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09

レイの羽根を撫でていた手が止まる。レイが窓から入ってきた時、マダムが絶叫してたけど、ごり押しで了承を頂いたという経緯がある。


「ど、ドラコ」

「ん」


ずいっと顔を逸らしながら突き出されたのは、これまた見事な花束。


「ぼ、僕からじゃないからな!父上と母上が君が怪我したというのをどこからか聞き付けて渡しておいてくれって言うから……僕からじゃないからな!」

「あ、ありがとう」


あぁ、やばいやばいやばい。鼻血出る。絶対出る。これは出る。

ツンデレはんぱない。


「そ、それで」

「え?」

「その、背中の具合はどうなんだ?」

「あぁ、大丈夫。跡も残らずマダム・ポンフリーが治してくれたから」

「そ、そうか」


あからさまに安堵しているドラコに頬が弛む弛む弛む。


「ありがとう」

「な!僕は、僕は別に君の心配なんか……ッ」

「ありがとう」

「……君は馬鹿だ」

「えー?」

「ロングボトムなんか庇うなんて」

「あはは」

「笑いごとじゃない!」


むきになったように噛み付くドラコに、ちょっとびびった。目を丸くしてドラコの目を見つめれば釣りあがっていた目尻がだんだんと落ち込んでくる。


「僕は、僕は、本当に本当に君を心配して、あ……」

「ドラコ」


思わず言ってしまったのだろう。自分でもやってしまったと思ったようで耳まで赤くして手で顔を隠した。その姿に微笑ましくなる。


「……ッ、君が笑ってて安心した」


微笑ましいなんて越えて殺傷能力はんぱない。

あー、もう、抱き締めて良いですか?

抱き締めたい私と、恥ずかしすぎて逃げたいドラコの押し問答を繰り広げていると何やら騒ついた。


「およ?」


ドラコと顔を見合わせ首を傾げる。ドラコがそっと窺うようにカーテンを少しだけ開けた。その隙間から見えた光景に、現実の残酷さを思いしらされた。


「ネビル?」


思わず起き上がろうとすれば「まだ安静にしていろ」とドラコに制止される。シェーマスに連れられて入ってきたのはネビルだった。


「どうして……」

「ロングボトムの奴、First nameに庇われておいてまた怪我をしたみたいだな」


どうしてなんて聞くまでもない。でも、言葉にせずにはいられなかった。

原作で怪我をするはずだったのはネビル。怪我をしなかったことで物語に支障はでなかった。だって、ネビルが怪我をすることは避けられないことだったのだから。

私が何をしても原作通りに話は進むの?私は、この世界にはいない存在だから何をしても無駄なの?

だったら何故、私は今ここにいるの?

私がいなくても話が進むのならば私はいらない存在でしょ?

私、何のために生かされているの?

世界に拒絶された気がした。

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