと詰まる私とフレッド。まだまだ言い足りないが、今日のところは仕方が無い。まぁ、私のが大人だし、大目にみてやろうじゃないか。


「フレッド、当初の目的はどうした?」

「あ」


ジョージに言われる、やっちまったという顔をするフレッド。やっぱりヘタレ。


「当初の目的って?」

「First name、僕たちと悪戯しよう」
「First name、僕たちと悪戯しよう」


素敵な舞踏会へのご招待。
残念なことに断る理由が見つからない。


「虫系以外なら、なんなりと」

「よしきた!」
「よしきた!」


さぁ、愉快なメロディーに合わせて赤い靴がステップを踏み鳴らすよ。

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