03
失態だ。これは、失態だ。ハーマイオニー怯えてたじゃないか。良い歳こいて何やってんだ。落ち着け、落ち着けよ。
落ち着け落ち着け落ち着けと念仏を唱えるように呼吸を止める。
「……ッ、はぁ……」
あー、落ち着いた。
気付けば廊下の真ん中にぽつんと独り。
「すみません……」
通りすがりのゴーストに道を教えてもらい地下室へと向かった。セブルスさんの授業をさぼったら、それこそまじで、やばす。
「あ」
「あ、ハーマイオニー、隣良い?」
「え、ええ、もちろん」
「いやぁ、親切なゴーストがいて良かったよ。危うく遅刻するところだった」
「あの……」
「ん?」
何を考えているか分からない笑顔以上に恐ろしいものは無いだろう。
「な、何でもないわ」
「そ」
魔法薬学楽しみだなーなんて思ってもないことを笑顔で言って繕った。
そういえば、久しぶりに見たな。
頬杖を付きながらにやける視線の先にはセブルス・スネイプ教授。原作通り勢い良く入ってきた彼に、にやけるにやける。
手なんて振ったら殺されるかな?
本当に笑いごとで済まされなさそうだから自重した。それでも、やっぱり目ぐらい合うかななんて淡い期待をしたけれども、そんなことが起こるはずもなく彼は出席を取り始めた。
彼の耳に優しい声がハリーの名前まできて止まった。私はハリーを見た。私だけじゃない、今や教室にいる人間皆がハリーを見ている。
あぁ、始まるか。
「あぁ、さよう」
猫なで声に寒気がした。身震いして両腕をこする。わざわざ、そんな話し方しなくったって良いのに。
「ハリー・ポッター。我らが新しいスターだね」
その言葉にスリザリン生の生徒たちがいる席ら辺が湧き上がった。よく見れば、ドラコ中心にだ。
ドラコ。あれからドラコとは一度も話していない。それだけじゃない、目があっても逸らされしまう。
そりにしても……。
嫌悪するように、そちら側を見る。いくら子どもだからってその声色は同じ。
あぁ、嫌だ。あの笑い声が嫌い。
私は自分が笑われている訳でもないのに体を縮ませた。
ねぇ、何に怯えてるの?
思い出したくもない記憶が蘇ってくる気がしたんだ。
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