04
静まり返った室内にスネイプの声が冷んやりと響く。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と、厳密な芸術を学ぶ」
魔法なのに科学なんだ、とか思う。
「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはしない。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力……諸君がこの見事さを真に理解するとは期待してない。私が教えるのは名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえふたをする方法だ。ただし、私がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
長い話に意識は離れていく。
レイ、追いかけてくれなかったな。
室内を見渡すが、レイの姿はない。部屋に戻ってしまったのか、はたまた……。
「ミスFirst name!」
スネイプが突然、声を上げる。現実に引き戻されたように、ぱっと顔を彼に向けた。
「は、はい?」
「ミスFirst name聞いていたかね?」
「え、あ、はい」
「それでは、アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
え、それハリーに聞くんじゃないの?
「分からないのかね?君は夏休み中いったい何をしていたんだ?」
あなたに監禁されてしましたって皆の前で言っても良いのですか。てか、分からなくないよーだ。
「睡眠薬」
セブルスが標的を私からハリーに変えようとした時、私は小さく呟いた。
「何?」
セブルスが眉間の皺を深くし、私を見た。
「あれ?違ったっけハーマイオニー」
「え、いえ……たぶん合っていると思うわ」
「セ、スネイプ教授?」
「正解だ」
悔しそうに顔を歪めた後、原作通り標的をハリーに向けた。可哀想なハリーと思ったけど、すぐに意識はまた遠くなった。
レイ……。
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