11
温かいなと思えば、隣にやっぱり彼がいた。寝る前はお気に入りの箪笥の上で羽根を休めていたのに、いつの間に入り込んだのだろう。そして、どうしてあなたはいつも裸同然なんですか?
「レイ」
「ん……あ」
眠気眼でも、どうやら状況を把握したらしい。あの日から数日、ベッドで一緒に寝ることはなかったが、どうやら私が気付かなかっただけのようだ。
「悪い」
やってしまったと髪を掻きながらベッドから下りようとする。それを何故か私の手は引き止めた。
「First name?」
「あ、いや、その……」
仲直りってどうやってするんだっけ?いや、一方的に私が当たり散らしたんだけど、いや、だから逆に謝り辛いんだけど、あぁ、どうしよう。どうしよう。
「First name」
「レイ、あの、その、ごめんなさい……ッ、許してぇ」
語尾が震えた。懇願するようにレイの指をギュッと握り締める。
「First name」
「あ、レイ……ッ」
握っていた指が解かれ、不安の波が来たと思えばそれはすぐに引いていき安心の波がくる。指と指が絡まり合い、互いの距離が縮まった。
彼は言葉は少ない。でも、彼の手が、彼の目が、彼の温もりが全てを語ってくれる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
隙間もないぐらい抱き付いた私を彼は容易に受け止め、抱き締め返してくれる。
「First name、泣くな」
彼の薄い唇が慰めるように頬を伝った。
すごい幸せなのに、何処かの誰かが鼻で嗤った気がした。
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