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01

時が過ぎるのはあっと言う間で、ふと思えばこの世界に堕ちてから三ヶ月もの月日が経っていた。

この世界のルールに慣れてきたものの、これはいつになっても慣れないななんて溜息を零しながら羽ペンの先をインクに浸した。シャーペン、ボールペンが恋しい。

暖炉の前のテーブルを占領して私は筆を走らせていた。薄情な鷹はもう肌触りの良いシーツに身を溺れさせているのだろう。


「やぁ、First name」

「ハリー、おかえり。お疲れ様だね」


クイディッチの練習から戻ってきたハリーは、身を投げだすようにソファーに腰を埋めた。眼鏡を持ち上げて目を擦る姿は眠そうで、そのまま部屋に戻れば良いのにとか思いながらチョコレートを差し出した。


「ありがとう」

「いーえ」

「ところで、何してるんだい?」

「変身術のレポート。ハリー、終わった?」

「いや、まだだけど」

「またギリギリでハーマイオニーに泣き付かないようにね」


まぁ、ハーマイオニーもなんだかんだで面倒見が良いからな。


「あはは、頑張るよ。でも、First name。君の字が読めないのは僕が疲れきってるからかな?」

「え?」


そこで、ようやく私はハリーの顔をちゃんと見た。ハリーは不思議そうに私の羊皮紙を見つめている。


「読めないって、私そんなに字は汚く……あ」


気付いて唖然とする。そして何故、三ヶ月もの間気付かなかったのか自分を叱咤した。

私が普通だと感じている文字は日本語。そう、日本語だ。ひらがなとか感じとかカタカナとか。あの便利な魔法は、聞ける喋れる読めるのだが、書けるには適用していないらしい。

え、今までのレポートはどうなるの?

努力が水の泡とはこのことだと、羽ペンを手放し、ソファーに背を預けた。もう、やる気なんて何処かの遥か彼方に飛んで行ってしまった。


「あー、うな?大丈夫?」

「うん、大丈夫。ホグワーツの先生だって馬鹿じゃないでしょ?こんなの便利な魔法で、ちょちょいと翻訳しちゃうって」

「え」

「まぁ、君の発言で私のやる気が損なわれてしまったのは確かだけどね」


チョコレートを口に放り込みながら言えばハリーの顔が引きつっていた。


「冗談。ちょっと野暮用思い出したから行くね?」

「あ、うん」


散らかしていた羊皮紙やら教科書を纏めて腰を上げる。


「あ、最後の一個。あげる」

「え、あ、ありがとう」

「うん、おやすみ」

「おやすみ」


ハリーにチョコレートをあげて、私はある人物のところへと向かうことにした。

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