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19

あぁ、安心する。
彼の温もりに包まれていると、外の世界から切り離され護られているようで。籠の鳥も悪くないなんて思ってしまう。


「レイ」

「ん?」


絡まる指に少し力を込めれば応えるように握り返してくれる。


「あの人は酷いことを言うの。でもね、勘違いしていた私には何も言い返せる言葉が見つからなかった」


これは私が修正を加える物語なんかじゃないんだ。これは、私が見届ける物語なんだ。


「あはは、まるで神様にでもなった気分」

「……」

「神様は可哀想」

「……」

「高みの見物を決め込む神様は、いつだって独りぼっち」


レイの胸に頬を寄せながら吐き出す言葉を彼は何も言わず私の髪を梳くように撫でる。子どもみたいにそれが心地良くて、瞼がとろんと落ちてくる。

このまま堕ちるのも悪くないなんて……。


「三頭犬、ちょっと見たかったな」

「三頭犬?」

「そう。地獄の門番、ケルベロス。それが、この城にいるんだよ?」

「……」

「あ、その顔は嘘だと思ってるでしょう?」


ちらりと窺うように視線を上げれば、彼は胡散臭そうな顔で私を見下ろしていた。それが可笑しくてクスクス笑いをこぼす。


「何故、そんなものがホグワーツに?」

「知らないの?」

「……」

「このお城にはね、本物の勇者がいるんだよ。だから、悪の魔王から宝物を護る門番も当然、いるに決まってる」


それは全て神様が配置した陣形。神様が創った道筋。それを壊すなんて野暮なことをもうしないわ。だって、独りぼっちで下界を眺めている神様が可哀想でしょ?せっかく自分で創ったのに、他のヒトに邪魔されるなんて。

これは、神様の創造なんだから。


あぁ、なんて可哀想な神様。

いっそのこと、神様なんて……。

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