02
あれ?おかしいな。
夏休み中、自分の庭のように歩き回った校内。なのに、何故か教室に辿り着けない。そのため遅刻ぎりぎりになってしまう。
肩に止まるレイに、そっと耳打ちした。
「ありがとう」
きっとレイがいなかったら、私は今頃授業の席に辿り着くことはできず、未だに校内を彷徨いていただろう。
ハーマイオニーは、朝起こしにきてくれないし。「First name、あなたのためを思って言っているのよ」とか言ってたけど、厳しいなー。年下の女の子にそんなこと言われてる私もどうかと思うけど、ハーマイオニーは厳しいよ、うん。
ホグワーツでの学生生活はまずまずだ。そりゃあ、マグルとは勉強する内容が全く違うけども、学生としての基本は変わらない。こちとら伊達に何年も学生やってないっすよ。
全寮制も初体験だけど、一人部屋だし煩わしいことは特にない。
「First name、早く!」
「待ってハーマイオニー」
急かすハーマイオニーに、私は最後の一口と甘いタルトを頬張った。そして緑茶で流し込む。
「もう!次はスリザリンと合同の魔法薬なのよ!遅刻なんてしたら、それこそ大変だわ!」
「うん、分かってる。分かってるから、ちょっ、レイ!頭突っつかないでよ!」
プリプリしてるハーマイオニーに加え、レイまで酷いじゃないか。
「まったく、レイの方が分かってるじゃない。First nameはマイペース過ぎなのよ。あなた協調性って知ってる?」
「うー」
友達がいないハーマイオニーに言われたくないよーだ。内心失礼なことを吐いていたのは秘密。
ふと肩が軽くなったと思えば、レイがハーマイオニーの肩に止まっていた。
「……ッ」
持っていた本やら羊皮紙、羽根ペン、インクが手からすり抜けて、音をたてた。落ちたんだ。
目を丸くして唇をぎゅっと結ぶ。口を開いたら汚い言葉が飛び交いそうで、息まで止めた。
あぁ、きっと今酷い顔をしてる。裏切られた、そんな絶望の色をしてるんだろう。
「ちょっとFirst name、何やってんのよ」
私の異変に気付かないハーマイオニーが呆れたように言った。
「裏切り者!」
あ、何か切れたなと思ったら次の瞬間、やっぱり汚い言葉が吐き出さた。
ひどく驚いた顔をしているハーマイオニー。そこには恐怖さえ見え隠れしている。
「あ……」
私は落ちたものを急いでかき集め、逃げ出した。
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