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14

紅色、というよりベルベッドのような暖かい色に包まれたグリフィンドールの談話室。映画の中に入りこんだ気分にさせてくれた。

若い子たちは談話室の散策とか始めちゃうみたいだけど、さっきのピーブスとの喧嘩で最後のダメージを食らわせられてしまった私は瀕死状態。ずしんと肩の上に石が乗ってるんじゃねぇかってくらい重い体を引き摺りながら女子寮の一番奥へと向かった。


「わぉ」


取り敢えず、驚いて見る。扉を開けたその向こうは、私が今朝まで過ごしていた部屋がそのままあった。

そう言えば繋げとくとか言ってたっけ。まぁ、王道だよね。一人部屋なことを喜ぼうじゃないか。四捨五入して十才も離れてる子たちと同部屋とか、国際なんとかとか関係なくジェネレーションギャップ半端ないから。

制服のまんまベッドに横になるのは私の主義に反するけど、もう、本当に、疲れたのだ。

色々考えなければならないようだけど、もう既に何もかも面倒で夢の世界に逃げ込みたくなった。

あぁ、寝てしまおうかな。

シーツに顔を埋めながら、そんなこと考えていればふと羽の羽ばたく音がした。ちらりと片目だけ瞼を開ければそこには見慣れた鷹。


「あぁ、レイ、何処に行ってたのさ」


一緒にホグワーツを出たはずなのにいつの間にやら姿を消していたのだ。賢い子だから心配はしていなかったけども……。


「ちょっと寂しかったぞ、馬鹿」


言葉とは裏腹に私はそっと柔らかい羽を撫でた。


「あぁ、寝る。もう、寝る」


すとんと撫でていた手が落ちれば、レイの嘴が手の甲を突っついた。


「いっ!ちょっ!何すんのさ!」


ピリッとした痛みに飛び上がれば、鷹は私を睨んでいた。


「何さ、その目は。着替えろと?シャワー浴びろと?お前は、ママンか!」


変なテンションになってしまったが、おきあがったついでだとリボン結びだったネクタイを解き、シャツのボタンを外していく。


「あ」


シーツに落ちたネクタイ。今更その変化に気づく。


「グリフィンドールカラーになってるし」


ドラコ、嫌われちゃったかな。

しょぼんとしていたら慰めてるのかレイが優しく耳朶を噛んだ。


「ひゃっ」


一瞬、ブルッと震えた後、体が熱を帯びる。


「うー、馬鹿、やめてよ、それー」


恨めしげにレイを見た後、脱ぎ捨てたローブを広い箪笥へと向かう。


「……もう、繋がってないんだよね」


分かっていながらも、何かを願うようにごくりと唾を呑み、取っ手を引いた。


「……あはは、だよねー」


例え物語の世界だといっても、もうただの現実。現実は甘くはないさ。

あの猫背な真っ黒な背中を思い浮かべ掻き消すように頭を振った。

ただの箪笥に成り下がったそこにローブを突っ込み、反動でまた開いてしまうほど勢い良く箪笥の扉を閉めた。


「シャワー浴びよ」


異世界から来たような人間は他の生徒と同じ部屋は駄目なのだろうか。別に良いけど、良いけどさ。

結局、独りじゃん。どこの世界にいても独りじゃん。

熱いシャワーを頭から被り、雑念を排除しようと試みる。


「ふふふ、笑っちゃうよなー」


ほんと、笑っちゃうよ。


「ははっ、ははっ、あっは、あはは、あははは、あっははははははははは!」


狂気に塗れた高笑いがタイルの敷き詰められたシャワールームに虚しく響いた。

真っ赤な血飛沫が、ぐるぐると排水口に流れていく。


「あーあ、またやっちゃった」


鉄の匂いが、さらに私を狂わせる。

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