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13

赤毛ファミリーの三男坊ことパーシーな監督生に連れられて談話室へと向かう。私は一年生の軍団からちょっと離れて、だらだらと着いて行っていた。


「あら、First name。グリフィンドールになったんだって?おめでとう」

「ありがとう、マダム」

「がっはっはっ、私は知っていた!きっとうながグリフィンドールになることを!」

「そうなの?ガッハッハッ卿」

「そうともさ!」

「あぁ、ミスFamily name。歓迎しますぞ」

「ありがとう。ニコラス卿」

「卿だなんて」

「ふん、あんたなんかスリザリンに落ちればよかったのよ。私は知ってるよ、あんたの心が真っ暗なことをね」

「……」


流すように絵画やゴーストの言葉を聞いていたが、黒いレースの女のところでふと足を止める。


「な、なにさ」

「だよね、そうだよね!そうだよ!おかしいよ、私がグリフィンドールなんて、だって、勇気って、ないないない、あるとすれば狡猾にするっと逃げるぐらいだよ。そうだよ、私、スリザリンじゃね?」


黒いレースの女の額を鷲掴み興奮しながら訴えていれば何やら軍団の前方が騒がしくなっていた。


「何?」

「ピーブスが一年生をからかってるんだろうよ。ほれ、さっさと額を離しなさいよ」


乱れたレースのショールを着直しながら言われ、パッと手を離す。少し、曲がってしまった額をきっちり直す。


「あ、ごめんなさい」

「ふん、どっちみち今更引き返せないよ」

「え」

「あんたは正義の道に乗せられたんだからね」


そんな……。


「酷いこと言うよなー。レースの精さんは」


へらりと気の抜けたように言えば、いつものように「妖精じゃないよ!あたしゃ!」なんて返ってきたから、ひらひらと手を振り、未だに進まない軍団の方へと近付いて行った。

あ、ピーブス。

どうやらレースの精さんが言った通り、ピーブスが悪戯中らしい。そう言えば、そんなシーンもあった気がする。私は、そそくさと背の高い生徒の背中に隠れた。

正直関わりたくない。ピーブスとの相性最悪なのだ。


「あ!」

「げっ」


ずびしっと、ピーブスが人差し指を指している先には、私。ちょっ、人のこと指差しちゃだめってママンに教わらなかったのか。


「First name、めーっけ!」


生徒たちの間を縫うようにすり抜けながらやってきたピーブス。にやぁ、といやらしい笑顔を浮かべて顔を近付けたと思えば、私の髪を鷲掴んだ。


「いった!痛い痛い痛い!こら!離せ!馬鹿!」

「馬鹿じゃないもーん、馬鹿はお前だよーん」

「ちょっ、まじ痛い!てか、中年オヤジが『もん』とか言うな!きもい!」

「なーにー!悪い言葉使いの子は、こうしてやる!こうしてやる!」

「いひゃい!いひゃい!にゃにすんだ、こにょらろう!」


お互いの頬っぺたを引っ張り合っている中年オヤジな幽霊と大人びた幼女。シュールだ。シュールすぎて、誰も突っ込めさえしなかった。


「血みどろ男爵に言いつけてやる!」


まぁ、負け犬の遠吠え的な捨て台詞ですよね。

何か聞きたそうな視線が沢山刺さったが、聞くんじゃねぇよオーラを出しまくり談話室まで無言を決め込んだのだった。

あの野郎、今度あったらただじゃおかねぇ。

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