06
遠退く意識で誰かが私の名を呼んだ気がした。焼けるような痛みはそう簡単に私を楽にしてはくれないらしい。
「……ッ、あ……」
熱い、熱い、熱い、熱い、痛い痛い痛い痛い。
肉の焼ける匂いがした。
「あ、あ、First name……ぼく、僕」
不意に下から震えた声がした。あぁ、ネビル。私の名前知ってるんだ。呑気にそんなこと思った。
「ね、ネビル、怪我は?」
「ぼ、僕は大丈夫だけど君が……」
「あ、あはは、確かに、ちょっと辛いか、も……ッ」
まだ馬乗り状態のまま痛みに堪え、苦笑していると怒声が降ってきた。
「馬鹿者!」
馬鹿者って、ひどい。どっちかって言うと勇者だろ。
少しでも体を動かそうとすれば痛みが走る背中に、ネビルの上から退きたくても退けなくて、仕方が無いから横に崩れるように倒れた。
「First name!」
悲鳴のようなハーマイオニー声に、一気に聴覚が鮮明になったかのように教室がざわめきだす。
「……おい」
「……ッ」
先程までとは一変し、スネイプは窺うように顔を近付けた。意識を無くしたと思ったのだろう。意識があるのを確認すると、スネイプは自分のローブを脱ぎそっと背中を隠すように私に掛けた。
「医務室に連れていく」
「……」
うんともすんとも言わない、いや言えない私に勝手に了承ととったスネイプはゆっくりと私を抱き上げた。
ただ、その所作はとても温かく、指先から優しさと労わりが溢れ出ているようで、あのセブルス・スネイプが傷ついた少女を護る騎士に見えるその光景に、皆が息を呑んだ。
「私が戻るまで、動くな喋るな触れるな。これを破った者は厳罰だけでは済まぬぞ」
セブルス・スネイプの脅すような言葉は、たった数秒前の姿を幻覚にさせた。
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